LARMES Column

宗達とウォーホル【伝統工芸の職人たち】


東京国立博物館「栄西と建仁寺」展と、森美術館「アンディ・ウォーホル展 永遠の15分」に連続して出掛けてきた。建仁寺展の方は俵屋宗達の「風神雷神図」が揃っているから。ウォーホル展の方は過去最大の展覧会だから。どちらも行かなくてはいけない、のである。
まずはウォーホル展から。ウォーホルは私にとって特別な作家である。ウォーホルが亡くなったのは1987年2月。学生だった私はその時パリのポンピドゥセンターにいた。シュルレアリズム、ダダイズム、ポップアートという順番で観ていて、ウォーホルの「10人のリズ」の前に来た時、ウォーホルが亡くなったことを学芸員から知らされたのだ。何がどういう状況だったのかはっきり覚えていないのだけど、観覧者が集まってざわざわ話していたので、何があったのですか?とかなんとか聞いたんだと思う。そうしたら学芸員らしき人から訃報がもたらされた。人々は深い溜め息をつき、胸元で十字をきって祈っていた。私は目の前にある作品が、コンテンポラリーアート(同時代の)からモダンアート(現代の)に変わる瞬間に居合わせたことになる。そういう意味で、特別な作家なのである。


そして建仁寺展。こちらは言うまでもなく、国宝・風神雷神図。私が好きな絵や意匠が数々あれど、こと和物に限って言えば、風神雷神図はベスト3に入るほど好きだ。しかも今回の展覧では、俵屋宗達と尾形光琳の両方の風神雷神図が揃って観られる希少な機会ということがあって、もうこれは行かなくてはいけない十分な理由になる。


これが俵屋宗達

これが俵屋宗達

こっちが尾形光琳

こっちが尾形光琳

これは雷神図の帯。
お気に入りでよく締めるので
見た事があるお友達はたくさんいると思う。
大好きな絵が帯になってたら、買っちゃいますよね。


建仁寺展では、風神雷神図の他、油滴天目など多くの名品があるが、お茶好きの方には四頭茶会の空間が会場に再現されているので、ぜひおすすめ。建仁寺を開創した栄西禅師の生誕を祝して毎年おこなわれる四頭茶会の様子が、映像でも空間でも見る事ができるのだ。僧が立ったままお茶を点てるのはちょっとビックリしたけど、どんなにうまく点てる人でもお茶が着物に飛んじゃうだろうなーなんて考えちゃうのは小市民の証ですね。


ミュージアムグッズの紙ものに弱い私が買ってきたシリーズ。
これは先にお出掛けした友人のお土産でマリリンのポストイット。
私はクリアファイルやチケットファイル、メモにハガキを買いました。


風神雷神図の紙ものグッズはいっぱい買っちゃった。
便箋、封筒、メモ、ポストイット、
クリアファイル、チケットファイル、
これ以外にもハガキ各種にシールにノート。
完全に買い過ぎです。


こういうミュージアムグッズの紙ものを購入しても、もったいなくて使えないので、新品のまま机の引き出しに何年も入れておくクセがある。たまに引き出しを開けては眺めて、やっぱりもったいないなーと言ってしまい直す。これを繰り返すから、ミュージアムグッズ専用の引き出しはもうてんこ盛りになってしまった。仕方ないので、10年ほど前に購入したハガキや便箋を惜しむようにして使っているのである。我ながらなんとビンボーくさいことか。


これは思わず買ったユニクロ×MOMAのウォーホルTシャツ。
服っていいですね、どんどん着るから、もったいなくない。
引き出しに入れっぱなしということがないもの。
カジュアルデーはこのTシャツに決まりです!
今夏はウォーホル着て出歩きましょ。


