徒然なるお仕事

山本益博さん×ミッドランドスクエア【徒然なるお仕事】


料理評論家の山本益博さんを名古屋駅の新幹線ホームにお迎えしたのは、お正月が明けて何日かたった頃だった。名古屋駅前にあるミッドランドスクエアの春の会報誌にご登場いただくための取材である。真冬に春の撮影をするので、出演者の方には春物を着ていただかなければならず心苦しい取材となるのだけど、この日は不思議に暖かい陽射しで、まるでマスヒロさんが新幹線で春を連れてきたような一日だった。


今回の取材は、ミッドランドスクエアをマスヒロさんに美味しく食べていただくという企画。マスヒロさんは「美味しいものを食べるのではなく、美味しく食べる」ことを提唱されている。日本人ならではの繊細な味覚で料理を美味しくいただくための術を、ミッドランドスクエアの幾つかの店舗で実際に教えていただこうという内容である。"美味しく食べる"には、食べ手にも心構えと技術が必要だということを著書などで説いていらっしゃるので、マスヒロさんの追っかけを自称する私は、その術を頭に入れたつもりでいた。でも実際にご一緒させていただくと、自分の知識の浅はかさや経験不足がいかに大きいかがよく分かるのだ。


実はマスヒロさんとお仕事でご一緒するのはこれで2度目。今から5年ほど前に某企業の取材ではじめてお逢いして以来、私はすっかりマスヒロファンになってしまった。以降、著書はもちろん読破、すきやばし次郎さんにご一緒させていただく栄に浴したり、イベントなどにお邪魔して追っかけをしている。マスヒロさんは、美味しいものを評論するというよりは、未来ある若手料理人を徹底的に応援したり、日本人として生まれた以上知るべき"食べ方"を教えてくださったりして、評論家という枠をとっくに超えた活動をしている。"食べ物と作る人すべてを慈しむ"ように、毎日の食事に真剣に向かっているのだ。私はその精神性に、ファンになったのである。今回の取材は、もう一度マスヒロさんとお仕事がしてみたいという私の熱望が叶ったと言ってもいい。


たとえば、取材したお店でとんかつを召し上がった後のお皿。キャベツもソースも残さずに召し上がる。もちろんご飯やお味噌汁も完食である。素材と作り手への敬意の気持ちを込めて、丁寧に食べ尽くす。これを見るだけで精神性が伝わるのではないかしら。


お茶目なマスヒロさんがジャケットに付けている蝉のブローチは、服飾専門家である奥様の手づくりで、これを付ければ「セミフォーマル」なのだと!なんという洒落っ気。ジャケット、蝉ブローチ、ジーンズ。ドレスダウンのお上手なことといったら!


そんなわけで、山本益博さんが美味しく食べたミッドランドスクエアの会報誌は、会員のみに郵送されていますが、期間限定で以下のwebでもご覧いただけます。ぜひアクセスして、マスヒロさんの美味しく食べる術をお読みください。目からウロコの話、美味しく食べるための術などを紹介しております。登場するお店は、和食を代表して「京都吉兆」。名古屋発の「雅木」と「紗羅餐」。さらにマルコリーニや福臨門酒家、和久傳、南翔饅頭店などなど。
ミッドランドスクエア「MyStory」デジタルブック


ちなみにこの取材が終わったのは18時。マスヒロさんはそのまま名古屋市内某所で軽く食事されるということで同行させていただいた。「ひとつのお皿を、どんな順番で食べればもっとも美味しいか、そんなふうに考えながら食べるから、カロリー消費しちゃうのかも」というマスヒロさんに倣って、目の前でマスヒロさんが召し上がる順番をそのまま真似して食べた私。まるで親が食べる様子をそっくり真似する動物のような気分になり、我ながら失笑してしまった。