伝統工芸の職人たち

細見美術館の杉本博司さん展【伝統工芸の職人たち】


今日も今日とて京都。
京都大学で
哲学ぶった取材を終えて
細見美術館へ。
杉本博司さんの展覧会が
あまりに素晴らしくて
完全にノックアウトされた。
婦人画報に連載された
謎の割烹が
展覧会という形で再現されてて
そのしつらえのセンスこそ
日本の粋そのもの。
これは必見の展覧会です。
6月19日まで。
3階の茶室でも作品展示が。
ここは京都が誇る
中村さんの大工仕事を愛で、
末富の生菓子と
一保堂のお茶がいただけて
一人で来る京都にはピッタリの場所だと思う。
#京都
#細見美術館
#杉本博司
#いつもすいてるから好き



宗達とウォーホル【伝統工芸の職人たち】


東京国立博物館「栄西と建仁寺」展と、森美術館「アンディ・ウォーホル展 永遠の15分」に連続して出掛けてきた。建仁寺展の方は俵屋宗達の「風神雷神図」が揃っているから。ウォーホル展の方は過去最大の展覧会だから。どちらも行かなくてはいけない、のである。
まずはウォーホル展から。ウォーホルは私にとって特別な作家である。ウォーホルが亡くなったのは1987年2月。学生だった私はその時パリのポンピドゥセンターにいた。シュルレアリズム、ダダイズム、ポップアートという順番で観ていて、ウォーホルの「10人のリズ」の前に来た時、ウォーホルが亡くなったことを学芸員から知らされたのだ。何がどういう状況だったのかはっきり覚えていないのだけど、観覧者が集まってざわざわ話していたので、何があったのですか?とかなんとか聞いたんだと思う。そうしたら学芸員らしき人から訃報がもたらされた。人々は深い溜め息をつき、胸元で十字をきって祈っていた。私は目の前にある作品が、コンテンポラリーアート(同時代の)からモダンアート(現代の)に変わる瞬間に居合わせたことになる。そういう意味で、特別な作家なのである。


そして建仁寺展。こちらは言うまでもなく、国宝・風神雷神図。私が好きな絵や意匠が数々あれど、こと和物に限って言えば、風神雷神図はベスト3に入るほど好きだ。しかも今回の展覧では、俵屋宗達と尾形光琳の両方の風神雷神図が揃って観られる希少な機会ということがあって、もうこれは行かなくてはいけない十分な理由になる。


これが俵屋宗達

これが俵屋宗達

こっちが尾形光琳

こっちが尾形光琳

これは雷神図の帯。
お気に入りでよく締めるので
見た事があるお友達はたくさんいると思う。
大好きな絵が帯になってたら、買っちゃいますよね。


建仁寺展では、風神雷神図の他、油滴天目など多くの名品があるが、お茶好きの方には四頭茶会の空間が会場に再現されているので、ぜひおすすめ。建仁寺を開創した栄西禅師の生誕を祝して毎年おこなわれる四頭茶会の様子が、映像でも空間でも見る事ができるのだ。僧が立ったままお茶を点てるのはちょっとビックリしたけど、どんなにうまく点てる人でもお茶が着物に飛んじゃうだろうなーなんて考えちゃうのは小市民の証ですね。


ミュージアムグッズの紙ものに弱い私が買ってきたシリーズ。
これは先にお出掛けした友人のお土産でマリリンのポストイット。
私はクリアファイルやチケットファイル、メモにハガキを買いました。


風神雷神図の紙ものグッズはいっぱい買っちゃった。
便箋、封筒、メモ、ポストイット、
クリアファイル、チケットファイル、
これ以外にもハガキ各種にシールにノート。
完全に買い過ぎです。


こういうミュージアムグッズの紙ものを購入しても、もったいなくて使えないので、新品のまま机の引き出しに何年も入れておくクセがある。たまに引き出しを開けては眺めて、やっぱりもったいないなーと言ってしまい直す。これを繰り返すから、ミュージアムグッズ専用の引き出しはもうてんこ盛りになってしまった。仕方ないので、10年ほど前に購入したハガキや便箋を惜しむようにして使っているのである。我ながらなんとビンボーくさいことか。