野菜の味を誤解していました【徒然なるお仕事】


薫風香るこの時期は、緑の野菜がもこもこと成長する季節でもある。春に旬を迎える野菜は数々あるけど、キャベツほど多くの家庭で使われていてさらにお値打ちな野菜はないのではないかしら。キャベツを美味しく食べるメニューを幾つも知っていれば、料理上手といっていいかもしれない。
そのキャベツ、生産量が全国でいちばん多いのは、なんと我が愛知県。田原市や豊橋市あたりが大規模農業地帯として発達しているのだ。冬キャベツと春キャベツが並んで栽培されている風景を取材するため、1月のまだ寒い時期にお邪魔した。


その時の様子はこちらで。
http://www.chuden.jp/koryu/recipe/tanoshii/201403/deai.html
ここでも何度かご紹介している中部電力の広報誌KORYUのweb版。
料理家のワタナベマキさんと中部地方の食を巡る取材シリーズで、愛知県のキャベツ畑と農家を取材したものだ。
冊子のKORYUでは書ききれない楽しい話、面白いネタなどをweb版KORYUで詳しく書いているので、ぜひぜひクリックしてご訪問くださいまし。


これは取材した農家さんからいただいたキャベツくん。
左が堅くきつく巻いている冬キャベツ、煮込みに向いているそう。
右が柔らかくてゆるゆる巻きの春キャベツ、生食がジューシーだそう。


もちろんweb版KORYUでは、愛知県野菜を使ったワタナベマキさんのレシピも紹介されています。キャベツ、大葉、うずらの卵などが愛知県は生産高1位。すごいでしょー。
http://www.chuden.jp/koryu/recipe/tanoshii/index.html


これは取材農家さんからいただいた春キャベツを、その日のうちに低温で煮込んで、とろとろになったところをバーミクスしただけの簡単スープ。味付けはほんの少しの塩だけで、あとはキャベツの甘みがたっぷり出ていて、我ながら優しくて美味しい味でした。キャベツ1個分作ったので、大きなお鍋にいっぱい!ご近所のお友達にお裾分けして助けてもらったのだった。
それにしても、畑で農家さんに食べさせてもらった生のキャベツの甘みは忘れられない。青くささがなく、まるでジュースみたいに甘いのだ。とれたてがいかに美味しいか、流通して暖房がきいた店頭に置きっぱなしの状態がいかに野菜を傷めているか、痛感せざるをえなかった。もちろん自分で野菜を作らない限り、とれたて野菜を料理することはないのだろうけれど、わたしたちが野菜の味わいを誤解していることは、どうやら間違いなさそうである。


川根茶の美味しさを伝える人【一杯の幸せ】


お茶のペットボトルの購入頻度、どれくらいですか?もしかして毎日ですか?
ご自宅でお茶を煎れる頻度、どれくらいですか?毎日煎れていますか?
私は無類の日本茶好きで、むしろコーヒーが苦手なので、煎茶とほうじ茶はほぼ毎日愛飲している。だから、川根茶の産地に取材に行くと聞いた時から、その日を心待ちにしていたのである。川根茶といえば、静岡県の銘茶ブランドとして有名で、我が家でも縁戚が静岡にいるので川根茶を何年も前から飲む機会が多かった。


そんなわけで慣れ親しんだ川根茶のつもりだったのだけど、自分がまったく見当違いをしていたことが取材をしていて分かった。静岡茶は全般に深蒸しと言われている、というか、そう思い込んでいたのだ。京都の宇治茶は蒸しが浅いのに対し、静岡茶は深く蒸すことで有名になり、煎れたお茶の色は緑で味わいも深く濃くなる。宇治茶の方はほんのり山吹色になるのが特徴で、味わいもすっきり上品に仕上がっている。私は川根茶は静岡茶だから深蒸しだと思い込み、だから長めの時間で煎れて飲んでいたのである。つまり私の川根茶の煎れ方が間違っていたのだ。取材先の「つちや農園」の土屋裕子さんにその話をすると、のっけから「川根茶は深蒸しじゃないんですよ」と。そして、そのセオリーとなる川根の環境について丁寧に教えてくださった。詳しくは中部電力の広報誌KORYUに書いてあるので、ぜひお読みください。


