LARMES Column

スイーツ天国!【えとせとら】

先々週、友人のフリーアナウンサー・加藤千佳ちゃんのお誕生日パーティーが開催された。場所は、クッチーナ・イタリアーナ・ヤヤマ。我が家から徒歩数分のイタリアンで、千佳ちゃんセレクトメニューもあり、美味しく楽しい会だった。彼女はアナウンサー業のかたわら、スイーツやパンのサイトを主宰していることもあり、その夜はなにかとスイーツが話題になった。


オーナーシェフの矢山氏が千佳ちゃんのために作ったバースデーケーキはメガサイズのショッキングピンクイチゴケーキだったし(シメシャンはロゼを用意していけば良かったぁ〜と後悔しきりでした)、某T島屋でオープン直前だったドーナッツがお目見えするし、シフォンケーキで有名な某F社の新商品も試食できちゃったりした。


こちらが某T島屋に17日にオープンしたばかりのドーナッツ。なんでもオープンした日は千人あまりの行列ができたという話だけど、すごいですよね。T島屋の独身ナイトハンター・ナナちゃんがばっちりアピールしていた。


そしてこちらは、フレーバーの新商品「マーナズ・グラノラ」。(ボケボケでごめんなさい!)岩田社長自ら説明してくださり、口卑しい私は食事中にもかかわらず早速味見させていただいた。見た目はビスケットっぽいけど、実際いただいてみるとシリアルをぎゅっと凝縮した感じで、美味しいんです。オートミール・ブラウンシュガー・メープルシロップだけが原材料だと岩田社長はおっしゃったけど、どうやって固めるの?と素朴な疑問がわいたので聞いてみた。


「シリアルのでんぷん質を利用して固めてるんですよ〜」とのことで、これまたびっくり。余分な物が一切入っていなくて、噛み締めるほどに自然の甘みをじんわり感じることができる。普通のシリアル感覚で牛乳かけちゃっても良さそうだし、岩田社長いわくヨーグルトとの相性も良いのだとか。これもT島屋のフレーバーで買えるそうです。


というわけで、千佳ちゃんバースデーは、私も大好きなスイーツ話とワイン話と美味しいお食事やお店情報、さらには一部エロトークも混じり合って、楽しく不思議にコーフンした一夜だった。お食事やワイン、そしてエロスはすべて繋がっている、とどこかのゲージュツカがおっしゃってたなぁと思いつつ、それがどなただったのかを思い出せないままに、千鳥足で久屋大通を北上して帰路についたのだった。一体誰だったんだっけか???


こちらは、これまた某T島屋に1月末から並び始めたワタクシの大大大好きな豆大福!東京上野の岡埜栄泉から、なんと毎日入荷しているというんだから、T島屋のスイーツ根性にはたまげた!下町上野の銘菓と言えば、岡埜栄泉の豆大福とうさぎやのどらやきと昔から決まっていて、上野の美術館に行く時にこの大福のことを思い出し、どうしてもガマンできなくって豆大福を買い、上野公園のベンチで食べちゃうのが私の数少ない至福の時間である。江戸では町民文化が発達したから、今でも銘菓と言えばおせんべいや大福などの庶民派おやつが美味しいのだ。京都は上品な生菓子や干菓子ですよね、やっぱり。


岡埜栄泉は、根岸にも谷中にもあって(別々の経営らしいんだけど)、特に谷中のお店は構えもご店主のおじさんも昔の風情たっぷりで大好きだ。いつか、名古屋へお土産に持って帰りたいとおじさんに告げると、「うちのはね、やわらかさが売りなんだから、絶対に今日中に食べてくださいよ」と江戸弁でまくしたてられたことがある。何が美味しいって、そのおじさん言う通り、日持ちはしないが塩味がしっかりきいた皮のやわらかさ、そして餡のコクと味わい深さだ。T島屋さんのご努力のおかげで、この豆大福を毎日でも買うことができるのだから、本当に新幹線とT島屋の企画担当の方には感謝感謝である。(一回前のコラムには確か地元で獲れた物を地元で消費するべし的な記事を書いているっつうの!)あ、上野のうさぎやは、大学時代の同級生・谷口クンが家業を受け継いでいるお店でございますので、こちらのどらやきも名古屋駅のT島屋で買えるようになったりしちゃったら嬉しいなぁと思う今日このごろである。


