LARMES Column

山里のおもてなし【今日の地球】


8月のはじめに長野県飯山市へと取材に出掛けてきた。豪雪・仏壇・お寺で有名なこの街に地元の人形作家の美術館がオープンしたということで、その作家の先生の取材だったのだ。早朝に名古屋・栄で集合し、ロケバスにて信州へ。名古屋から約4時間、プロのドライバーさんの安心の運転に体をまかせていたら、お昼前に飯山市に到着した。何度もこのコラムに書いているけど、信州の空気ってどうしてあんなに違うんでしょうね?何かが違う。山並みだって美しい。田んぼにもそこはかとなく品があるように見えるから不思議だ。


取材相手の人形作家さんは、予想以上に気さくで予想通りに情熱的なお人柄で、インタビューそのものは非常にスムーズに進んでいった。作り手の気持ちに短時間でいかに入り込むかが作家や職人の取材の時には重要な要素となるので、最初の質問はいつも前日から考えておくのだけど、この日は作家さんからビンビン伝わってくる情の強さを感じ、思い切ってディープな質問からぶつけてみた。それが功を奏したのかどうかわからないけれど、作家さんの心の内側を少し覗けたような気がする。


山里の田舎の風景に作品のインスピレーションを受けるという先生が、取材陣の私たちにお茶請けで出してくださったのが、↑の写真の「ほおずき」である。美術館のカフェと言えば、オリジナルクッキーやらフレーバーティーなどでオシャレなセットを勧めるのが普通だけど、この飯山市というロケーションを鑑みて、あえて「山里のお百姓さんが日頃食べているおやつ」をお茶請けとして出しているのだそう。お恥ずかしながら、ほおずきなんて、食べたことがない私は、物珍しくて3個もいただいてしまった。ちょっと酸っぱいトマトみたいで、美味しかったですぞ。こういうおもてなしっていいですよね〜。気取ってなくて、その土地の空気感を感じ取れて。観光資源を目標にしている日本の地方は、こんな風に地元の普段の暮らしをおもてなしとして推奨していくべきなんじゃないのかな。地名が入っているだけのどこにでもあるようなお菓子とか、ワケわかんないお土産品とか作らずにね(苦笑)。


取材を終えて帰り道。今回は取材陣の女子チームの強い要望により、道の駅オアシスおぶせに立ち寄っていただいた。だって信州にせっかく来たなら、しかも栗で有名な小布施まで来てるのなら、栗かのことかペーストとかどら焼きとかアイスクリームとか栗ごはんとか、買っていきたいですよね〜!
(どんだけ買うんだ?って顔をしてた人もいましたが)


信州の農家産直の野菜がとっても安く販売されていたので、こっちもしっかりチェック!桃3個・オクラ2パック・赤パプリカ2個を買って800円の安さ。この時に買ったオクラが、大きくて表面の毛が薄く、シャキシャキしてとっても美味しかったのだ。焼きびたしにしてペロっといただきました。あ〜、やっぱり信州ロケ取材ってだいすき〜〜〜〜!!!!!


昔の人の知恵【暮らしの発見】


2回連続で実家の荷物整理ネタです。捨てられない症候群の母は、とにかく何でも取っておく人なのだが、自分の両親が愛情こめて用意してくれたお嫁入り道具についても大切に大切に箱に入れてしまっていた。着物やお茶碗、お皿やお椀といった物については、時々押し入れの奥の方から出してきて使っていたし、私も知っていたのだが、中には目にしたことのない物もたくさんあって、ある意味で今回の引っ越しは、我が家の古道具を娘の私が知るよいチャンスにもなった。


その中でも一番私が驚いたのは、お重箱だった。お正月におせち料理を入れているお重箱は私も見覚えがあり分かるのだけど、まったく見た事のないお重箱を母が見せてくれたのである。輪島塗で漆黒の美しい光を放つお重箱だった。外も内も真っ黒で絵柄もなく、それだけに漆塗りの技術の高さがはっきりと判る物。デザインもモダンで現代に持ってきてもまったく違和感はなさそうである。「なにこれ〜?はじめて見た〜!なんで今まで使わなかったの?」と私が聞くと「お正月に使うのはもう一つの柄の物の方が似合うし(内側が朱なのでお正月らしいと考えたようだ)この真っ黒のお重箱は使うのがもったいなくてね、なんとなくとっておいたの」と母が答えると、隣で父が一言「それ、パパも見るのはじめてだよ」。結婚相手も知らないお道具って〜果たしてお嫁入り道具って言えるのかしら???と素朴な疑問を感じつつ、父母のビミョーな空気感を感じ取って口には出さずに我慢した。すると、そんな空気を断ち切るかのようにノーテンキな母の発言が続く。