取材の日、土屋さんは、手づくりのお菓子と、極上の川根茶を用意して待っていてくださった。上の写真がその時のもの。川根茶はいわゆる"かぶせ"ではなくても「旨味」の強い味わいになるのだそう。沸騰したお湯を湯冷ましで冷ましてから、この茶葉を浸すように加え、少し待ってから、直接器に口をつけてすするようにいただく。すると、昆布茶のような旨味が口の中に広がってゆく。玉露やかぶせ茶に通ずる味わいである。二煎目にはもう少し高い温度で、三煎目にはさらに高い温度で煎れて、その味わいの変化を楽しむのである。最後、その茶葉にポン酢をかければお夕飯のおかずにもできると土屋さんは言う。川根の茶葉が柔らかいから可能な食べ方なのだろう。川根の茶葉がなぜ柔らかいかについても、中部電力の広報誌KORYUに書いてあるので、ぜひお読みください。えへ、しつこいですね。


漆器の器に茶葉を入れ、そこに湯冷まししたお湯をそそいですする。すすり茶という名前があるのだそうだ。上等な茶葉が手に入ったら、ぜひ試してみたい飲み方である。


そういうわけで、しっかりPRに励んでしまったのだけど、中部電力の広報誌KORYUをお読みになりたい方は、下記までアクセスしていただき、91号KORYUを希望とご記入の上、お送りくださいまし。ちなみにKORYUのwebの中にも、土屋さんの記事が掲載されていますが、そちらは私の文章ではありませんので念のため。私が書いたのは冊子のKORYUの土屋さんインタビュー記事です。
KORYUの申込フォームはこちらです。


25ans十河編集長のオーラ消し【徒然なるお仕事】


3/1から名古屋駅前のミッドランドスクエアで、7周年キャンペーンが始まった。私は7周年記念の会報誌の制作に携わらせていただき、25ansの十河ひろ美編集長のインタビューと、山本益博さんの取材を担当した。今回は、その十河編集長のお話。


25ansといえば、ラグジュアリーなクラスマガジン。その編集長の取材には役不足なんじゃないかなと少々不安を持ちつつ現場に向かった。かなり早めに到着したはずなのに、カメラマンやスタイリスト、ヘアメイクのスタッフもほぼ同時に到着。さすがデキル人たちは早め早めの行動なんですね。某所の室内に入り、早速準備を進めていると、ほどなくして十河編集長が現れた。「こんにちはー今日はよろしくお願いしますー」アルカイックスマイルが完璧にできる女性ってそうはいないものです。現場には独特の緊張感が漂い、男性スタッフはみなピリッとしてきた。いよいよインタビューである。私は自分の緊張をほぐすためと、取材相手との距離を一気に縮めるためとで、十河編集長に個人的な問いかけから始めた。2年前に十河編集長がシャンパーニュ騎士団からシュバリエを受勲されたパーティーに私も参列していて、その時に実はお逢いしているんです、と。すると、十河編集長は私の企みをすぐに理解してくれて、それまでまとっていた「知的でオシャレな凄腕編集長」というオーラを、さっと消し去ってくれたのである。つまり、私の緊張を解くために、自らオーラを消して親しみやすい雰囲気へと変身してくださったのだ。これ、なかなか出来ることじゃないんです。数々の有名人や文化人を取材してきたけど、インタビュー側の気持ちを考慮してくれる人なんて滅多にいない。さすが制作や編集の現場を知っている人だな、相手の気持ちが分かる人なんだな、と私のテンションはマックスに。そこからはスムーズに取材が進み、最後にもう一度、個人的に聞きたいことを尋ねた。それはシャネルが提唱しているメティエダールと日本の職人の手仕事に共通する精神性について。シャネルのメティエダールについては、過去のコラムに書いているので、よかったら読んでやってくださいまし。ラグジュアリーブランド好きな方の多くが日本の手仕事の精緻さをご存知なかったり興味がなかったりするので、海外ブランドを追いかける前にもっと日本の良さを知って欲しいと日頃から思っており、十河編集長にもそのあたりのお考えを聞いてみたかったのだ。そしたら、予想をはるかに超えた素晴らしいお答えが返ってきて、私はすっかり十河編集長の知性にベタ惚れしちゃったのである。「日本の職人の手仕事の素晴らしさは、おっしゃる通り、メティエダールの技術とまったく同じ次元で、もっと語られるべきですし、守られるべきだと思います。プロダクトはまったく違っても、実は精神性においては世界でも一二を争うほどではないでしょうか」と。


