読書する贅沢

蒼穹の昴 浅田次郎【読書する贅沢】

浅田次郎の著作はほぼ読破しているが、任侠もの、お涙頂戴、歴史もの、ファンタジーと、そのジャンルの幅広さにはいつも驚かされている。軽薄短小に陥りがちなアメリカのカジノが舞台になったり、また古めかしくなりがちなフランスのルイ王朝を舞台になったりするが、そこには常に日本人の侍魂や限りなく深い人情が描かれていて、涙なしには読み終えることができないのだ。
「蒼穹の昴」は、中国の清朝が舞台となった一大歴史スペクタクルで、実は浅田次郎が大好きという割には、私がなかなか手をつけなかった小説だった。なぜかと言うと、この小説は中国を舞台にしているため、登場人物の名前がすべて漢字で小難しく、恥ずかしながら読書中に人物がごっちゃまぜになってしまうのでは?と心配だったからである。浅田次郎の小説で新しく読む物がなくなってしまった時、仕方なく文庫本を買ったのだが、読み始めると、漢字が分からないことなどすっかり忘れて、ぐいぐいとストーリーに引き込まれてしまったのを今でもはっきり覚えている。おそるべし、浅田次郎ワールド!


今年に入ってから、NHKで蒼穹の昴がドラマ化されていて、これまたびっくり。「王妃の館」と並んで、「蒼穹の昴」は絶対にドラマ化は無理だと勝手に思い込んでいたからである。どちらの小説をドラマにしても、セットを組むだけでも壮大すぎて、お金がかかりすぎると思ったからだ。ところが、中国のどこかの地方都市にあの紫禁城をドラマ撮影用に作っちゃったというのだから、中国ってやっぱりやることがハンパじゃないですよね。
というわけで毎週土曜は口パクが気になる田中裕子の西太后と共に、小説の「蒼穹の昴」を、ドラマ「蒼穹の昴」でどのように描くのかを検証しつつ、楽しんでいる。小難しくて忘れそうになる登場人物は、毎回クレジットが入るので忘れずにすむ。こういうのは映像の良いところですね。小説だといちいち前のページを手繰って、誰だったっけ?と確認しなくちゃいけないんですもの。(頭の悪さが露呈しちゃうけど) そうそう、NHK受信料をマジメに払っていて良かった、と思える瞬間でもある。