これは思わず買ったユニクロ×MOMAのウォーホルTシャツ。
服っていいですね、どんどん着るから、もったいなくない。
引き出しに入れっぱなしということがないもの。
カジュアルデーはこのTシャツに決まりです!
今夏はウォーホル着て出歩きましょ。


ドキュメンタリー映画 "紫"【伝統工芸の職人たち】


10年以上前に購入して、宝物のように大切にしている本がある。染織史家の吉岡幸雄さんによる【日本の色辞典】である。かつて日本のあちこちで植物染めをされてきた日本の伝統色を、古来から伝わる植物と染色方法で再現し、絹の生地を染めて辞典のように仕上がった本で、そこにはうっとりするような美しい色見本とともに、日本の四季の情景が頭に浮かんでくるような色の名前が連なっている。この本を読んで、あるいは眺めて、何度溜め息とともに妄想の世界に浸ったことか。数えきれないほどである。




これが私の宝物の本。
日本の色辞典。


中はこんな感じ。たとえば裏葉色とは、葉の表ではなく裏側の色のこと。ただのグリーン、緑ではなく、葉の裏側の少し白みがかった色のことをこんな素敵な表現で話していたんですねぇ。昔の人の鑑賞眼には頭が下がります。


もちろん眺めて溜め息ついてるだけでなく、原稿の資料にしたり、着物の色合いの表現を何度も参考にさせていただいた。また染料である植物についての知識や、地域の祭りや神社の行事にまつわる色の話などが全編に書かれているので、色の日本史として読み応えのある一冊なのだ。


この本の著者である吉岡幸雄さんは、京都の「染司よしおか」の継承者として生まれ、生家の家業を継ぐ前に美術図書出版「紫紅社」を設立している。上記の本はその出版社からの上梓である。美術図書出版でアートディレクターとして成功してから、実家の家業を継ぎ、染織家になっている。いつかこの人を取材したい、と思い続けているが、なかなかそのチャンスには恵まれないでいたところ、吉岡先生のドキュメンタリー映画ができたと聞き、私はもう何週間も前から浮き足立っていた。


映画は吉岡先生のインタビューから始まる。そして日本の色を追う二人の男性が描かれていく。吉岡先生と、染司よしおかで長年染色職人として働き続けている吉岡先生の右腕・福田伝士さんである。吉岡先生が、染料である植物の栽培を復活させて、農家さんと共同作業で研究開発している姿。福田さんが昔の色を実際の染色で実現している様子を、静かな視点で見つめ続ける映画である。ところどころで、二人の男性が語る話には、時に身につまされる思いが募った。失われてしまった色を現代に蘇らせるための涙ぐましい努力。昔の人々の仕事に挑戦する頑固な意志。これら静かな映像を見ていると、わたしたち日本人が失ってしまった色の奥には、人間の愚行がその原因であることが浮き彫りになっていくのだ。


名古屋では、今池シネマテークにて、なんと今週の金曜日までの上映である。きっと地味な映画だから、あまり興業収益が見込めないのでしょうね・・・。DVD化されたら絶対に買うつもりでいるけど、できれば多くの方に観ていただきたいので、日本の色にご興味のある方は、ぜひご覧になってください。名古屋の他は、横浜、京都、大阪、福岡などで上映が決まっているよう。詳細はこちらでご確認ください→ http://www.art-true.com/purple/


美山荘の眼福は職人の手仕事【伝統工芸の職人たち】


羽田に到着したのが6:50。国内線に乗り継ぎ中部国際空港に到着したのが9:10。自宅に辿り着いたのは10時過ぎだった。それからスーツケースを荷解き、洗濯して入浴し、再び旅の準備をした。そう、京都・花背の里へ出向くためである。フランス出張より半年も前から、花背の里にある美山荘に出掛けることは決まっていた。本当ならあと数日パリに留まって週末を過ごすこともできたのだけど諦めた。パリにはまた行けると思うけど、この季節の美山荘にこのメンバーで行く機会は、これから先それほどないと思ったから。