そんなわけで、とても充実した取材となったのである。ちなみにこの写真は、インタビュー場所となった某所某室の天井。日本建築の伝統技法である網代天井。モダンな洋のデザインにこの幾何学模様の網代を取り入れるとは、なんて素敵。そして十河編集長のおっしゃった「日本の手仕事とラグジュアリーブランドは同じ次元」という言葉がそのまま形となって現れていると言ってもいい。


そういうわけで、こんな素敵な十河編集長のインタビュー記事は、下記のミッドランドスクエアwebで期間限定でご覧になれます。ぜひアクセスして、お読みくださいませ。
ミッドランドスクエア My Story デジタルブック


山本益博さん×ミッドランドスクエア【徒然なるお仕事】


料理評論家の山本益博さんを名古屋駅の新幹線ホームにお迎えしたのは、お正月が明けて何日かたった頃だった。名古屋駅前にあるミッドランドスクエアの春の会報誌にご登場いただくための取材である。真冬に春の撮影をするので、出演者の方には春物を着ていただかなければならず心苦しい取材となるのだけど、この日は不思議に暖かい陽射しで、まるでマスヒロさんが新幹線で春を連れてきたような一日だった。


今回の取材は、ミッドランドスクエアをマスヒロさんに美味しく食べていただくという企画。マスヒロさんは「美味しいものを食べるのではなく、美味しく食べる」ことを提唱されている。日本人ならではの繊細な味覚で料理を美味しくいただくための術を、ミッドランドスクエアの幾つかの店舗で実際に教えていただこうという内容である。"美味しく食べる"には、食べ手にも心構えと技術が必要だということを著書などで説いていらっしゃるので、マスヒロさんの追っかけを自称する私は、その術を頭に入れたつもりでいた。でも実際にご一緒させていただくと、自分の知識の浅はかさや経験不足がいかに大きいかがよく分かるのだ。


実はマスヒロさんとお仕事でご一緒するのはこれで2度目。今から5年ほど前に某企業の取材ではじめてお逢いして以来、私はすっかりマスヒロファンになってしまった。以降、著書はもちろん読破、すきやばし次郎さんにご一緒させていただく栄に浴したり、イベントなどにお邪魔して追っかけをしている。マスヒロさんは、美味しいものを評論するというよりは、未来ある若手料理人を徹底的に応援したり、日本人として生まれた以上知るべき"食べ方"を教えてくださったりして、評論家という枠をとっくに超えた活動をしている。"食べ物と作る人すべてを慈しむ"ように、毎日の食事に真剣に向かっているのだ。私はその精神性に、ファンになったのである。今回の取材は、もう一度マスヒロさんとお仕事がしてみたいという私の熱望が叶ったと言ってもいい。


たとえば、取材したお店でとんかつを召し上がった後のお皿。キャベツもソースも残さずに召し上がる。もちろんご飯やお味噌汁も完食である。素材と作り手への敬意の気持ちを込めて、丁寧に食べ尽くす。これを見るだけで精神性が伝わるのではないかしら。


お茶目なマスヒロさんがジャケットに付けている蝉のブローチは、服飾専門家である奥様の手づくりで、これを付ければ「セミフォーマル」なのだと!なんという洒落っ気。ジャケット、蝉ブローチ、ジーンズ。ドレスダウンのお上手なことといったら!