瀬戸内の美味に想う【今日の地球】

松山を旅してきた。愛媛はおろか、実は四国そのものに舞い降りるのが生まれてはじめてのこと。昨年末NHKで放映された「坂の上の雲」で松山を舞台にしたお話と松山の美しい風景(実際は全国あちこちでロケされているのだけど)にすっかり心奪われてしまい、久々に旅心に誘われたというわけだ。松山や道後温泉、坂の上の雲ロケ場所巡りツアーのことなどは後日アップするとして、松山"旅の手帖"第一弾は、瀬戸内の美味しいお魚について書こうと思う。


松山では、瀬戸内で獲れる鯛の炊き込みご飯やお茶漬けが名物となっている。私がいただいたのは、鯛のお刺身を卵とゴマを使ったタレに浸してご飯にかけて食べるもの。ただ、残念ながら観光客相手のお店だったのか、独特のもったりした脂がのっている養殖鯛だった。結構良いお値段だったので、少々がっくり。


お昼をいただいてからお城だの温泉だのでかなりの距離を歩いたので、おなかがすきすきの状態で、気を取り直してお夕食でございます。
せっかく松山に行くのだから、瀬戸内の美味しい小魚を食べさせてくれるお店、名古屋でいうところの「勝手屋」さんのような居酒屋に行きたいなと思い、いろいろリサーチしたが、残念ながら現地に知り合いがいない街では、ネットやガイドブックしか頼りになるものがない。以前博多出身サイトーさんに教えてもらった博多のお寿司屋さんがびっくりするほどお値打ちで、地魚を徹底的に美味しく食べさせてくれたので、その経験から地元の物を大切にする料理人のお店に行きたかったのだ。


結局、ネットで探して行き着いたのは、佐田岬半島の三崎漁業組合が経営する居酒屋さんだった。松山市内の住宅街のような場所にあり、地元の人が普段食べに行っている感じの、ごくごく普通の居酒屋さん。
そこでいただいたのが、このお刺身でございます。カンパチ、タチウオ、鯛、そして岬(はな)アジに岬サバ!岬アジとは、大分県佐賀関の関アジと漁場を共にする佐田岬半島の三崎漁港から出荷されるアジのことを言う。潮がぶつかりあう浅瀬の岩礁に棲み着いていて、大海原を大群で回遊するアジと違い、身が締まって旨味が強い。実際にいただいていみると、もうそんな面倒な説明などどうでもよくなるほど、本当に新鮮でこりこりしてふんわりと香る美味しいお魚だった。名古屋や東京のお寿司屋さんだったら、もう少し薄く切るんじゃないかな?と思うほど、どのお魚も分厚くて大きかったし、いわゆる"洗練"という言葉からはほど遠いお料理だったけど、これこそ獲れたばかりのお魚を地元で消費する美味しさに満ちていて、大満足の一夜を過ごした。お刺身の手前にある柑橘は、なななんとカボス!一瞬、色からして伊予柑???と思ったけど、絞ってみるとやわらかな酸味が特徴のこれまた美味しいカボスだった。さすが四国!
さらに、お昼の雪辱をはらすため、最後の〆ご飯は、鯛ご飯をオーダーした。すると、天然と思われる身の透き通った鯛のお刺身が、お昼と同じく卵とゴマのタレにかかって出てきた。最初に鯛のっけご飯で、次に上からお茶をかけてお茶漬けにしていただいた。もちろん、ごくごく上品なとっても美味しい鯛ご飯であった。さすが漁業組合直経営!


さてさて最後のお夕食。松山空港で瀬戸内最後の食べおさめとばかりに、導かれるようにしてお寿司屋さんの暖簾をくぐった。瀬戸内産とおぼしきネタにうっとりしながら、まずはビールとお刺身を注文する。すると、出てきたのは、新鮮なぷりぷりのカンパチ、岬アジ、岬サバ・・・とここまでは良かった。この後、びっくり仰天、まぐろの赤身が供されたのである。すっかり気分は冷めながらも仕方なく一口いただくと、予想通り冷凍物が解凍されて、さらにドリップが出きった後の旨味の抜けたパサパサのまぐろだった。地元のお魚で、とオーダーしなかった私が悪いのか。
目の前で獲れた新鮮な瀬戸内の小魚にこんなにも恵まれているのに、なぜ、まぐろ???お寿司屋といえばまぐろが出てくるというのがもしかして日本の常識になっている?そしてそのおかしな常識は、どこかの大手回転寿司会社が作ったのか、それとも日本人の頭の中がそこまでおかしくなってしまっているのか?日本全国、どこのお寿司屋さんに行ってもまぐろがあるなんておかしいじゃないですか。クロマグロがワシントン条約で禁輸になるかもと騒いでいるけど、もしも日本人の味覚とお魚への意識がどうかなってしまっていて、クロマグロを世界中で乱獲して冷凍しないとお寿司屋さんが成り立たないのだとしたら、ワシントン条約による禁輸は決行されるべきだと思う。近海で獲れたお魚を地元で美味しく消費する、そんなごく当たり前の“楽しさ”を知る自由がないなんて!冷凍技術なんてくそくらえだ!納得できない気分のままに、すっかり下品になった私は、夕暮れ時の真っ赤な空をゆく機上の人となった。