「マリちゃん、これ何か知ってる?」と←この箱を取り出して見せてくれた。なにやらおめでたそうな亀甲文様で、ふかふかした小さなお座布団のような物。お寺さんがいらっしゃった時に何かを載せるの?と素っ頓狂な発言をする私を一瞥して、母が説明してくれた。「これはね〜、重掛け(じゅうかけ)って言うの」「重掛け?なにそれ?」「お祝い事の時に、お重箱の上にホコリ除けでのせるもので、実際は飾りかな」「へぇ〜、だから亀甲文様なのね〜」


つまり、←このようにして使うのだそう。
こうして重掛けがかかっていると、中のお料理も高尚なメニューに思えてきそうだ。もちろん正絹で出来ているので、お手入れや保存方法は着物と同じく気を遣わなければいけない。


ハレの席で用いる華やかな道具と、日常のケの場面で気楽に扱える道具。昔の物ほど2つの役目ははっきりと分かれていたのである。もちろん、このお重掛けはハレの席で使う物なので、大切に箱に入れてしまわれていたのだ。二つ折りにして、折り皺がつかないように真ん中に真綿の棒を挟み、箱に入れる。真綿にくるまれるように、という表現はあるけれど、真綿を挟んで、というしまい方があったんですね〜。大切な道具としての扱いを受けたこの重掛けは、55年が過ぎた今でも一片のシミもなく、絹の美しい光沢を保ち続けている。昔の人の[物を大切にする考え方]に改めて感じいった晩夏の夜であった。


必殺仕分け人、再び参上【今日のエコ】


皆さん、お盆のお休みは何をして過ごされましたか?お墓参り?旅行?海か山?それとも家でのんびり?いずれにしても有意義な時間をお過ごしになったこととと拝察いたします。はい、かく言うワタクシも大変有意義な日々でございました。実家建替による仮住まいへの引っ越しを今月末に控え、家中の荷物の整理に実家へ戻っていたわけなんです。
年老いた両親が住む家は築55年ほど。両親が結婚してから今日まで一度も引っ越しをしたことがない家なので、そこには55年分の荷物が詰まっているのだ。しかも捨てられない症候群にある我が母の性格も手伝って、物は溜まる一方だった。娘の私はそんな状況はわかっているので、随分前から荷物の整理をしてね、と優しくお願いしていたのだけど、母にとっての整理とは、荷物を引っ張り出してきて思い出に浸り、それをまた別の箱にしまってしまうことだったらしい。このお盆期間に帰って押し入れを開けてみて[母が整理した荷物]と対面した時、正直言って顎がはずれそうになった。


そんなわけで膨大な荷物を目の前に広げ、捨てるか取っておくか、取っておくなら倉庫にしまうか仮住まいに持参するか、文字通りの取捨選択を父と母に迫り、またまた蓮舫議員のごとく必殺仕分け人となった数日間だった。捨てるか取っておくかを父母が悩んでいる時に私がかける言葉は常に同じで「3年以上使っていない物は思い切って捨ててください」。最初のうちは「マリコがキツいことを言う」とこぼしていたけど、荷物の膨大さに本人たちも疲れ始めて、最後の方は「もういい、捨てて」と泣きそうな顔して諦めてくれるようになった。そんな顔を見るとなんだか申し訳ないような気分になりながら、それでも必殺仕分け人は仕分けなければ前に進めないのだ。そう、家族の明るい未来のために。


冒頭のこの写真は、母が溜めに溜めた扇子の数々。手前の骨が少なく大きい扇子は日本舞踊で用いる舞扇。奥の方にある骨が多いタイプが普通の扇子。これらは日舞の名取りになった方の名披露や、季節のご挨拶の時などにいただいた物ばかりで「いただき物は捨てられない」という母の考えのもと、我が家で大切に保管されていた代物だ。骨が折れていたり、紙が破れていた物については、母了承のもとにお役御免とさせていただいた。それにしても扇屋さんができるほどに、よくもまぁ保管しておいたものですわ。と、ここで気がついたことがひとつ。扇子の柄には小さな流行はあっても大きな変化はないということ。何十年前にいただいた物かがハッキリしない割に、現代でも十分に使える柄ばかりなのである。洋服はもちろん、アクセサリーやバッグだとこうはいかない。5年もすれば、いつの時代の流行かがわかってしまうはずだ。そう考えると、扇子って極めてエコな物なのかもしれないなぁ。ということはつまり→何十個あろうとも、扇子は保管しておくべき、なのだろうか?もしかすると母は、そういうことが全て判っていて、究極のエコ生活をしていたのかもしれない。昔の人が言うことには耳を傾けてみるもんだ、まったく。