そんなわけで、山本益博さんが美味しく食べたミッドランドスクエアの会報誌は、会員のみに郵送されていますが、期間限定で以下のwebでもご覧いただけます。ぜひアクセスして、マスヒロさんの美味しく食べる術をお読みください。目からウロコの話、美味しく食べるための術などを紹介しております。登場するお店は、和食を代表して「京都吉兆」。名古屋発の「雅木」と「紗羅餐」。さらにマルコリーニや福臨門酒家、和久傳、南翔饅頭店などなど。
ミッドランドスクエア「MyStory」デジタルブック


ちなみにこの取材が終わったのは18時。マスヒロさんはそのまま名古屋市内某所で軽く食事されるということで同行させていただいた。「ひとつのお皿を、どんな順番で食べればもっとも美味しいか、そんなふうに考えながら食べるから、カロリー消費しちゃうのかも」というマスヒロさんに倣って、目の前でマスヒロさんが召し上がる順番をそのまま真似して食べた私。まるで親が食べる様子をそっくり真似する動物のような気分になり、我ながら失笑してしまった。


市川櫻香さんの名古屋むすめ歌舞伎【伝統芸能の継承者たち】


日曜日は、市川櫻香さん率いる「名古屋むすめ歌舞伎」へ。もともと常磐津師匠を祖母に持ち、鳴物・長唄や小唄・三味線の師匠を母に持ち、西川鯉女さんに日舞を習った櫻香さんが、むすめ歌舞伎を始められたのは約30年前。市川團十郎家から名を許され、女性のみで構成する歌舞伎団体として活動されている。昨年の團十郎さんの訃報でショックを受けていらっしゃると聞いていたので、陰ながら心配していたのだけど・・・。今年は團十郎さんの長女である市川ぼたんさんを招いての会が開催されることになって良かったです。


ご一緒いただいたのは、櫻香さんの従姉妹で、映画ナビゲーターの松岡ひとみさん。ひとみさんはご自身も西川流名取りであり、お母様が西川流のお師匠さん、お祖母様が常磐津のお師匠さん、従姉妹がむすめ歌舞伎という芸能一家で育っている。


この日は一部と二部に分かれていて、一部が市川櫻香さんの歌舞伎舞踊『長唄 菊慈童』。この舞が、どこからどう見ても可愛い童女にしか見えない。舞う技術があれば年齢なんて簡単に超えてしまうのだから、ホントに舞踊ってすごいですよね。その後、團十郎さんの長女である市川ぼたんさんと共に團十郎さんを偲ぶお話。2007年と2009年の「市川櫻香の会」で演じられた舞台映像が流された。おなじ名古屋能楽堂の舞台ということもあり、まるで目の前で團十郎さんが演じていらっしゃるような錯覚に陥ってしまった。


そして二部が【名古屋むすめ歌舞伎】。二部からは、元深窓のワガママお嬢の母が参戦。舞踊が3曲続いた後に、市川家の十八番である外郎売が演じられた。例の、ぶぐばぐぶぐばぐみぶぐばく・・・あの早口言葉を19歳の曽我五郎が見事に演じきって、会場は大拍手。朝比奈の面白みも工藤祐経の哀しみもとても良かった。敵討ちの話なのに、視点が女性なんですね。慈しみとかやさしさが前面に出た外郎売になっていた。これはむすめ歌舞伎ならでは!と楽しませていただいた。


市川櫻香さんとナビゲーターの方のお話が続き、その後は市川ぼたんさんの舞踊【長唄 島の千歳】。さすがに市川ぼたんさん。圧巻でした。西川流の島の千歳しか観た事がなかったので、歌舞伎舞踊としてのぼたんさんの舞は、とてもキリっとしていてイメージがまったく違っていた。隣でずっと解説してくれていた母も「西川とは随分違うねぇ」としみじみ。母も若い頃は西川で舞踊を習っていて、島の千歳を舞台で踊った経験があるのだ。なんでも難しい舞踊なので「お師匠さんに教えてもらう時、泣きながらお稽古した」んだそうな。鼓は一人だけで打つので、鼓を担当する人も難しいからと嫌がることが多かったらしい。