さくら城に沈む月【えとせとら】

昨夏30年ぶりに再会を果たした中学時代の同級生・井戸えりちゃん。彼女から先日一枚のハガキが届いた。井戸えりちゃんは、立体美術家で、かばんも作っちゃうし、舞台の衣装なんかも担当するマルチアーティスト。いろんな所で個展やグループ展を開催し、地道に制作活動を続けている。今回は、彼女が衣装を担当するお芝居のお知らせだった。
「さくら城に沈む月」という舞台は、戦国時代の伊勢の国に実話をもとに作られている。話の舞台になっているのは、現在の四日市市桜のこと。さくら城下でおきる恋愛話と家同士の争いなど、いろいろな「縁」が紡がれ、もつれ、ほぐれていくお話らしい。
えりちゃんは、衣装のデザイン、一部染色、縫製を手掛けている。一人で全部やっちゃうなんてスゴいですよね〜。そのお芝居には仏教版ゴスペルの「声明」も加わるとのことで、楽しみな舞台になりそうだ。声明は歌うように唱えるお経みたいなもので(間違っていたらごめんなさい)、以前に京都のお寺の住職さんと知り合いになった折に聴かせていただいたことがある。私が聴いたのはゴスペルというより、どちらかというとお経のフォークソングみたいな感じだったけど、おそらく歌う人によってまったく印象が違うのだと思う。
この舞台は今月末の週末に名古屋・覚王山の相応寺本堂でおこなわれるというのだから、これまた空間と舞台の相性も楽しみな要素のひとつである。
ご興味がおありの方は是非お出かけくださいませ。
チケットぴあでも取り扱いがあるようでございます。


「さくら城に沈む月」 劇工房MAKOプロデュース
3月26金曜19時、27土曜19時、28日曜18時30分
入場料/一般前売2500円、当日2800円
お問い合わせ/劇工房MAKO企画 09017520168(浜島)
www.md.ccnw.ne.jp/makokikaku/
会場・浄土宗 宝亀山 相応寺本堂


肉食女子の丹波しし鍋【おうちごはん】


これは、丹波栗を食べて育った美味しい肉質のイノシシ肉の写真でございます。ジビエの季節に必ず催す我が家恒例の「丹波しし鍋会」でございます。むふっ。

このしし鍋との出逢いは今から9年前で、兵庫県丹波篠山市を旅した時のことだった。昼食をとろうとお店を探すが、街にはしし鍋屋さんしか見当たらない。しし鍋にいい思い出のない私は、"しぶしぶ"テキトーにお店に入った。
ところが・・・そこで供されたしし鍋にびっくり仰天したのである。なに!このお肉!なに!この脂!と感嘆の声をあげつつ、ぺろっとお鍋いっぱいたいらげてしまった。それから約5年。そのしし鍋を食べるためだけに、真冬の丹波篠山を訪ねるようになった。何年か通ううちに、料亭の女将さんからなにげな〜く味噌の作り方を聞き出し、なにげな〜く取り寄せできるしし肉屋さんを教えてもらった。そう、無謀にもこのお鍋を自宅で食べる方法を画策したのである。


丹波からしし肉を取り寄せ、三日三晩お味噌を練り合わせ、自分でしし鍋を作るようになって今年で何年目だろう。とにかくいろんな所で「美味しいしし鍋があるのよ〜」と吹聴し、今年もほぼ強引に皆さんをお誘いし、丹波しし鍋パーティーを催したというわけだ。


