LARMES Column

北方領土にヒゲが生えた【今日の地球】


              ドアップ写真で大変失礼いたします。
          ↑そうなんです、ワタクシ、ついにヒゲが生えました↑
目線がオヤジになってるだの、思想はオッサンと一緒だの、友人からは完全に中年オヤジとしてカウントされているワタクシ。それでも一応女子部に所属しているつもりでいたのですが、とうとう、というか、ついに、ヒゲが生えちゃったのであります。唇の右下ににょろっと生えている黒い線、見えますよね。数日前に鏡を見て気づいたこのヒゲ。唇と顔面皮膚のちょうど境目に生えてきている。写真では皮膚上に生えているように見えるけど、実際は唇のピンク色と皮膚色を境にするライン上にあるのだ。テニスで言えばオンラインってやつですな。地図で言えば北方領土みたいなもので、所有権を主張し合えば結論が出しにくくなる場所である。そして、これまた不思議なことに、ヒゲを発見してから2日後の今日、改めてヒゲを観察しようと鏡をのぞくと(ヒゲは伸ばしっぱなしになっていた!)、あら不思議。自然にヒゲは抜け落ちてなくなっていたのだ。引っ張った覚えもなければ、抜いた記憶もないのだけど、あのヒゲはいつ抜けちゃったんだろうか。


実は、ここのところface bookのお友達リストの件で、もやもやとした思いを持っていた。Aさんとお友達になってるとBさんが良く思わないとか。Bさんとお友達だったものだから、できればお友達登録したくないCさんからリクエストが来ちゃって困ったとか。あと、お仕事先の人だったりすると、いろいろと人間関係があるじゃないですか。長年親しくしている業界の先輩は「快く思っていない人なら、承認しない方がアナタのためだよ」と普通なら言いにくいことをちゃんと教えてくださった。ふむふむ、その通り。face bookの恩恵で素敵な方と出逢うこともできたから、やっぱり面白いツールなんだけど。面倒だなぁと思うことも多くて。こんなことならホントにプライベートなおつきあいの人だけをお友達承認すれば良かったな〜とちょっぴり後悔。子供の時は「あの子と仲良しにするなら仲間に入れてやんない」な〜んて、他人を自分の所有物みたいに扱っていたことがあったけど、オトナになるとそんな子供じみたことは言ってられない。でも他人に対する所有意識というのは、オトナになっても心の奥底では持ち続けているものなのだ。たとえそれが男女の関係ではなく、純粋に友情で結ばれている友達同士だったとしても。


みんなが無意識に持っている友人に対する所有意識も、私のオヤジヒゲのように自然にするりと抜け落ちちゃえば、面倒な人間関係や内輪もめなんかに発展しないのになぁ。ま、あまり深く考えず、八方美人的にお友達承認しちゃった私が悪いんですけどね、はい。


松島の情景に思いを馳せて【伝統芸能の継承者たち】


映画パーソナリティで映画のお姉さんこと松岡ひとみさんにお誘いを受けてお出掛けしてきたのが↑常磐津研究所。ひとみさんの従姉妹さんで名古屋むすめ歌舞伎を創立なさった市川櫻香さん主宰の「櫻 別会」にお邪魔してきた。常磐津「松島」の解説と櫻香さんの舞踊が拝見できるという内容。時間ぎりぎりに会場に着くと、櫻香さんファンの方々や舞踊のお稽古されているお嬢さんがすでに席を埋めていた。私も末席(ホントに末席だった!)に座らせていただき、櫻香さんお弟子さんによる常磐津・松島の解説に聴き入った。
明治に作曲された「松島」は、日本三景の一つと言われる三陸海岸一帯の景勝地を唄ったもの。歌舞伎演目の作者でも知られる河竹黙阿弥が作詞したという話を聞いてびっくりした。黙阿弥って常磐津も作ってたんですねぇ。松島の四季や美しさとその地に瑞々しく生きる人の姿を描いていると言われているそうで、文字を追って読んでみると、韻を踏みながら限られた文字数の中に色気と雅がちりばめられている。言葉が細かく計算されて作られているので、常磐津の節になってもする〜っと聴き入ることができるのだ。優れた作り手というのは時代に関係なく、人を言葉で酔わすことができるというわけですね。