京都・花背の里で過ごした時間のことは、たくさん書きたいけれど書ききれないので思いきって割愛する。美山荘の素敵なおもてなし術と摘み草料理の素晴らしさについては、多くの著名人が書き記しているのでまぁいいだろう。私にとっては、日本建築の粋が記憶に残る。左官職人の友人が言っていた「土壁の錆」の醸成途中をこの眼で確かめることができたのは何よりの眼福だった。土壁の錆とは、経年により本物の土壁だけに現れる現象のことで、一見するとカビにも見えるため、無知な人は「壁を塗り直して欲しい」と職人にダメ出ししてしまうらしい。手を入れて20年が経つという美山荘の壁はまさにその錆が出始めて、風雅の変化をじっくりと味わえる。職人技術の美しい手仕事は随所に見られ、さすが世に名高い中村工務店さんのお仕事と一人膝を打っていた。中村さんによるお宿は俵屋で何度か経験したけれど、町中とは趣を変えて、自然と一体化した山里らしさがとても心地よい。またこの山里に来られるように、明日からのお仕事に一層力を入れねば、と誓っている。この心持ちがずっと続くといいのだけれど。



シャネルと東北の手仕事Vol.1【伝統工芸の職人たち】


昨年の東日本大震災以降、ずっと思いつめていたことがある。被災された方々のために私が出来ることは何だろう?と。
震災で多くの大切な命と物がなくなり、悲しみが日本中に渦巻いている真っ最中に、友人の左官職人・挟土秀平氏が「東北には素晴らしい手仕事がいっぱいあったが流されてしまった。職人の高い技術だけでなく、生活の中に崇高な手仕事が生きている地域だったのに」と悔しそうに語っていた。挟土氏が言うように、東北では真冬が農閑期になるため、自分たちの生活道具を作って冬を過ごしていた。暮らしの中で根気よく作られ、連綿と伝え継がれた「なんでもない物たち」。その多くが津波に流され、作り手たちは制作意欲をなくし、まさに貴重な日本の手仕事が、この世から消えゆこうとしている。


職人の手仕事や生き方に深い感銘を受けて、この15年ほど取材を続けてきた私が出来るお手伝いは、彼ら職人を守ることではないのか?彼らの手から生み出された素晴らしい手仕事の品々を多くの人に知らしめることではないのか?そう思いついてから、クライアントへの提案書や企画書に必ず「東北の手仕事」を加えるようにしたのである。私の勝手なる思いがそう簡単にクライアントに通じるわけはなく、一年以上が経過した今年の初夏、やっと思いが実を結んで東北の手仕事を取材させていただけることになった。それが、福島県三島町の伝統的工芸品に指定されている「奥会津編み組細工」である。山ぶどう、ヒロロ、マタタビといった植物の皮を用いて、バッグや籠、ザルなどの生活用品に編まれた物の総称で、素晴らしく繊細で美しい編み目模様と、高いデザイン性、そして丈夫で長持ちすることから、丁寧な生活者たちに絶対的な支持を受けている道具である。


山ぶどうで編まれたバッグ。福島県がルーツと言われている。奥が木の節を生かした乱れ編。手前がきしめん状に割いた山ぶどうの茎を編み込んだもの。モダンな着物姿にピッタリなので、籠ブームですっかり人気商品になっている。


こちらはヒロロ細工。紐状のヒロロが編み込まれていて、まるで布のよう。ヒロロには、生成り色を中心に、薄緑もあれば茶色もあり、それらの色を組み合わせるとなんとも優しいグラデーションになるから不思議だ。


これはマタタビ細工。マタタビは水を含むと膨張するので、米をこぼさず傷つけない。米研ぎザルにピッタリなのだそう。実はこのマタタビ細工の米研ぎザルを昨年末に購入し、年賀状の素材として使用したので、ご覧いただいた方も多いと思う。このマタタビ細工の山を見た時、ついついコーフンしてしまい、クライアントが横にいることをころっと忘れて右往左往。値札と大きさをにらめっこしてしまった。