冷蔵庫の危機!【おうちごはん】


今月は、やたらめったら、我が家に人が集うことが多い月間となっている。この10 年ほどいわゆるお盆期間休みが少なくなり、7・8・9月のどこかで好きな時にお休みをそれぞれにとるというスタイルが多くなったからか、「今日はお休みなの〜」と言いよってくる人(要するにごはん食べに遊びに行くよと宣言する人)が妙に多いのだ。わたしゃ大体いつもヒマなので、「どうぞどうぞ遊びに来て〜その代わりお酒持ってきて〜」とお返事し、おかげで食の実験やらみんなでわいわい食べる楽しみを味わっている。


野菜の蒸し鍋はネギオイルとお塩で

野菜の蒸し鍋はネギオイルとお塩で

子連れ友人とのお昼ご飯の宴の時!

子連れ友人とのお昼ご飯の宴の時!

春慶信玄弁当箱を八寸に

春慶信玄弁当箱を八寸に


真夏のメニューは、事前に冷蔵庫でしっかり冷やしておくものが多いので、前日とか午前中のうちに作って、あとは冷蔵庫に仕事を託す。飲み物もビールやらシャンパンやら、冷蔵庫でキンキンになるまで冷やしたいものばかり。でも我が家の冷蔵庫は大型ではないので、大人数の食材を冷やすとそれだけで満杯になってしまうのである。庫内の温度を安定させるために、なるべく扉の開閉を少なくし、いっぺんに出していっぺんに入れるようにしているのだけど、どうしても冷蔵庫の働きはにぶってしまうのだ。先日のとある酷暑の日、朝から狭いキッチンで茹でたり煮たり3つ口コンロを全部使って調理し、その傍ら180度でオーブンを使っていたら、キッチンの気温はおおよそ40度以上になっていた。周りの温度が高くなれば当然冷蔵庫の温度も安定しないわけで、ちょっと心配になって冷凍庫のアイスクリームをさわってみると、ぐにゃりとつまめるではありませんか!!!


その晩はお客様をする日だったので、冷蔵庫が壊れたなんてシャレにならない。仕込み作業は一時中断し、あわててリビングの冷房を最低温度でオン、扇風機で冷風をキッチンに流した。冷蔵庫周りの小物を避難させて、冷風の通り道をつくる。その状態でひたすら待って約1時間。さっきのアイスクリームをもう一度さわってみると、なんとかいつもの固さに戻っていた。ホッ。


マンションの狭い独立キッチンというのも、やっぱり考えものですね〜。熱気が思い切りこもるから、冷蔵庫は死ぬ思いで仕事しなければならない。この日の熱気を教訓に、夏のキッチンは、加熱タイム(キッチンの温度上昇を防ぐためオーブンとガスは別の時間帯で使う)と冷蔵タイム(冷やすものはあら熱をしっかりとっていっぺんに入れ、不必要な扉の開閉をしない)をマイルールとして定めた。


そんな冷蔵庫危機の中、我が家にいらっしゃったのは、左から俳優の中村繁之さん、アラフォーなら絶対に知っているジャニーズのアイドルだった人!ハウスバーモントカレーのCMでおなじみでしたよね。今も昔のままカッコイイですぞ!今月は御園座に公演に来ているのだ。今月24日まで公演しているので、お時間のある方は是非お出かけください。神風特攻隊のお話でお涙必須だそうです。私も来週末に観てきま〜す。そのお隣はキュートな芹沢先生ご夫妻。芹沢先生宅はとっても素敵なデザインハウスなので、今度は「隣の晩ご飯」で突撃する予定デス。


こっちは、我が仲間たち。私を入れてなななんと総勢10名。我が家のご飯会史上、最大の収容人数だった。お皿もグラスも足りなかったので、仲良し仲間ということもあり、ひたすら使い継いでいただきましたわ。


↑の日のテーブルセッティング。
10人のお皿が狭いテーブルには並ばないので、
こんなラフな仕上がりになっちゃいました。
この時は、ご近所の食堂、をコンセプトに!


