伝統工芸の職人たち

美山荘の眼福は職人の手仕事【伝統工芸の職人たち】


羽田に到着したのが6:50。国内線に乗り継ぎ中部国際空港に到着したのが9:10。自宅に辿り着いたのは10時過ぎだった。それからスーツケースを荷解き、洗濯して入浴し、再び旅の準備をした。そう、京都・花背の里へ出向くためである。フランス出張より半年も前から、花背の里にある美山荘に出掛けることは決まっていた。本当ならあと数日パリに留まって週末を過ごすこともできたのだけど諦めた。パリにはまた行けると思うけど、この季節の美山荘にこのメンバーで行く機会は、これから先それほどないと思ったから。


京都・花背の里で過ごした時間のことは、たくさん書きたいけれど書ききれないので思いきって割愛する。美山荘の素敵なおもてなし術と摘み草料理の素晴らしさについては、多くの著名人が書き記しているのでまぁいいだろう。私にとっては、日本建築の粋が記憶に残る。左官職人の友人が言っていた「土壁の錆」の醸成途中をこの眼で確かめることができたのは何よりの眼福だった。土壁の錆とは、経年により本物の土壁だけに現れる現象のことで、一見するとカビにも見えるため、無知な人は「壁を塗り直して欲しい」と職人にダメ出ししてしまうらしい。手を入れて20年が経つという美山荘の壁はまさにその錆が出始めて、風雅の変化をじっくりと味わえる。職人技術の美しい手仕事は随所に見られ、さすが世に名高い中村工務店さんのお仕事と一人膝を打っていた。中村さんによるお宿は俵屋で何度か経験したけれど、町中とは趣を変えて、自然と一体化した山里らしさがとても心地よい。またこの山里に来られるように、明日からのお仕事に一層力を入れねば、と誓っている。この心持ちがずっと続くといいのだけれど。