これは第一回目の時のメンバー。左から、フランス料理のヴァンセットの青木シェフ、秀代ママ、娘のかほちゃん。一番右は、代表取締役鮎焼職人、日本一の鮎を焼く川原町泉屋の泉さん。写真には映っていないけど、お店の営業があるため途中で帰ってしまったご近所のスペイン料理、ラ・フエンテの山内シェフも来てくださった。お料理のプロばっかりこんなに集めて、自宅で素人料理を出すなんていい度胸!って思われるでしょう?確かにそうなんですが、その心配など一気にふっとんでしまうほど、丹波のしし肉は美味しいんでございます。この日もプロの皆さんが美味い美味いと喜んで食べてくださった。写真は食べ終わった後、いい感じで出来上がっている様子。


この日にみんなで飲んだお酒たち。翌日空瓶を片付けていて、そのあまりの瓶の多さに自分でもびっくり。ついつい記念撮影しちゃいました。
我が家でしこたま食べて飲んだ後に、山内シェフのお店で再び飲み、さらにその後シャンパンを飲みに別のバーへ移動した。飲みすぎだっちゅうの、ホントに。


この丹波しし肉の何が美味しいって、脂なんです。ねっとりした脂が長い時間特製味噌で煮込むことでバターのような香りと共に奥深い甘みとなる。それが熟成したシャルドネとよく合うんですよ。山内シェフによると"シェリー"がピッタリくるんじゃない?とのことなので、また来シーズンの楽しみが増えてしまった。それにしても、やっぱりお肉の究極の旨味は脂にあるんですね〜。これに丹波の山の芋やにんじん、かぶ、ネギなどの根菜をいただき、最後にどろどろになった味噌で太めのおうどんを煮て、上から山椒をふりかけていただくと、これまた絶品。こうして書いているだけで生唾ものでございます。


これが第二回目。実はこの日は「ジョシがシシを喰らう会」という名目で、りっちゃん+千佳ちゃん+有紀ちゃん+ワタクシの女子4人でシシを喰らうはずだったのが、千佳ちゃん&有紀ちゃんに不慮の出来事があり残念ながら不参加となったため、夜6時過ぎから慌ててお誘いしたにも関わらず、この面々が駆けつけてくださった。左から岡本女史、美紀おねえさま、そしてホスト役の甥っこノゾム。一番右は当初から"喰らう"メンバーのりっちゃん。おかげさまで丹波のしし君も成仏できたでしょうね。お越しくださり、ありがとうございました。千佳ちゃん&有紀ちゃん、この続きは来シーズンまでお預けよ。
というわけで、草食男子をよそに、肉食女子としてこれからもお肉を喰らって生きてゆきたいと改めて思う、パワーみなぎる春なのだ。なのだったらなのなのだ。


梅の精 桜の詩【えとせとら】


本日より3/28まで、名古屋・栄の地下街セントラルパークにあるセントラルギャラリーで、カメラマン池田史郎氏の個展が開催される。タイトルは「梅の精 桜の詩」。史郎さんが何年にも渡って撮影した梅や桜など、日本の里山の美しい風景を圧倒的なスケールで観ることができる。池田史郎さんは、名古屋の広告カメラマンとしてはすでに重鎮で、スタジオワークのご意見番でもある。はじめて会う人は多分小難しいという印象を持つと思うけど、実際にお話していると結構というかかなりお茶目な人なのだ(奥様の敏子さんがこれまたサイコーにお茶目で可愛い方!)。ところが、今回の作品はご本人の印象とは少し違って、マジメに美しい。圧倒的な花の美しさを史郎さんが黄金比率に切り取ったもので、作品を見せてもらった時は思わず「きれい」と言葉をもらしてしまった。史郎さん曰く、「春の花は、どんな人の顔をも笑顔にする」ので、その花の美しさをなんとか写真におさめたいと思ったそうだ。



この個展に出展されるのは、花の写真が39点。そして、写真に添える文章を私が書かせていただいている。史郎さんの美しい作品にふさわしい文章が書けたかどうか、少し不安はあるけれど、皆様、お時間がございましたら、あるいは「久屋大通」駅で乗降されることがあったら、あるいはセントラルパークでお買い物されることがあったら、セントラルパークの一番北側のセントラルギャラリーにて3/28まで開催されているので、是非足をお運びくださいませ。
ちなみに2年前、私もこの同じ場所で、フランスの食事情やビオディナミワイン畑を訪ねた旅をエッセイにして発表した「美味しフランスぶらぶら紀行」を開催している。あれも4月のはじめの頃でまだ花冷えの寒い時期だったことを懐かしく思い出しつつ、今日、会場をぶらぶらしていた。