というわけで、ミイラ取りがミイラになって購入したのがこのザル。いただいたばかりの沖縄の島ニンニクとパッションフルーツをのせてみた。野菜以外にもいろいろ飾ったり使ったりしてみたんだけど、やっぱり野菜が一番似合いました。


使い込むほど飴色に変化し、丈夫になると言われる植物の籠。これらは、もともと売るためではなく、自分たちの生活のために作られたもの。そこに心豊かな生活の循環があった。マタタビ細工の米研ぎザルは、昔の男達がみな親から作り方を教わったという。結婚したら、夫が作って妻に贈るのが習わしだったとか。こうした生活道具の素晴らしさを、なんとか次代へと繋げていきたいなとつくづく思う。プラスチック製の方が安価で扱いも簡単だけど、そこに愛情や思い入れは生まれない。なんでもない物にも生命力を与え、丈夫さだけではなく美しさをも追求する日本の手仕事。それを紹介していくことが、仕事を通じた私の社会貢献になるのではないかと思っている。今回、東北の手仕事を取材させてくださったクライアントR社のOさん、そして私のワガママな企画をアレンジしてくださった代理店N社のKさん。ここで改めてお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。ホントにちっぽけな貢献でしかないのだけど、震災後一年半を経てやっと、役割の一部を果たせたような気になっています。
あ、ところでタイトルに「シャネル」とあるのに、本文には一言もシャネルが出てきませんでしたね〜。この続きはまた後日。シャネルと東北の手仕事の共通点について書きます!


和紙の力【伝統工芸の職人たち】


みなさ〜ん、マスキングテープってご存知ですよね。読んで字のごとく、何かを覆い隠すために使うテープのことで、資材を塗装する時に塗装しない部分を保護したり、建築資材の角っこなどが傷つかないように貼ったりする物である。粘着力がきちんとあるのにはがしても跡が残らないので、何かと便利なテープであり、最近ではプリント柄のマスキングテープが市販されていて、封筒のとじ目に貼ったりする女子的使い方がちらほら紹介されているようだ。
私は女子的使い方はあんまりしていないのだけど、陶器の金継ぎを趣味にしているので、金継ぎをする時にマスキングテープは欠かせないアイテムである。欠けたお茶碗を漆で直す時に、漆で汚れたり紙やすりでこすっても傷つかないように、健全な部分をマスキングテープで覆って守るのである。手でちぎれ、まっすぐのラインもR型のラインも自由自在に形づくれるマスキングテープは、手仕事をする人にとっては本当にスグレモノの道具なのだ。


と、マスキングテープをこよなく愛している私なのだが、実はマスキングテープの素材が「和紙」であることを、つい最近はじめて知ったのである。和紙を扱う環境で生まれ育ったというのに、なんちゅう不覚・・・。なんでも、マスキングテープは自動車塗装の現場で塗装をはがさずに保護するための物として開発されたらしい。日本では海外のマスキングテープに発想を得て、1918〜1938年の間に塗装と火薬包装用に和紙を用いたマスキングテープが生まれ、以後、和紙の使い勝手の良さから、世界中のマスキングテープに和紙が導入されるようになったのだそうだ。びっくり。和紙独特の柔らかさと薄さ、そして耐久性が成し得た商品なのだろう。


「マスキングテープは和紙でできているのよ」と教えてくださったのは、今お仕事でご一緒しているグラフィック&テキスタイルデザイナーのセキユリヲさん。セキさんは「天然生活」で”北欧の手づくり春夏秋冬”を連載されている。現在発売中の天然生活12月号には創刊8周年記念として、セキユリヲさんデザインのマスキングテープが特別付録になっているのである。それが一番上の写真。セキさんのテープ使ってますよ〜と私が話したところ、セキさんが和紙素材であることを教えてくれた。左上の写真は、セキさんのマスキングテープの私流使い方。一日の"to do list"と、現在抱えている原稿や仕事について、毎日メモしてmacに貼るのがクセになっていて、今までは生成り色の何の変哲もないテープを使っていたのだけど、ここのところセキさんデザインのテープが取って代わった。こうしてmacに貼っても違和感なくおさまるのは、和紙の優しさと幾何学模様のデザイン(編み図がデザインされている)が効いているのかな。数回は使い回しが出来るので、かなりのエコになる。「こんな薄いテープに印刷する技術はすごい、この印刷技術があるから最近は模様入りのテープが商品になってるんですね」と私が話すと、セキさんは「いやいや、印刷技術の前に、このテープに模様を入れちゃおうと発想したデザイナーがすごいのよ」と。確かに。無地から模様が入ったことで、マスキングテープは工業用製品から文房具・雑貨としての性格を持つことができたのだから。古くて伝統のあるモノに新しい発想とデザインを加えていけば、日本のプロダクツはもっと良くなる。この和紙の力のように、日本にはまだまだ素敵なものがいっぱいあるのだ。都会ではなくて地方にね。