記憶をたどって計算してみたら、今の冷蔵庫が我が家にやって来たのは1990年だったので、なんと20年たっていることが判明。ご老体に鞭をうっての仕事ぶりには頭が下がる。エコ仕様やインテリジェント機能の冷蔵庫が流行る中、こんな暑いキッチンで昔ならではの2ドア姿で頑張ってくれている冷蔵庫。長持ちさせたいので、大切に大切に使っていこうと思う。


立秋のお茶会〜不白流【今日の地球】


先週の土曜日8月7日、名古屋・白川庭園でおこなわれた表千家不白流の浴衣会に参加させていただいた。表千家不白流とは、表千家七世家元の如心斉の高弟・川上不白を流祖とするもので、かくも珍しい「鏡点前」というお点前が特徴的な流派だ。不白流の茶道をお稽古されているスタイリストの原結美さんからお誘いを受けたのである。午前の点心席からの参加だったので、汗をかきかきユカタを着て、憎らしいほどにからっと晴れた青空のもと、日傘を差しながら下駄を鳴らして会場の白川庭園に到着。デザイン博の時に建築された白川庭園のお茶室・清羽亭は、撮影でたまにお邪魔するが、お茶会は本当に久しぶりだった。出来たばっかりの時はピカピカして居心地が悪かったけど、建築後20年あまりがたち、日本庭園も建築物も時代がついて落ち着き、とても良い雰囲気になっていた。


点心のお料理

点心のお料理

薄茶席のお菓子は花桔梗さん

薄茶席のお菓子は花桔梗さん

流水と金魚のかわいいお干菓子!

流水と金魚のかわいいお干菓子!

薄茶席の床の間、 なんと軸は高浜虚子の筆ですぞ!

薄茶席の床の間、 なんと軸は高浜虚子の筆ですぞ!

こちらは濃茶席で、軸は与謝野晶子

こちらは濃茶席で、軸は与謝野晶子

濃茶席のお道具拝見

濃茶席のお道具拝見

朝顔ならぬ桔梗につるべとられた?つくばいかな

朝顔ならぬ桔梗につるべとられた?つくばいかな

そしてなによりビックリしたのは、この薄茶席の「鏡点前」である。二人が合い向き合いになり、お互いを鏡のように見立てて同時にお茶を点てるというお点前。左側の人(本勝手)は普通に右で茶筅や茶杓を持ってお茶を点てるが、問題は右側の人(逆勝手)で、利き手とは反対の鏡に映るような動作をしなければならない。二人の息がぴったり合っていないと、お茶席のリズムが崩れてしまうという難易度の高い方法である。こんなお点前ははじめて見た!


こうしたお点前がなぜ出来上がったのかを綾小路先生にうかがってみたところ、これはお点前をする人の動作だけでなく精神性を高みへと上げるためのものなのだとか。目の前の人のことを思いやり、自分のことはさておいて、相手に最も神経をつかい、気づかいしあってこそはじめて鏡点前が美しく出来上がる。そうした修行を重ねることで、周囲の人に気配りのできる人間性を育て上げる、という壮大な教えだった。お客としてうかがった私はひたすらに感激しつつ、まるで目の前の茶席がステージのように感じられ、ひとつの完成された動線美を見る思いであった。それにしても、こんな難しいお点前ができるようになるのに、どれほどの時間が必要なんだろうか。考えていただけで頭がくらくらしてきた。


薄茶席が終わり、濃茶席に移る前にお庭を散策していたら、どこからともなく風が通り抜け、茶席の風鈴がつつましやかに鳴った。風鈴の音色のおかげか、それとも茶室というミニマリズムな空間にいたからか、暑さよりも涼しさを一瞬感じ取った。不思議に暑くないわね〜とつぶやくと、お隣にいたマダムが「あら今日は立秋ですわよ。今日からは涼しくなりますよ」と教えてくれた。な〜るほど。どれほど酷暑と言われていても、天候は日本の暦を裏切ってはいないわけだ。この立秋のタイミングでお茶会というのも、過ぎゆく夏を名残惜しむという日本の美意識にのっとっている感じがして、なかなか粋なセンスである。