小三郎さんと魯山人とブラジャー【伝統芸能の継承者たち】

日曜日にミッドランドスクエアで催された「狂言の宴」に出掛けてきた。狂言を観るのは何年かぶり。最後に観たのは確か例のお騒がせの自称和泉流家元のあの方の舞台だったような気がするので、本当に久しぶりの狂言である。今回は名古屋在住の「本物」の能楽師和泉流狂言方、野村小三郎さんの舞台である。狂言は、なんといってもコミカルな内容が多いのと、現代の口語に近いので聞き取りやすく、特に説明を聞かずとも舞台に集中して楽しむことができる。難しいモノはからっきし苦手な私でも、予備知識なしに観ることができた。伝統芸能に興味はあるけど、難しそうと思っている人の入門には狂言が一番入りやすいのではないかしら。


この日の演目は、「三本柱」と「井杭」。間に素囃子「神楽」が入った仕立てであった。狂言はどちらも可笑しみにあふれていて、わかりやすい内容で十分に楽しむことができた。人間の意地悪な部分や滑稽な部分がお話の題材になっているので、溜飲が下がると言ったらいいだろうか。なにかスカッとした気分にさせてくれる。若手注目株の野村小三郎さんの丁寧な仕舞いの舞台に、気持ちの良さを感じた一日だった。ミッドランドホールという特殊空間での舞台に、きっと細かなご苦労をされたと拝察する。今度は能楽堂の檜舞台でぜひ拝見しようと思う。
素囃子の「神楽」では、これまた久しぶりに気持ちの良い音に出逢うことができた。後藤孝一郎さんの小鼓の音が素晴らしく、なんとも言えない円熟味があるのだ。母と舞踊を観に行き、鼓の美しい音色に出逢うと、いつも母が「あぁ気持ちが良い、頭から音が抜ける気がする」と言う。今日、私が感じた気持ちよさは、母が言うあの感覚と同じようなものかしら。小説「きのね」(宮尾登美子)で主人公が舞台の上で打ち鳴らされる柝の音を聞き、じんわりと感じ入るというシーンを思い出した。ミッドランドホールの音響は決して良いとは言えなかったけど、それでもあの円熟味のある音を鳴らすのだから、さすがに年季の入り方が違う。これまた、次回は是非能楽堂で拝聴したいものである。


ミッドランドで狂言を観た後は、JR名古屋高島屋10階で催されている「魯山人展」へ。いやいや、すんごい人でした。魯山人って人気あるんですね〜。今回はポルトガルから里帰りしたという絵画作品が目玉で、明らかに琳派の影響を受けまくったと思われるレイアウトの大きな作品だった。かの伝説の料亭「星岡茶寮」のために作陶した陶器もたくさん展示されていた。鑑賞用と料亭で使用するための器では、まったく作り方が違うので、改めて現物を見てびっくり。正直に言うと、実際に星岡茶寮で使われていた器を見ても、あまりピンとこない。なぜかしら。多分、料理が盛られて「ナンボ」の器だから、料理と共に愛でなければ意味がないからかな。と考えていたら、展示されている物と同じ器に「辻留」の料理人が作った料理が盛られた写真が奥に飾られていた。でも〜やっぱり写真じゃ伝わらないんですぅ〜。器と料理のバランスの良さが。
器は料理のキモノであるという魯山人の言葉に、恐れ多くも言葉を付け加えさせていただくなら、器は料理のキモノであり、実際に使って愛でてこそ意味のあるもの、ということですね。キモノだって、美術館で飾られているよりも、実際に帯や小物と合わせて着こなしてこそ、素敵だなと思えるものですもの。
魯山人の器はもちろん入手できないけど、せめて「うつし」くらいは手に入れて、お料理に精を出してみようかな〜と妄想しながら鑑賞が終わり、気づいたら夕方。すっかり陽も暮れておなかも空いていた。連れと共に発した言葉は「ね〜ね〜、これからなに食べる〜?」はてさて、魯山人鑑賞効果があったのかどうか・・・。


