伝統工芸の職人たち

須田菁華さん 九谷焼【伝統工芸の職人たち】

加賀百万石・前田藩のお膝元で花開いた武家文化。
陶芸では九谷焼がその代表で、金沢の近辺には多くの窯がある。

九谷を代表する陶芸家・須田菁華さんにお会いしたのは、
今から5年ほど前になる。

九谷五彩と呼ばれる色を操り、自由な形に特徴のある作家だ。

山代温泉の中心地に、須田さんの窯元はあり、
時代のかかった建物の中で、作品を見せていただいた。

掌に置いて眺めていると、
どことなく、ゆるい、という印象を受けた。

取材記事にも、素直にそう書いた。

怒られるかな?と思ったら、意外に校正は直しもなくすんなり終わった。
何も言われなかったところをみると、
須田さんご自身も、「ゆるさ」を認識されているのだろうか。

もちろん歪んでいるわけではないけど、
定規ではかったような几帳面なラインじゃない。
それが安心できるのだ。

きちっと型にはまったようにきれいに成形された器って、
食べていても緊張するんじゃないかな。

取材の帰り際「いつとは言えないけど、必ず買いに来ます!」と
申し出ると、須田さんはなんとも言えない静かな笑顔で、
「待っていますよ」と答えてくれた。

それから約4年後、友人おすすめの山代温泉に宿をとり、
(そこは大変良いお宿でした、後日アップします)
須田さんを訪ねることができた。
えへん、須田さんとの約束を果たしたのである。

写真は、その時に買ったもの。
わかります?
ね、ちょっとゆるい、でしょ?

上が銘々皿。
下が豆皿。

須田さんの器は、はっきりいってかなり高価だけれど、
「ゆるさ」のおかげなのか、
使っていると安心感があって、緊張することがない。

いろいろな方にお会いすることが日常のコピーライターにとって、
「今度はプライベートでお邪魔したい」と思える取材対象は、
貴重な存在だ。
出来ればそんな風に思える方ばかりを取材したい、と思う一方、
気に入った作家の作品は大体値段も良いので、お財布は苦しくなる。

「あ〜これでまたギャラ使っちゃった・・・」ということもしばしば。
ミイラ取りがミイラになってばかりいるので、
我ながら、まったく困ったものなのだ。