母が箪笥の中から取り出して見せてくれた、
母の「島の千歳」の写真。
「まだパパのことを知らない時代、この頃は良かったわ」
と、若かりし頃の自分にうっとりしてました。


ところが、この日、母がいちばんうっとりしたのは、ぼたんさんの舞踊でも、自分の舞踊写真でもなく、この日にナビゲーターをされていた村上信夫さんでした。元NHKアナウンサーで、とても還暦には見えなかったし、おしゃべりも進行も確かにとてもお上手でしたけどもがっ。「かっこいいわ〜目の保養になるわ〜」を連発するとはねぇ。
うーむ、むすめ歌舞伎と舞踊を観に来たんじゃなかったっけ?と思いつつ、母の嬉しそうな顔を見ていたら、ついぞ何も言えなかった。なぜかというと、何十年か先の自分の姿を見たような気がしたからだ。


ダサい昭和で食事会【えとせとら】


ボケボケの写真にて大変失礼します。今宵は某所にて、網獲り鴨・網獲り小鴨・鹿・猪を食べる楽しい仲間の会でした。このお店、実に昭和っぽい界隈で、いわゆるキタナシュランなお店なので(今年行ったらいきなりリフォームされててキタナシュランではなかったので驚いてしまったけど)、こういうお店で食事会するならテーマは昭和でしょう!と盛り上がり、今宵のドレスコードは【ダサい昭和】ということになった。メンバーのほとんどが私と同年代ということもあり、我が青春の昭和と言えば思い浮かぶアイテムはほぼ一緒。ボートハウスとか、マディソンスクエアガーデンとか、ハイソックスにポロシャツにトレーナーとか、あのあたりのラインのことです。そういうわけで、ダサい昭和な格好の大人8人は某駅改札に集合した。


麻婆豆腐

麻婆豆腐

これは小鴨。トレビアンな美味しさ。

これは小鴨。トレビアンな美味しさ。

小鴨のもも肉たち。

小鴨のもも肉たち。

同率一位ということで優勝した3人。左からKちゃん/ミッキーマウスのパーカーに昭和のトレンドアイテムであるオーバーオールにポニーテール。ダサくならず妙に可愛くなっちゃうのは年齢のせいかも。真ん中/S先生。右/わたくしのテーマは3年B組金八先生!


私の格好は、とっくりのセーターに、アディダスのジャージ。
胸には「3年B組 近藤」の名札!
靴はスタンスミスのテニスシューズ。腰にセーターを巻きつけて
髪にはバンダナ代わりの手ぬぐい巻き!


ジャージはいたまま地下鉄に乗ったので、
周りの人からは思い切り白い目。
でも、ジャージってあったかいのね。
これ、ハマるかも。


私個人的にはグランプリを差し上げたかったのが
S先生のいでたち。
シャツをジーンズにイン。KISSのキャップに背中にはナップザック!
昭和の浪人生あるいはカメラ小僧
の香りがぷんぷんしませんか?




ほーら、カメラ小僧でしょ!


しかも靴下は、電車に乗る前に高島屋で仕入れたという「ブラック&ホワイト」の靴下!白い靴下って、なかなか売っていないそうで探すのに苦労したのだそうです。


ワイン好きの仲間なので、みんなでワインを持込みし、美味しいね、楽しいねと言いながら食べ進んだら、ものすごい量を食べてしまった。ワインを語ることもなく、ただ美味しいねとにっこり笑って飲むワインの美味しいことといったら!もちろん、プロのソムリエが食事に合うワインをちゃんと持ってきてくれたからこその至福だったのだけど、美味しい食事には楽しいということが第一の条件になるのなだぁと改めて実感した食事会になった。どうせやるなら徹底的に楽しむ大人の仲間たちよ、今宵は素敵な時間をありがとうございました。また夏には第2回ダサい昭和で食事会を開催しましょう。今から策を練っておきますわ。楽しい日曜日に感謝。明日からお仕事がんばろうっと。


