徒然なるお仕事

職人技!【徒然なるお仕事】

先々週のこと。とあるシンポジウムに参加するため、ディレクターのS藤さんと印刷会社のSさんと共に蒲郡へと向かった。名古屋から蒲郡は車で約1時間。渋滞にはまってしまうといけないからということで少し早めに出発したため、途中のサービスエリアで一服する余裕ができた。上郷SAのTULLY'Sにて、三者三様にコーヒータイム。私はこっそり豆乳ラテだ〜い。


オーダーしながらカウンターで見つけたのがコレ。TULLY'Sが発行しているタブロイド版の情報誌である。何か目新しい印刷物が目に入るとついつい手に取って見てしまうのは職業病の一種だろうか。その企画や内容が面白かったり、デザインや写真がきれいだったりすると、仕事の資料になるので、いただいて持ち帰るのがクリエイターの常套である。


この情報誌のデザイン処理が面白くて、私がじっと見つめていると、S藤さんもカウンターから2部頂戴してきて、同じくデザイン検証しはじめた。「これって紙の地色?それとも平アミ?」と私。「この白窓が紙の地色だから、この色は平アミだね。凝ってるなぁ」とS藤さん。さらに紙は特殊紙かどうか。写真はどこまで手が入れられているかなど話していると、横から印刷会社のSさんが「これは特殊紙じゃなくて普通のニューエージだね。輪転かけてるから表面がぱりぱりになって特殊紙に見えるんだ」さらにSさんは情報誌の端をびりびりと破り始めた。紙の裏表と折を検証しているのだと言う。他の人から見れば、ただのヘンな人々に違いないが、私個人的には、こういう会話が大好きだ。それぞれの専門職が知識と経験を総動員して、あーだこーだと考察するのって、地味だけどなんとも言えない楽しみがある。いかにも職人って感じがするからだ。はっきり言ってただの自己満足に過ぎないけれどね。



そんなこんなでショートドライブの後、無事に蒲郡に到着し、S藤さんが連れて行ってくれたのは美味しいラーメン屋さん!お魚のダシで、ほとんど化学調味料が使われていない真っ黒くろすけなおつゆと昔ながらの麺。それに手作り感あふれるギョウザとシュウマイ。カウンターの中はおじさんとおばさんがずらりと並び、麺、スープ、シュウマイとそれぞれ担当に分かれて、均一のリズムを刻みながら無言で体を動かしていた。何十年も変わらない動作でずっと同じ味をキープしているんだろうな、この人たちは。おかげさまで、これまた職人技による美味しいランチを堪能した。S藤さん、Sさん、ごちそうさまでした!


さて、いよいよ目的のシンポジウムが始まった。テーマは「ECOH tourism in三河湾プロジェクト」。三河湾は美しい海と山に恵まれた観光地で、このロケーションを背景に健康的な時間の過ごし方を提唱するという活動がスタートしたのである。その基調講演をされたのが、中嶋聞多先生。法政大学大学院の教授であり、地域活性学会(こういう学会があるんですね!)の副会長を務めている方である。中嶋先生の講演が始まってものの数分で、私は中嶋先生のお話のとりこになってしまった。とにかく面白いのである。地域を活性化させるために必要な要素や、地域のブランディング、そうした活動を継続させることの難しさと重要性を、わかりやすくお話してくださった。マミムメモ魔の私は、逐一必死でメモしまくったおかげで、講演が終わった頃には右腕がかっちんかちんに固くなってしまったほどである。そしてさらに驚くことに、その日のスケジュールを見ると、中嶋先生の基調講演は50分と書かれていて、時計を見たらぴったり50分で講演が終了していた。こんな神業、見たことないっす。これもある意味、職人技ですよね。「多くを聞く」と書いて「聞多(もんた)」と名付けた先生のご両親のセンスの良さには脱帽だけど、お名前の通りに多くの人の話を聞き、人に多くを伝えることのできる中嶋先生には感服いたしました。


というわけで、この日は、とても有意義で面白くて楽しくて、多くの「職人技」に触れることのできた一日だった。名古屋からわずか1時間、風光明媚で海風が気持ちよい蒲郡では、これからヘルシーなイベントが盛りだくさんとなっている。名古屋周辺からならワンデイトリップにぴったりな場所。皆さん、是非お出掛けくださいませ。