この日のユカタのいでたち、足元編。ギャルリももぐさで購入した下駄に、友人の造形作家・井戸えりちゃんの包帯バッグ。お茶室に出入りするので、ユカタと言えども、長襦袢と足袋は身につけて、中身は結構厚着しているユカタ姿。


この日が立秋だと教えてくださった素敵なマダムの帯もと。
なななんと、芭蕉布を見つけて、別布を継ぎ足して帯に仕上げたのだそう。
帯留めは、空豆〜♬
立居振舞もお話の内容も、とっても素敵なご婦人でした。


夜は、ギョーカイの先輩である美紀さんのお誕生日会へ。
美紀さんの親友である直美さんと一緒に
カンパイに次ぐカンパイに次ぐカンパ〜イ!

立秋の夜の帰り道、気分が良くてとぼとぼ歩いていたら、涼しい風があっという間に私を追い越して吹き去っていった。暦のとおりに秋が近づいていることが、ちょっぴり嬉しかった。


『KORYU』の表紙展【徒然なるお仕事】


今日から『KORYU』の表紙展が、名古屋・栄のラシックで始まった。KORYUとは、中部電力の広報誌で、環境・エネルギー・地域の3つのキーワードのもと、地球環境をよりよいものにするため、地域に活力をもたらすために活動している人々を応援する冊子である。実は私も、このKORYUに拙文を書かせていただいている。そのKORYUの表紙を約2年に渡って担当していたのが、カメラマンの渡辺裕之さんとイラストレーターの遠山敦さんで、渡辺さんが撮影した中部電力のある風景写真に、遠山さんがイラストをコラボさせていた。毎回かなりの産みの苦しみを重ねて表紙になっていることもあり、採用された案だけではなく、日の目を見なかった作品にもスポットをあてて、表紙の展覧会を中部電力サマが主催してくださったのである。


いっつもブツブツ言ってる割には、ビシッとカッコいい写真を取る渡辺さん。いっつもくだらない冗談ばっかり言ってる割には、思わず微笑んじゃうような優しいイラストを描く遠山さん。この異色コンビの作品は、それぞれ単体で見ても十分にひとつの作品になっていて、圧倒感のあるものなのだが、これが二人のコラボとなると新しい魅力が発見されるのだ。冊子のタイトルであるKORYUは「交流」を意味していて、お二人のコラボぶりは、まさに文字通りのコミュニケーション作品だったというわけ。そして表紙だけでなく、冊子全体のKORYU制作チームは、時に厳しく(仕事だから当たり前だけど)、しかしそのほとんどがほんわか仲良し組といった雰囲気で、共に新しい発見をし、取材した人の魅力に夢中になり、次なるコミュニケーションを探している。KORYU制作チームのほんわかぶりも、この展覧会になんとなく表現されているような気がしてならないのは私だけかしら?


今回の展覧で、私のお気に入りはこちら。
渡辺さんが撮影した屋内のデモ機。
遠山さんにはそれがパイプオルガンに見えたらしく、
いろんな音色が聴こえてきたのだそう。
かわいいでしょ〜? これは日の目を見なかった作品です。


栄まで行かれた折にはぜひラシックにもお立ち寄りいただき、表紙展をご覧くださいまし。会場では、KORYUの最新号が無料配布されております。
『KORYU』表紙展
渡辺裕之×中部電力×遠山敦
〜8月22日(日)11:00〜21:00
LACHIC(ラシック:名古屋市中区栄3-6-1)1F ラシックパサージュ
入場料:無料
主催:中部電力株式会社


沼本三郎〜墨で描くパリの光と影【えとせとら】


日本画家・沼本三郎氏の個展が、名古屋・栄のノリタケギャラリーで開催されている。3日から始まっていて、今日やっとお邪魔することができた。沼本先生は、中国の古い墨を用いて、パリの風景を、日本の古い和紙に描く日本画家である。日本と中国の素材を使って題材はパリ、という組み合わせは、日本画のジャンルを超えた新しい分野なのでは?と思っている。
今から12年ほど前、パリのノートルダム寺院を描いた沼本先生の作品をはじめて見た時、これは雨に濡れたパリの風景だ、と思った。からっと晴れた青空のパリもいいけど、雨が降った後、石の建物が水を含んだ湿り気のあるパリの街角が私は好きだ。沼本先生が描く墨絵のパリは、そんな雨後の風景に思えたのである。おそらくそれは、長い年月を経て醸成された中国墨独特の奥深い色合いと、和紙の細かなにじみがそう感じさせるのだと思う。そんな沼本先生の作品にすっかり惚れ込んだ私は、2000年に沼本作品とフランスを題材にした私のエッセイとで企画展を催したことがある。一夜限りのフランス料理店もオープンさせて集いを楽しんだ。