2013年お世話になりました【暮らしの発見】


いよいよ大晦日・・・というのに、まだ「今年中」の仕事が終わっていない。とはいえ、年始(つまり1/6の朝)に取引先のpcに原稿が到着できてればいいので、今日は事務所部屋のプチ掃除をしたところ、書類の山のほとんどがゴミ袋行き。書類にまぎれてとってあった手紙類も出て来て、いちいち読んでは思い返したりしてちっとも掃除が進まない。最近はビジネスもプライベートもすっかりメールで済ませていることが多い上に、近況はfacebookでの報告になってしまっているので、手紙のやりとりがほとんどない。だからこそ肉筆で書かれたお手紙は貴重で嬉しくて捨てられないのだ。皆さん、いただいたお手紙ってどうしていらっしゃるのでしょうか?聞いてみたいと思う。


便箋やカードの趣味から感じるその人のセンス、外見とは違った印象の書き文字など、メールの文字では伝わらない体温のようなものが生き生きと見えてくる。2013年もそんな心温まるお手紙をたくさんいただいた一年となった。私もひどい乱筆なのだけど、恥ずかしがらずにこれからもお世話になった方にはお手紙を書いて、心を伝えていこうと思う。


ちなみにこれは友人のイラストレーターが
当事務所への請求書にくっつけてきた
手づくり似顔絵ペーパークリップ。
さすがイラストレーターなんですが、いちいち笑えます。
こういうのも嬉しい。


こちらはfacebookで作った自分新聞2013の一部。他の部分は不思議な結果だったので公表しないけど、この流行語大賞はちょっと笑えたので公開!コピーライターなのに語彙が少ないとか!裸で走り回ったとか、うーむ、妙に現実的かもしれません。


とまぁ、そういうわけで、まだ事務所部屋のプチ掃除は続行中なんですが、とりあえず2013年はお世話になりました。2014年も頻繁なコラムアップは出来ないかもしれませんが、どうぞごひいきによろしくお願いいたします。皆様よいお年をお迎えくださいまし。


世界にも通用する究極のお土産【徒然なるお仕事】


わ、一ヶ月もコラムアップをさぼってた・・・すみません。
今日は嬉しいニュースのご報告。当事務所ラルムとして、新商品開発・ネーミング・ロゴマーク・パッケージデザインをトータルに担当させていただいた泉屋物産店(岐阜市)の「鮎のリエット」と「鮎の白熟クリーム」が、観光庁主催「世界にも通用する究極のお土産」の逸品として選ばれたのである。全国から数多くの名産品の応募があり、書類審査を通過した110品の中から見事ベスト9に選ばれたもので、やがてはこれらの商品が地域活性化のきっかけになるようにと願いが込められているのだとか。泉さん、おめでとうございます!
http://www.oricon.co.jp/news/video/2031475/full/
泉屋物産店は鮎の加工品を扱うお店としては岐阜市の老舗。同経営の長良川河畔にある美味しい鮎料理のお店はご存知の方も多いと思う。このコラムでもたびたび登場しているので、お友達はよく知っててくださると思うのだけど、今から4年前に、泉屋物産店の洋風新商品開発を私がお手伝いさせていただいた。鮎の内臓をリエット風に仕上げたものが「鮎のリエット」。鮎の熟れ寿司のご飯部分をサワークリームなどと和えたものが「鮎の白熟クリーム」。夕ご飯は和食と日本酒という固定観念からすっかり感覚が変わり、多様化したニッポンの食卓には、ボーダーレスな商品開発が必須だというのが、泉屋物産店・泉社長の想い。その情熱をカタチにするために、当時は毎日鮎のことばかり考えていたっけなぁ。確かちょうど今頃の季節だったなぁとちょっと懐かしく思い出している。ま、飲んでは食べ、食べては唸り、ワインやシャンパンにも合う"おつまみ"として認識しながら、ネーミングを考え、パッケージデザインを生み出したということであります。ちなみに商品開発には、フランス料理レストラン・ヴァンセットの青木シェフにアドバイザーとして入っていただき、フランス料理の視点からもいろいろなご意見をいただいた。