"職人という生き方"展 芝パークホテル【伝統工芸の職人たち】


かろうじて文章を生業にしている私にとって、最も心躍る表現対象のひとつは「職人」である。小さい頃から古いモノに囲まれて育ったということも手伝ってか、職人の手仕事が大好きだ。繊細で美しい手仕事の品を暮らしの中で使うことにこの上ない幸せを感じている。30歳を過ぎた頃から、陶器や漆器といった伝統工芸品の作り手、大工や左官や庭師といった職人にインタビューさせていただく機会が増え、職人の苦悩と喜びに触れる度に、その生き方や感受性に感銘を受けてきた。そして日本から消えゆこうとしている職人の未来を憂い、美しい手仕事を日本に残していきたいと願うようになったのである。そんな思いを抱いている私に、嬉しい出逢いがあった。あるアートフェアで同級生の造形作家との縁でご紹介を受けたギャラリー「羽黒洞」さんである。羽黒洞の木村泰子さんとそのご主人でカメラマンである富野さんも私と同じ思いを持っていらっしゃり、さらに日本の職人の手仕事を残していくために積極的な活動をおこなっている「ニッポンのワザドットコム」の木下社長をご紹介くださった。前置きがすっかり長くなってしまったけど、今回ご紹介するのは「ニッポンのワザドットコム」プレゼンツの「職人という生き方」展である。


日本の職人の手仕事を紹介するために企画された"職人という生き方"展は、芝パークホテル別館の「掌」及び「バーフィフティーン」にて今回でvol.2。前回は江戸切子で、今回が江戸小紋である。小さく繊細で美しい模様が連続して成る江戸小紋の作品と、職人の仕事風景が写真で展示され、廣瀬染工場四代目・廣瀬雄一さんと、伝統工芸士・岩下江美佳さんによる反物や小物の販売もされている。さらにバーフィフティーンでは、江戸小紋×オリジナルカクテルということで、小紋をまとったカクテルグラスが登場する。
初日の10月3日にはレセプションがおこなわれ、偶然私も東京滞在中だったのでお邪魔して、作家の岩下さんやニッポンのワザドットコムの木下社長ともお会いすることができた。この時の様子をデジカメにおさめたはずなのに、なぜだかデジカメ紛失中なのでここにアップできないのがひたすら残念(泣)。なぜなら粋なお着物姿の方々が多くいらっしゃっていて、それをちゃんと撮影したはずだったからだ、ぐすん。羽黒洞の木村泰子さんのそれは素敵なお着物姿もおさめてるんだけどなぁ。
それにしても、共通の思いを持った方にはどこかで必ず出逢うことができるということを今回は実感したことになる。実はここのところ、もっと丁寧に気持をこめて仕事に向かいたいのにそれが許されない状況が続いたりして、仕事上で結構凹んだりしていた。職人という生き方にもっとこだわってものづくりをしていきたい、そう思っていた矢先での出逢いだったので、なおさら嬉しかったのだと思う。羽黒洞の木村さんとカメラマンの富野さんとの縁を導いてくれた、造形作家の井戸えりさんと大野泰雄さんには深く感謝深謝。


というわけで、年末まで開催されている「職人という生き方」展に、ぜひお出掛けくださいましね。
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芝パークホテル別館1階 17:00〜23:30 入場無料
10月3日月曜日〜12月26日月曜日

