今日の地球

立秋のお茶会〜不白流【今日の地球】


先週の土曜日8月7日、名古屋・白川庭園でおこなわれた表千家不白流の浴衣会に参加させていただいた。表千家不白流とは、表千家七世家元の如心斉の高弟・川上不白を流祖とするもので、かくも珍しい「鏡点前」というお点前が特徴的な流派だ。不白流の茶道をお稽古されているスタイリストの原結美さんからお誘いを受けたのである。午前の点心席からの参加だったので、汗をかきかきユカタを着て、憎らしいほどにからっと晴れた青空のもと、日傘を差しながら下駄を鳴らして会場の白川庭園に到着。デザイン博の時に建築された白川庭園のお茶室・清羽亭は、撮影でたまにお邪魔するが、お茶会は本当に久しぶりだった。出来たばっかりの時はピカピカして居心地が悪かったけど、建築後20年あまりがたち、日本庭園も建築物も時代がついて落ち着き、とても良い雰囲気になっていた。


点心のお料理

点心のお料理

薄茶席のお菓子は花桔梗さん

薄茶席のお菓子は花桔梗さん

流水と金魚のかわいいお干菓子!

流水と金魚のかわいいお干菓子!

薄茶席の床の間、 なんと軸は高浜虚子の筆ですぞ!

薄茶席の床の間、 なんと軸は高浜虚子の筆ですぞ!

こちらは濃茶席で、軸は与謝野晶子

こちらは濃茶席で、軸は与謝野晶子

濃茶席のお道具拝見

濃茶席のお道具拝見

朝顔ならぬ桔梗につるべとられた?つくばいかな

朝顔ならぬ桔梗につるべとられた?つくばいかな

そしてなによりビックリしたのは、この薄茶席の「鏡点前」である。二人が合い向き合いになり、お互いを鏡のように見立てて同時にお茶を点てるというお点前。左側の人(本勝手)は普通に右で茶筅や茶杓を持ってお茶を点てるが、問題は右側の人(逆勝手)で、利き手とは反対の鏡に映るような動作をしなければならない。二人の息がぴったり合っていないと、お茶席のリズムが崩れてしまうという難易度の高い方法である。こんなお点前ははじめて見た!


こうしたお点前がなぜ出来上がったのかを綾小路先生にうかがってみたところ、これはお点前をする人の動作だけでなく精神性を高みへと上げるためのものなのだとか。目の前の人のことを思いやり、自分のことはさておいて、相手に最も神経をつかい、気づかいしあってこそはじめて鏡点前が美しく出来上がる。そうした修行を重ねることで、周囲の人に気配りのできる人間性を育て上げる、という壮大な教えだった。お客としてうかがった私はひたすらに感激しつつ、まるで目の前の茶席がステージのように感じられ、ひとつの完成された動線美を見る思いであった。それにしても、こんな難しいお点前ができるようになるのに、どれほどの時間が必要なんだろうか。考えていただけで頭がくらくらしてきた。


薄茶席が終わり、濃茶席に移る前にお庭を散策していたら、どこからともなく風が通り抜け、茶席の風鈴がつつましやかに鳴った。風鈴の音色のおかげか、それとも茶室というミニマリズムな空間にいたからか、暑さよりも涼しさを一瞬感じ取った。不思議に暑くないわね〜とつぶやくと、お隣にいたマダムが「あら今日は立秋ですわよ。今日からは涼しくなりますよ」と教えてくれた。な〜るほど。どれほど酷暑と言われていても、天候は日本の暦を裏切ってはいないわけだ。この立秋のタイミングでお茶会というのも、過ぎゆく夏を名残惜しむという日本の美意識にのっとっている感じがして、なかなか粋なセンスである。


この日のユカタのいでたち、足元編。ギャルリももぐさで購入した下駄に、友人の造形作家・井戸えりちゃんの包帯バッグ。お茶室に出入りするので、ユカタと言えども、長襦袢と足袋は身につけて、中身は結構厚着しているユカタ姿。


この日が立秋だと教えてくださった素敵なマダムの帯もと。
なななんと、芭蕉布を見つけて、別布を継ぎ足して帯に仕上げたのだそう。
帯留めは、空豆〜♬
立居振舞もお話の内容も、とっても素敵なご婦人でした。


夜は、ギョーカイの先輩である美紀さんのお誕生日会へ。
美紀さんの親友である直美さんと一緒に
カンパイに次ぐカンパイに次ぐカンパ〜イ!

立秋の夜の帰り道、気分が良くてとぼとぼ歩いていたら、涼しい風があっという間に私を追い越して吹き去っていった。暦のとおりに秋が近づいていることが、ちょっぴり嬉しかった。