そんな思い出話はおいておき、沼本先生は毎年個展を開催されていて、毎年必ず新しいチャレンジをされている。今年はどんな新作にお目にかかれるのかな?と楽しみにお邪魔したので、ここで会場の様子をご紹介させていただく。


ノリタケギャラリーのゆったりした空間

ノリタケギャラリーのゆったりした空間

日展の入選作品も展示してある

日展の入選作品も展示してある

こちらは小さいサイズのとってもお値打ちなコーナーで必見ですな。

こちらは小さいサイズのとってもお値打ちなコーナーで必見ですな。

これは我が家の玄関に飾ってある沼本作品と同じ題材で、  勝利の女神

これは我が家の玄関に飾ってある沼本作品と同じ題材で、  勝利の女神

今回の新作!パリ祭の夜、花火に囲まれたエッフェル塔

今回の新作!パリ祭の夜、花火に囲まれたエッフェル塔

シャルトル大聖堂とお月様

シャルトル大聖堂とお月様

沼本三郎先生

沼本三郎先生

これは今年の作品の中で私の一番のお気に入り。ルーブル美術館のピラミッドを描いたものだ。実際に目で見る風景とは違って(両翼の建物を接近させて描いているので)、沼本先生によるデフォルメが素晴らしいデザインとなっている。真ん中のピラミッドと空の空気感がとても良くて、左には鳩が飛んでいる。そのあたりのお話を沼本先生にうかがったところ、「ピラミッドという現代建築、ルーブル宮の歴史ある建築、そこに一羽の鳩が飛んでいるのはまさに今の瞬間、その3つの時をひとつの絵におさめたかった」のだそうだ。画家の先生と直接お話しながら鑑賞できるのも、こういう個展の良いところ。もちろん購入することもできるので!皆様是非お出かけくださいませ。鑑賞だけもよし、購入すればもっと良し。日曜日まででございます。
沼本三郎 墨で描くパリの光と影
〜8月8日曜日まで ノリタケギャラリー(中区新栄2-1ノリタケビル1階)
052-973-3480
10:00〜18:00(最終日は17:00まで)


ユカタが魔法になる一夜【着物だいすき】


着物を着てお食事してただただ楽しみましょう、というかなりラクチンな名目の、クリエイターによる着物好きグループ[お着楽会]。毎年夏に恒例の浴衣会を開催している。スタイリストの原結美さんとヘアメイクの村上由見子さんから、今年は幹事に加わりなされ、とお達しがあったので、ホントに微力ながらお手伝いさせていただいた。お知らせを出すとほぼ即日完売状態で、浴衣人気のすごさに、改めて驚いたワタクシ。


着物は着たことないけど浴衣なら着てみたいわ、という人に向けて、少しでも着物の良さを味わっていただきたいという原結美さんの強い思いがこの浴衣会を実現させたのである。会場は池下の老舗フレンチ「レトワル・ド・ジェアン」。佐伯シェフのお料理、グランメゾンの雰囲気、品の良いサービスが定評のお店だが、この夜の貸切会場はほぼ全員浴衣という一種独特の世界が作り上げられた。


一応、浴衣着用の方が会費6500円、お洋服での参加は7000円、と会費に差をつけてみたところ、なななんと70人中数人だけがお洋服、67名くらいは浴衣でのご参加となった。着付けサービスを盛り込んだのも大きな理由だとは思うけど、これって、会費に差額があるから、じゃないですよね。ご参加くださった皆さんにちょっとだけインタビューしてみると、「着物そのものがはじめてでした。でも和服経験できて良かった、新鮮でした」「洋服より着慣れていないのに、洋服よりはしゃいだのはなぜかしら?」「やっぱり着付けが習いたい!って実感した」などなど。やっぱりみんな着物を着てお出かけしたいのですね!


デザイナーの知子さんと美樹ちゃん、お二人の着付けは私が担当!

デザイナーの知子さんと美樹ちゃん、お二人の着付けは私が担当!