※土日祝定休、臨時休業ありですので、ご留意ください。
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いいものはいいんです!【伝統工芸の職人たち】


7月のある日曜日は、珍しくちょっと遠出して岐阜県多治見市までお出掛けしてきた。目的は、陶芸家・青木良太氏の個展を見に行くためである。とある企業の広報誌の取材で念願の青木さんにお会いできたのが今年の2月。その時、彼の工房で作品に惚れてしまって幾つか器を買い込んだ。以来、我が家の食卓では頻繁にその器が登場しているのだが、これが実に使いやすい。薄くて軽いのに丈夫、見た目はクールだけど手に持つとしっとり馴染む。なんとも言えない柔肌の触り心地は、陶器のそれでもなければ磁器でもない。このあたりの秘密については、取材記事に書き込んであるので、よろしければご覧ください。


お邪魔したのは器のギャラリー「陶林春窯」さん。
昔の大工さんの技術の粋が随所に現れた築50年ほどの日本建築を、
とっても上手にリノベーションして、
日本家屋ギャラリーとして蘇らせていらっしゃる。


薄くて軽くて繊細な器たち。どう置いてもかっこいいのだけど、こうして重ねてみるとオブジェみたい。

薄くて軽くて繊細な器たち。どう置いてもかっこいいのだけど、こうして重ねてみるとオブジェみたい。

これはポット。射込みで作られているので、ほぼ左右対称。きれいなラインがシンメトリーになって、これまたオブジェ風。

これはポット。射込みで作られているので、ほぼ左右対称。きれいなラインがシンメトリーになって、これまたオブジェ風。

こちらはカフェコーナー。ここでお茶をいただきました。陰影のバランスがすごくいいでしょう。これぞ日本建築の良さなんですね。

こちらはカフェコーナー。ここでお茶をいただきました。陰影のバランスがすごくいいでしょう。これぞ日本建築の良さなんですね。

これが今回購入してしまった器。いぶし銀彩の器は、日本茶、紅茶、ハーブティーあたりが似合いそう。前菜や珍味を入れてもよさげです。

これが今回購入してしまった器。いぶし銀彩の器は、日本茶、紅茶、ハーブティーあたりが似合いそう。前菜や珍味を入れてもよさげです。

ちなみにこっちは、前回の取材時に購入しちゃった器。こちらはフレッシュミントティーで大活躍してます。この前カンパリソーダを作ったら、きれいに映えました。

ちなみにこっちは、前回の取材時に購入しちゃった器。こちらはフレッシュミントティーで大活躍してます。この前カンパリソーダを作ったら、きれいに映えました。


陶器好きなのは学生時代からで、ちょっと背伸びをしながら分不相応に少しずつ買いそろえた器は、一人暮らしとは思えない食器棚に窮屈にしまわれている。その内のどれをとっても「買わなきゃ良かった」などと思う物はなく、買った時の情景や一緒にいた人のことや、その日のお天気や空気感まで覚えている。そしてそれらは思い出と共に何十年という時を私と一緒に過ごしてくれている。ひとつひとつはちょっぴり高価だったとしても、心から良いなぁ!と惚れ込んだ物は決して後悔することなく、いつまでも私の暮らしに寄り添っていてくれるのだ。大好きな物だから大切に扱うし、万が一欠けたりしても、金継ぎで直して再び命を蘇らせている。たかが物、されど物。気に入った素敵な物たちは、時が経ってもやっぱりいいんです!
この日に購入した青木さんの器も、お財布情勢が厳しい今の私には分不相応だったけど、多分何年かしたら、雨降る多治見の街のことや、日本家屋の魅力に惚れ惚れしたことをきっと思い出すはずだ。・・・と考えていて、ふと気づいた。多治見の街が好きで一年に何度か訪れる私は、多治見で多くの逸品に出逢っているのだ。


青木さんの個展を見た後にお邪魔したのがココ!
およそ一年ぶりの「ギャルリももぐさ」。
陶芸家のご主人と布作家の奥様が手掛けられるギャラリーは
全国から多くの人が訪ねていらっしゃるほど有名なので、
ご存知の方も多いだろう。


山の奥に入っていってこの風景を見ると、もう胸キュンになっちゃう(あ、死語かな)。随分前に取材させていただいたり、撮影にご協力いただいたり、ももぐさグッズに惚れて買い込んだりしているので、個人的にはかなり思い入れのある場所でございます。


これは、5年程前に購入した"ももぐさグッズ"の下駄。大切に履いています。

これは、5年程前に購入した"ももぐさグッズ"の下駄。大切に履いています。

こちらは18年ほど前に多治見のギャラリーで衝動買いしたガラス。これで日本酒の冷を呑むと美味しいんですよ!