上の写真も左の写真も、我が家で撮影したもので、
コーディネイトは私でござる。カメラはなぎさ嬢。
↑上が「鮎の白熟クリーム」。
←左が「鮎のリエット」。
なんか懐かしいなぁ。


瓶詰めされた完成品の写真が私の手元にはないので残念なのだけど、
詳しくはhttp://www.oricon.co.jp/news/video/2031475/full/で見てみてください。今回の選定商品は、今後いろいろなネットショップや百貨店でも取扱いが始まるらしい。けれど私個人的には、やはりその土地に行って、その土地の美味を味わっていただきたいと思うので、鮎のリエットと白熟クリームにご興味がある方は、ぜひ岐阜市に遊びにいらしてくださいませ。長良川の美しい風景と美味しい水、金華山の優雅な姿を拝みながら、鮎を食べる至福をぜひ味わっていただきたいと思う。岐阜市の観光は夏の鵜飼だけじゃないのだ。よろしかったら私がご案内いたしますので、ラルムトラベラーにご用命くださいませ。


やっとかめ文化祭を見にゆこう!【伝統芸能の継承者たち】


10/31から、名古屋で「やっとかめ文化祭」がスタートした。今年から始まったこの文化祭は、名古屋に昔から根付いている伝統芸能にスポットをあて、その面白さを次代へと繋げるために、名古屋市内の各所で約一ヶ月に渡ってさまざまな芸能を鑑賞できるイベントである。名古屋市をはじめ、名古屋市文化振興事業団、名古屋観光コンベンションビューロー、中日新聞社が主催している。私はこの文化祭のパンフレット制作に携わらせていただいた。もともと芸能好きの祖父母や両親、叔父叔母に囲まれて育ち、小さい頃は芸者さんに遊んでもらった子供だったので、日舞や長唄、小唄、三味線、都々逸などが生活の中にいつも存在していた。生活の中に芸能があったなどと書くとたいそう聞こえはいいが、要するに親戚が集まってお酒を呑み、酔っぱらってくると、誰かしら小唄を謳い出したり、都々逸でエロスを発揮したり、というのが日常だった、と表現した方が正しい。


そんなわけで、このお仕事は、まさに楽しみながら仕事ができた好例かもしれない。なぜかというと、原稿を書きながら「この演目は確か○年前にあそこで観たのだな」とか「この出し物は面白いから見に行かなくちゃ」とか「あら○○○さんが出演されるのね」とやたら独り言の多い作業となったのである。


伝統芸能というと、なんとなく難しそうな雰囲気がしたり、どうせ古典だから面白くない、と思われがち。ところが、このやっとかめ文化祭では、そんな苦手意識がふっとんでしまうような仕掛けがされているのだ。「なぁんだ、おじいさんが謳ってるけど、よく聞いたら男と女のエロ話じゃん」「面白いパフォーマンスかと思ってよく見たら狂言だったのか」「これは現代で言うと吉本新喜劇なんだね」と思えるような演目が選ばれているし、古典芸能をまったく知らない人でも気軽に入っていけるようにストレートな面白さを追求している。


特に、街の真ん中で突然ゲリラ的にはじまる「辻狂言」は見ものである。寺子屋と称してお勉強できるイベントもあるし、とにかく市民参加型の文化祭としてはかなり面白くなるはず!伝統芸能に興味がない方へ→もし街の中でパフォーマンスに出くわしたら、ちょっと耳を傾けて観ていただきたい。今まで知らなかった笑いの世界がそこにあるはずだから。伝統芸能にちょっとは興味有りの方へ→下記にアクセスいただき、辻狂言やまちなか寺子屋、能楽舞台などをぜひチェックしてください。入場無料の演目もたくさんあるので、お気軽に遊んでくださいまし。
やっとかめ文化祭の詳細はこちらへ


昨晩のオープニング。

昨晩のオープニング。

これは都々逸の舞台。

これは都々逸の舞台。

これは平成殿様踊り。

これは平成殿様踊り。