ヴァイオリニストの悦子さん、設計士の朋ちゃん、インテリアコーディネイターの服部さんと祖父江さん

ヴァイオリニストの悦子さん、設計士の朋ちゃん、インテリアコーディネイターの服部さんと祖父江さん

代理店ウーマンの美紀おねえさまとANAホテルのミキティー!

代理店ウーマンの美紀おねえさまとANAホテルのミキティー!

高島屋の敬子さんに昌子ちゃん、 相変わらずカッコいいのは    ナイトハンターななちゃん

高島屋の敬子さんに昌子ちゃん、 相変わらずカッコいいのは    ナイトハンターななちゃん

デザイナー玲子さん&ディレクターあやのさんたち美女クリエイター

デザイナー玲子さん&ディレクターあやのさんたち美女クリエイター

おなじみ甥っこノゾムと、    同僚のタマキちゃんとアリちゃん

おなじみ甥っこノゾムと、    同僚のタマキちゃんとアリちゃん


これらはほんのほんの一部の写真。皆様のすゞやかな浴衣姿をもっとカメラにおさめておけば良かったと後悔しきり。それぞれの方が浴衣を楽しんでくださった様子だったので、幹事をやらせていただいて良かった!と思ったほどだった。この日は、カメラマンによる撮影サービスもあったので、私の手元にデータがそのうち来るはず。ご参加くださった皆様のキメポーズは、改めてデータをお送りしますので、しばしお待ちくださいませね。


馬頭琴奏者のデリヘイさんの演奏、 彼にも浴衣を着ていただいた!

馬頭琴奏者のデリヘイさんの演奏、 彼にも浴衣を着ていただいた!

レトワルの竹本支配人とソムリエ氏  とってもお世話になりました!

レトワルの竹本支配人とソムリエ氏  とってもお世話になりました!


女性の美しい浴衣姿ももちろんいいのだけど、私にとっては殿方の浴衣も大事な鑑賞ポイント!殿方の浴衣は、おなかの出っ張りの下に帯をきりっと結ぶのがかっこいい。若いとおなかの出っ張りがないし、年を重ねていてもウエストで帯をしめちゃったりしているので、なかなか素敵な着物姿の殿方には出逢えないのである。ところがこの夜は・・・いたんですよ、素敵な着こなしの殿方が何人も!ほとんどの殿方が浴衣でご参加くださったので、こっそりと殿方浴衣鑑賞を楽しませていただいた!


皆さん、着慣れていらっしゃるのか、はたまた着付けの先生による着付けだったからか、実に見事に着こなしていらっしゃった。一年中着物で過ごしているというデザイナーの樋渡さん(写真を撮り忘れてしまいました)、われらがTさん、スタジオモアの吉田さん。お三方、とっても素敵でしたわよ。唯一写真があるのは吉田さん←。どうです、この帯の締めっぷり。さりげないカメラもさすがにカッコよく見えますよね〜。女性の浴衣姿に男性が惚れるように、実は女性も男性の浴衣姿にはキュンとくるものなのだ。このパーティーのチラシのために作成したキャッチコピーは「ユカタが魔法になる一夜」だったのだけど、実はこれ、作者的には男性の浴衣のことを言ってるんですね〜。浴衣が楽しめるのも今月いっぱいです。是非浴衣でお出かけくださいまし。
あ、そういえば、殿方の浴衣に夢中になりすぎて、せっかく頑張った幹事3人の集合写真をすっかり撮り忘れておりました。あ〜あ。


食べる飲む笑う!の健康法【一杯の幸せ】

どうです?このフォルム!なんとも言えない曲線美ですよね。これは、叔父叔母や両親と共に訪れたふぐ料理屋さんでのワンショットで、ひれ酒の次酒用のとっくりである。このお店は、冬のふぐはもちろん絶品なのだが、夏の料理もびっくりするほど逸品だ。ふぐをさばき調理する技術が夏だけ他の魚に応用されるので、その高度な技術と繊細な魚さばきがしっかり味に現れていて、私は夏の料理がかなり好きなのだ。でも、ふぐはないとは言え、やはりこのお店に来たら、ひれ酒を飲みたくなる。5年ほど寝かせたひれを使うので、独特のコクがあって美味しい〜のだ。もし私が男性だったら(オッサンだったら)、次酒の度にこのとっくりを撫でまわして喜ぶだろうな〜と考えていたら・・・。