こちらは18年ほど前に多治見のギャラリーで衝動買いしたガラス。これで日本酒の冷を呑むと美味しいんですよ!


多治見には、日本一おいしいと思ううどん屋さんがあるし、思い出いっぱいのお蕎麦屋さんや鰻屋さんもあって、器屋さんは果てしなく軒を連ねる。飽きっぽい私が、お昼から夜までゆっくり時間を過ごすことが出来る稀有な街である。行ったばかりなのにまたすぐに行きたくなる。日本一暑い街だと観測されようが、私は行きますよ。多分、暑い季節のうちにもう一度。


ナイフのような職人との対峙【伝統工芸の職人たち】


7年ほど前に取材がきっかけで知り合いになり、その後、親しくさせていただいている左官職人の挟土秀平さん。その当時から、左官のカリスマと言われてマスコミでも注目されていたが、その後のご活躍は皆さんご承知の通りでめざましい。今では、大手メーカーの商品キャラクターに選ばれたり、左官アーティストとして個展を開催するなど、すっかり有名人である。ところが、彼はどんなに売れて有名になっても、芯がぶれるということが絶対にない。土と水に対する真摯な情熱や、より高みへと追い求める心、そして自然への畏怖は変わらず、むしろ強くなっていて、お話するたびにドキッとさせられる。どうして彼はこんなにも純粋でいられるんだろう。さらに最近は文章を書くことも彼にとっては大切な創造性となっている。彼が紡ぎ出した言の葉を何度も読ませてもらったが、我々コピーライターが入り込む余地のないほど、哀しくも美しい文学をつくりあげている。


その挟土さんの取材を、7年ぶりにさせていただくことになった。4月の中旬、飛騨の山頂にはまだ雪が残る頃、高山へと向かったのである。今までに偶然同じ人物を取材するということは何度かあったし、時間経過によるインタビューの差異を自分でも楽しむことができたのだけど。取材してから友人になってしまった人を再び取材するというのははじめての経験である。嬉しいような恥ずかしいような不思議な気持ちだった。そして、普段から挟土さんの話は聞いていて、仕事の内容も個人的に建設を進めている洋館の進行状況もなんとなくわかっていたから、いざインタビューとなると正直言ってどうしたらいいのかわからなくなった。情けない話である。


クライアントの視点を考慮しつつも質問を選びながらインタビューしたつもりだったけど、結果としては「すごくコアな質問取材」になってしまったのだ。私とご本人は理解できたとしても、周りで聞いている方々には伝わらないことがあったんじゃないかな。インタビューの途中で「マリコさん、それ、飲み屋での会話になってますね」と代理店のO女史は笑いながら指摘してくださった。お、そうだった、ここは高山の酒亭ではないのだ。さらにその後、場所を移動するため挟土さんと私が車に乗り込んだ時、挟土さんから「取材ってあんなんで良かったの?いつもの調子でしゃべりたいことしゃべっちゃったけどさ」と真顔で聞かれた。あ、そうだった、これはいつもの電話トークではないのだ。


インタビューだか会話だかわからないような取材を終え、いろいろな方からの厳しいチェックを受けて出来上がった原稿は、以下の媒体でお読みいただけます。
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KORYUのwebが6月よりスタートしました。
冊子の定期購読をご希望の方は、→KORYUからフォームに書き込んでお申し込みください。
もちろんwebでも一部の記事をお読みいただけます。
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ナイフのように研ぎ澄まされたナイーブで純粋で怖がりな、それでいて土と水にすべての愛情を注ぎ込む職人の「今の姿」を書いているつもりです。取材中はインタビューに迷ったりしたけれど、その迷いが文章に出ていないことを祈りつつ、どうぞ皆様お読みくださいませ。