さて、日にち変わって小三郎&魯山人鑑賞の2日後、時計の電池交換のため同じくJR名古屋高島屋の10階に訪れた。2日前とまったく同じエスカレーターで昇っていくと、そこには老若問わず女性の黒山だかりがっっ。天井からぶら下がっている看板には「半期に一度!ワコール大感謝セール」と書いてあるではありませんか!あれ、ここ、2日前には魯山人の展覧会やってたとこだよね〜と思いながら、女性の黒山だかりを横目で鑑賞しつつ、半期に一度の言葉につい心惹かれるワタクシ。ふらふらと黒山の中へと吸い込まれると、そこで、うら若き女性同士の会話が聞こえてきた。「これは〜勝負下着で、こっちは普通の日用にする」「その色だとキワドクない〜?」ふむふむ、勝負用と普通の日用で使い分けてるのか〜と観察しながら、とある理由で勝負下着を必要としないワタクシは、結局何も買わずにスルー、女性の蠢きを後ろにして時計売り場へと急いだ。それにしても、魯山人の高尚めいた会場が、2日後には欲だらけのブラジャーの山になるとは、百貨店というのは本当に面白い空間でございますね。


なごや下町商店街ムービー【えとせとら】

さてさて、今日は映画製作のインフォメーションです。友人の高木麻里が製作委員会の会長を務めているのが「なごや下町商店街ムービー」である。名古屋市西区の円頓寺商店街の理事長の肩書きを持つ彼女の、生まれ育った商店街での体験をもとにしてストーリーが作られており、テーマは「おせっかい」だそうだ。
小学生の男の子が主人公で、円頓寺商店街や堀川が舞台となり、商店街の人々もボランティアで協力するというのだから、手作り感あふれる映画になるだろう。監督は古波津陽さん、撮影は桐島ローランドさん。公開予定は今年の終わりか来年の頭くらいだそうだ。


そこで、皆様にお願いしたいのがこの映画製作のための支援金のご提供、である。個人の方なら一口1万円〜。企業協賛は30万円、100万円がある。支援金を提供すると、エンドロールやパンフレット、DVDに名前が掲載されるほか、チケットやスペシャルDVDが進呈される。かくいう私も個人名義でなけなしのお金を提供するつもりだ。私自身がこの商店街が大好きで、下町情緒という言葉をそのまま町にしたような温かい商店街に、いつも自転車をかっ飛ばして遊びに行っている。
行けば必ず買うのが、お肉屋さんのコロッケとメンチカツ。「菊井カツ」でソースをたっぷりかけて食べる串カツも捨てがたいけど、「はね海老」の海老フライも「西アサヒ」のタマゴサンドも、さらに「勝利亭」のハヤシライスも迷うところだ。高木麻里の実家である下駄屋さん「野田仙」にはそろそろ今年の下駄を買いに行かなくちゃいけないし、野田仙の真ん前にはスタイリストさんがオープンさせたばっかりのお店があるからのぞかなくちゃいけないし、その隣にはもうすぐスペインバルが開店する。ねっ、楽しそうでしょ〜円頓寺商店街!
皆様、ぜひぜひ、この素敵な町を舞台にした映画製作に、支援金のご提供をよろしくお願いいたします。私の手元に紹介パンフレットがいっぱいあります!
お問い合わせは → 052-990-6428 (なごや下町商店街ムービー製作委員会事務局)
オフィシャルサイト→http://www.nagom.jp/


啓蟄を知らせる【今日の地球】

三寒四温の言葉どおり、少しずつ春が近づいてきている。三寒四温、いい言葉だなぁ〜。
今朝、昔から使われている言葉とか、昔の人の鑑賞眼はすごいものだなぁとつくづく実感する出来事があった。
今日3月6日は「啓蟄」である。啓蟄(けいちつ)とは二十四節気のひとつで、冬ごもりしていた虫が外に這い出てくる頃のことを言う。「啓」には「ひらく、開放する、(夜が)明ける」などの意味が、「蟄」には「冬ごもりのために虫が土の下に隠れる、とじこもる」という意味があるそう。要するに、春への扉を開けて虫が外に出てくるということで、人間だけでなく虫にとっても居心地の良い温かさを感じる季節、というわけだ。


我が家のリビングは南向きで冬でも結構温かい。お天気が良ければ、暖房を入れなくてもぽかぽかしていて、気持ち良くお昼寝できちゃうほどだ。そして、日当りの良い窓際には幾つか観葉植物を置いているので、そこには小さな生き物が生存する「鉢」がある。そろそろ春かな・・・と人間が感じる季節になると、土の中に眠っていた小さな虫がのっそりと出てくるのである。そして今日、まさにその虫が現れたのだ!「お、今年も出たね」と虫に声を掛けてから気がついた。今日が啓蟄だということに。