ななめ前に座っていた叔父がぽつり「いぃ形だなぁ」。すると隣の叔母が「でもさ、おなかがちょっと出てるよね、コレ」すかさず叔父は「いやいや、このふくらみがいいんだよね。ぺっちゃんこの痩せぎすでは魅力がない。おなかのふくらみは色っぽい」昔は名古屋の錦三(大げさに言えば東京で言う銀座みたいな所)で結構ブイブイ言わせていた叔父も今や70を過ぎ、好々爺に近くなってきている。そんな叔父がマジメな顔で女体のふくらみについて語っているのを聞いていたら、なんだか可笑しくなってきた。「そっか〜痩せぎすでは魅力ないんだ」と私が追い打ちをかけると、さらに酔った叔父は「そうそう、やっぱりふくらみとへこみのバランスだね」と解説を続ける。




するともう一人の叔父が真っ赤な顔をして、この笑顔。
やっぱり女体とっくりがお気に入りのご様子。


解説する叔父も、にやにや笑う叔父も、要するにただの酔っぱらいで、私も含めてまぁよく飲みました。女体とっくりをネタに、延々と飲み、しゃべり続けるのもさすがに我が身内と妙な納得をしてしまった。お店の人をビックリさせるほどたくさん食べ、飲み、笑った一夜。朝起きたら、声がかれていた。ただの笑い過ぎである。ただなんとなくだけど、何かが吹っ切れたような気がした。
両親も叔父叔母もなにかしらの病気を抱えていて、決して胸をはって健康などとは言えないのだけど、一緒に飲んで食べて笑っていると、みんながとても良い笑顔になる。もしかしたら病気なんてどこかに吹っ飛んでしまうのではないか?というほどよく笑った。こんな時間がたくさんあれば、人は健康になっていくのではないか?と思った。笑う健康法が最近取沙汰されて、吉本とお医者様がタッグを組んでいるとかいないとか、そんな噂を聞いたけれど、そんな夢のような話が現実になるかもしれない。よく食べて飲んで笑えば健康でいられる!そう信じることにした私は、この日を皮切りに、食事会&飲み会週間へと突入したのであった。


円頓寺商店街の七夕まつり2010!【えとせとら】


今年もやってきました、名古屋市西区にある円頓寺商店街の七夕祭り!!!このコラムに何度も登場している友人・高木麻里が理事長を務める商店街で、下町の人情味あふれる素敵な街である。私にとっては居住地ではないものの、ほとんど地元感覚でご案内できるもう一つのホームタウンといったところ。この商店街が一年中で最も盛り上がる七夕祭りは、アーケード内の両脇にずらりと屋台が並び、あちこちで大道芸やらイベントが催されるので、とにかくあきることなく一日を過ごせてしまう。ちょっと大げさに言えば、昭和生まれの人ならおそらく誰しもがデジャヴュを感じ、ある種の懐かしさやワクワク感を持つことができるはずだ。


なんてったって、
七夕祭りの目玉は、
各商店が出品するハリボテのコンテスト。
アーケードの天井に
こんな感じで吊り下がっている。


ハリボテを見ると、その年の流行とか時代なんかが如実に反映されている。今年は絶対にゲゲゲの女房ネタがどこかにあるだろうな〜と思っていたら、案の定あった。しかも2体も。そして、名古屋開府四百年キャラや龍馬、そして定番のドラえもん。ここまでは想定内だった。


でもこれは想定外だったな〜。
われらが友人・高木麻里の実家である「野田仙」のハリボテ。
ワガママ猫の宝輪(ほうりん)が眠り猫になってました。
しかも、デカっっっ!!!


今日から始まった七夕祭りは今週日曜まで。平日も週末もイベント目白押しなので、皆さんぜひお出かけください。お昼ご飯がてら、あるいは夕暮れからビールをひっかけながらの散策も楽しゅうございます。今日は、高校の同級生であり、コピーライターであり、広告デザイン会社の社長であり、絵本作家でもある岡田クンをこの商店街にアテンドした。地元の人々と挨拶しながら説明して廻る私に岡田クンがぽつり。「なんか地元の人みたいだね〜。すごい愛着心もってるんだね〜。すごいな〜」と、やたら感心してくれた。友人の住む街として訪れるようになり、彼女の地道な活動を応援するようになってもう何年になるんだろう。この角を曲がると屋根神様があるよ、お茶するならココがいいかな、この奥に秘密のバーがあってね、と説明しているうちに、心地よくなっていた。気づかないうちに、円頓寺商店街が昭和生まれの心の落ち着き処となっているみたいだ。