今様の茶陶展【伝統工芸の職人たち】


このwebのおかげで、とても素敵な出逢いがあった。ネット上のコミュニケーションに少々疲れ気味の私にとって、久方ぶりに嬉しい交流だったので、ここに紹介させていただこうと思う。webを通じて今までいろんな方々との出逢いがあったのだけど、今回ははじめて?とも言うべきファンレターをいただいたことに端を発する。そのお方は、あるキーワード検索で偶然、当webに行き着いてくださり、たまたま偶然コラムを読んでくださった。以来、この拙コラムのファンになってくださり、一ヶ月ほど前にメールでファンレターをくださったのである。そしてその方がなんと同郷の岐阜市の方で趣味や興味が共通してそうだったため、私も密かに思いがヒートアップ。これはいつかお会いしてお話するチャンスが巡ってこないかと思っていた矢先に、↑このご案内状をいただいたのである。「今様の茶陶展を開催します、ご実家に戻られている時にでもいらしてください」と。そうなんです、その方とは、岐阜市で長く画廊を経営していらっしゃる石原美術の石原夫妻だったのだ。



石原美術は趣ある街並にあって、すぐ近くには料亭「水琴亭」やお蕎麦屋の「吉照庵」などがあり、私が小さい時から今も風景はほとんど変わっておらず、馴染み深いエリアである。「水琴亭」は老舗料亭で、老舗ならではのオーセンティックな料理と立派な庭園が見事。岐阜市出身の実業家で芸術家たちのパトロンになったことでも有名な原三渓が描いた壁画(普段は公開していないけど、多分お願いすれば見せてくださる)があることでも知られている。「吉照庵」の方は、丁寧に打たれた美味しいお蕎麦がいただけるので、県外からも来客がある有名店だ。とまぁ、こんなお店や古い日本家屋が並ぶ中で、石原美術のひときわ目をひく外観はレンガ貼りの洋館。この日は、姪っこアユミを引き連れてお邪魔した。アユミは、はじめて足を踏み入れる画廊に少々緊張気味。私もはじめてお会いする緊張感に加えて、どんな茶器があるんだろう?と期待感がないまぜになっていた。入った瞬間、石原さんのご主人が「もしかして近藤さん?」と声を掛けてくださった。いきなり正体がばれるとは思ってなかったので面食らいつつも、ご主人と奥様のおすすめに従って、鑑賞させていただいた。今回の展覧は、6人の今を生きる若手世代の作家さんばかり。茶器を中心に、想像力をかきたてられる愉しい作品から、正統派の美しいラインが特徴のものまで、充分に堪能させていただいた。気に入ったものが幾つもあって、結局購入しちゃいました〜。この報告はまた後日。


お茶人でもあられる石原さんが「気に入ったお茶碗で一服いかが?」とお誘いくださり、私とアユミはそれぞれお茶碗を選んで、お薄をたてていただいた。それから先客の紳士も交えて、しばし会話を楽しんだ。ご夫婦そろって趣味人なので、お話は面白く、会話術もとてもスマート。今度はグラスか盃でも傾けながらゆっくり芸術論をお聞かせいただきたいなぁ。


お名残惜しくも失礼しようとすると、奥様が「お母様にお持ちになって」と渡してくださったのがこちらの薔薇。石原美術の前に咲き誇る薔薇をくださったのだ。母は大喜び。「玄関に飾って」とのお達しがあったので、早速飾っておきました。むか〜しの家の洋室に飾ってあった油絵。そこに描かれていたような薔薇と花器。この薔薇を見ていたら、目の前にあるものなのになんだか懐かしい気持ちになった。


石原さんご夫妻、素敵なおもてなしをどうもありがとうございました。そんなご夫妻と素晴らしい作品に逢うことのできる展覧「今様の茶陶展」は、今週末の6/5まで。石原美術/岐阜市米屋町24番地 TEL 058-262-4313 皆様どうぞお出掛けくださいませ。