実はこの虫、海外からやってきたヤツなのだ。およそ4年前、まだ学生だった甥っこノゾムがインドを旅したお土産に「クミンシード」を持って来てくれた。カレーに入れる香辛料で、小さなビニール袋に詰まった代物だった。もらってから1週間ほどキッチンに置いておき、ある日ふとそのクミンを見ると、もぞもぞと虫が動いているではないか!どうやらインドからクミンにくっついて虫も一緒にやって来ちゃったみたいなのだ。一瞬うぎゃっっっ!と声をあげながら、そのビニール袋ごとゴミ袋に捨てて封印し、無事処理したつもりでいた。
・・・そして一年後・・・。
当然ながら、その虫のことなどすっかり忘れていた。ところが、一年後のちょうど「啓蟄」の頃、その虫がリビングをのっそりと、でも堂々と横断しているではありませんか。どうやらヤツらは観葉植物の鉢に安住の地を見いだしたらしく、そこで越冬して2世代目が顔を出したのだ。びっくりした反面、生命力のすごさを感じてしまい、虫を退治する気にはなれなかった。


のっそり虫くんは、お米粒の半分ほどの大きさで、人間の不都合になることは何もしない。ただリビングの南側を時々のっそりと横断するくらいである。さらにヤツらの生存日数は大体数日で、のっそり歩いているなと思ったら何日か後には死骸となる。何を食べて生きているのかまったくわからない。もしかすると何も食べることないままに一生を終えるのかもしれない。この部屋で何代にも渡って生き続けている割には繁殖力も大したことがなく、まぁ要するに虫嫌いの私でもほとんど気にならない程度の存在なのである。


それにしても、インドから海を渡ってやってきたというのに、日本の二十四節気の啓蟄を狙って外に這い出てくるとは、のっそり虫もなかなか礼儀正しく粋なヤツである。毎年、のっそり君が、仕事と恋に疲れた四十女に春の訪れを知らせてくれるのだ。どうもありがとう。


蒼穹の昴 浅田次郎【読書する贅沢】

浅田次郎の著作はほぼ読破しているが、任侠もの、お涙頂戴、歴史もの、ファンタジーと、そのジャンルの幅広さにはいつも驚かされている。軽薄短小に陥りがちなアメリカのカジノが舞台になったり、また古めかしくなりがちなフランスのルイ王朝を舞台になったりするが、そこには常に日本人の侍魂や限りなく深い人情が描かれていて、涙なしには読み終えることができないのだ。
「蒼穹の昴」は、中国の清朝が舞台となった一大歴史スペクタクルで、実は浅田次郎が大好きという割には、私がなかなか手をつけなかった小説だった。なぜかと言うと、この小説は中国を舞台にしているため、登場人物の名前がすべて漢字で小難しく、恥ずかしながら読書中に人物がごっちゃまぜになってしまうのでは?と心配だったからである。浅田次郎の小説で新しく読む物がなくなってしまった時、仕方なく文庫本を買ったのだが、読み始めると、漢字が分からないことなどすっかり忘れて、ぐいぐいとストーリーに引き込まれてしまったのを今でもはっきり覚えている。おそるべし、浅田次郎ワールド!


今年に入ってから、NHKで蒼穹の昴がドラマ化されていて、これまたびっくり。「王妃の館」と並んで、「蒼穹の昴」は絶対にドラマ化は無理だと勝手に思い込んでいたからである。どちらの小説をドラマにしても、セットを組むだけでも壮大すぎて、お金がかかりすぎると思ったからだ。ところが、中国のどこかの地方都市にあの紫禁城をドラマ撮影用に作っちゃったというのだから、中国ってやっぱりやることがハンパじゃないですよね。
というわけで毎週土曜は口パクが気になる田中裕子の西太后と共に、小説の「蒼穹の昴」を、ドラマ「蒼穹の昴」でどのように描くのかを検証しつつ、楽しんでいる。小難しくて忘れそうになる登場人物は、毎回クレジットが入るので忘れずにすむ。こういうのは映像の良いところですね。小説だといちいち前のページを手繰って、誰だったっけ?と確認しなくちゃいけないんですもの。(頭の悪さが露呈しちゃうけど) そうそう、NHK受信料をマジメに払っていて良かった、と思える瞬間でもある。


職人技!【徒然なるお仕事】

先々週のこと。とあるシンポジウムに参加するため、ディレクターのS藤さんと印刷会社のSさんと共に蒲郡へと向かった。名古屋から蒲郡は車で約1時間。渋滞にはまってしまうといけないからということで少し早めに出発したため、途中のサービスエリアで一服する余裕ができた。上郷SAのTULLY'Sにて、三者三様にコーヒータイム。私はこっそり豆乳ラテだ〜い。


オーダーしながらカウンターで見つけたのがコレ。TULLY'Sが発行しているタブロイド版の情報誌である。何か目新しい印刷物が目に入るとついつい手に取って見てしまうのは職業病の一種だろうか。その企画や内容が面白かったり、デザインや写真がきれいだったりすると、仕事の資料になるので、いただいて持ち帰るのがクリエイターの常套である。


この情報誌のデザイン処理が面白くて、私がじっと見つめていると、S藤さんもカウンターから2部頂戴してきて、同じくデザイン検証しはじめた。「これって紙の地色?それとも平アミ?」と私。「この白窓が紙の地色だから、この色は平アミだね。凝ってるなぁ」とS藤さん。さらに紙は特殊紙かどうか。写真はどこまで手が入れられているかなど話していると、横から印刷会社のSさんが「これは特殊紙じゃなくて普通のニューエージだね。輪転かけてるから表面がぱりぱりになって特殊紙に見えるんだ」さらにSさんは情報誌の端をびりびりと破り始めた。紙の裏表と折を検証しているのだと言う。他の人から見れば、ただのヘンな人々に違いないが、私個人的には、こういう会話が大好きだ。それぞれの専門職が知識と経験を総動員して、あーだこーだと考察するのって、地味だけどなんとも言えない楽しみがある。いかにも職人って感じがするからだ。はっきり言ってただの自己満足に過ぎないけれどね。



そんなこんなでショートドライブの後、無事に蒲郡に到着し、S藤さんが連れて行ってくれたのは美味しいラーメン屋さん!お魚のダシで、ほとんど化学調味料が使われていない真っ黒くろすけなおつゆと昔ながらの麺。それに手作り感あふれるギョウザとシュウマイ。カウンターの中はおじさんとおばさんがずらりと並び、麺、スープ、シュウマイとそれぞれ担当に分かれて、均一のリズムを刻みながら無言で体を動かしていた。何十年も変わらない動作でずっと同じ味をキープしているんだろうな、この人たちは。おかげさまで、これまた職人技による美味しいランチを堪能した。S藤さん、Sさん、ごちそうさまでした!


さて、いよいよ目的のシンポジウムが始まった。テーマは「ECOH tourism in三河湾プロジェクト」。三河湾は美しい海と山に恵まれた観光地で、このロケーションを背景に健康的な時間の過ごし方を提唱するという活動がスタートしたのである。その基調講演をされたのが、中嶋聞多先生。法政大学大学院の教授であり、地域活性学会(こういう学会があるんですね!)の副会長を務めている方である。中嶋先生の講演が始まってものの数分で、私は中嶋先生のお話のとりこになってしまった。とにかく面白いのである。地域を活性化させるために必要な要素や、地域のブランディング、そうした活動を継続させることの難しさと重要性を、わかりやすくお話してくださった。マミムメモ魔の私は、逐一必死でメモしまくったおかげで、講演が終わった頃には右腕がかっちんかちんに固くなってしまったほどである。そしてさらに驚くことに、その日のスケジュールを見ると、中嶋先生の基調講演は50分と書かれていて、時計を見たらぴったり50分で講演が終了していた。こんな神業、見たことないっす。これもある意味、職人技ですよね。「多くを聞く」と書いて「聞多(もんた)」と名付けた先生のご両親のセンスの良さには脱帽だけど、お名前の通りに多くの人の話を聞き、人に多くを伝えることのできる中嶋先生には感服いたしました。


というわけで、この日は、とても有意義で面白くて楽しくて、多くの「職人技」に触れることのできた一日だった。名古屋からわずか1時間、風光明媚で海風が気持ちよい蒲郡では、これからヘルシーなイベントが盛りだくさんとなっている。名古屋周辺からならワンデイトリップにぴったりな場所。皆さん、是非お出掛けくださいませ。