常磐津の解説と振りの説明が終わると、櫻香さんの舞踊になった。以前も舞台を拝見して感じたのだけど、櫻香さんというのは静謐な情熱をたたえた方で、その真摯なお気持ちが現れた舞踊に、観ている方も胸がきゅんとなってしまう。この時もそうだった。むすめ歌舞伎を創立なさった時のお話や歌舞伎にかける思いなど、いつか取材するチャンスがあるといいんだけど。


そして櫻香さんの言葉で印象に残っているのが、東北の地で継がれた数々の唄についてである。会場入り口の八重桜が満開のこの日に、今回の被災地の一つである松島を会のテーマに選ばれたのだから、被災地の方々へ思いを寄せていらっしゃるとは思っていたのだけど。櫻香さんいわく、東北だけではなく、日本各地の風景を歌った唄が今消えつつあるとおっしゃるのだ。歌舞伎で用いられる唄は演目と一緒で、舞台に映える派手な内容のものが多い。でも常磐津・松島のように、日本の美しい風景を歌ったものは地味でもあるため、なかなか唄い継いでいく人が少なくなってしまったのだそう。「映像やCDで聴いたことはあっても、実際に演奏や舞踊を目の前で聴いたり観たりすることがないから、どうしても唄われなくなっていくんですね。それはとてもさびしく残念なことです」と本当にさびしそうにお話されていた。


受け継いでいこう、次の世代に残そうとわたしたちが思うのは、工芸品や着物など目に見える有形のものを考える。唄とか舞踊のように、無形のものにはなかなか意識がいかないのが現実だ。今回の震災で多くの有形物が流され、焼けて、壊れてしまったことを嘆き悲しむ声は多いが、常磐津・松島のように、被災地のかつての美しさを表現した素晴らしい唄が消えゆこうとしていることに注目する人は残念ながら少ないのだと思う。そこに着目して、さびれゆく無形の美に視点を注ぎ、踊り継いでいこうとする櫻香さんの意思には本当に心打たれた。さびしげな櫻香さんの心を映すような、薄曇りの肌寒い春の一日だった。


着物とナフキンに悩むワタクシ【着物だいすき】


またまたネタが古くてすみません。今回は春のお着楽会のお話です。桜咲く四月の初旬、着物好きなクリエイター女子が集う[お着楽会]が開催された。毎年、春・夏・秋に着物を着てお食事し、あ〜だこ〜だとおしゃべりを楽しむ会である。今回の会場となったのは、名古屋市東区にあるイタリアンレストランの「アンティキ」。築百年以上の民家をリノベして作られたレストランで、名前の通り古い時計や照明、家具などがアンティークで、ぎしぎしときしむ床の感じもこれまた風情という感じの素敵なレストラン。もともとイタリアンなのだが、最近フレンチ出身のシェフが就任したので、お料理はフレンチベースなのにパスタもいただけて、世の中の「フレンチ好きでも麺も好き人種」をうならせるメニュー構成になっている。この日も春らしくてワインが飲みたくなっちゃう感じの美味しいお料理でした。


今回の参加人数は全部で10名。スタイリスト、ヘアメイク、フードコーディネイター、インテリアコーディネイター、そして着物のお着付けの先生まで。コピーライターの私以外は「外観を美しく整えるお仕事」に就いている方々ばかり。なので、着物のお着付けやコーディネイトや小物のセレクトがとっても粋だったり可愛かったりする。遠目で見たら「どこのお嬢さん?」と見間違うほど可愛かったMなみさん、まだまだ遠目だったらだませますよ、笑。


さて、着物を着るたびに悩みが増えるワタクシですが、今回のお題はナフキンの位置である。洋服でお食事する時は、ナフキンを二つ折りにして膝におく。でも着物の場合、皆さんはどうしていらっしゃるだろう。洋服と違って帯部分にボリュームがあるので、膝に置くよりも帯に掛けた方が、食べ物や飲み物をこぼしてしまった時のリスクが少なくなるのだ。↑上の写真でも帯に掛けて召し上がっている方が多いのは、帯を汚れから守るため、と考えられる。実際、私の周りで着物をよくお召しになる方は、帯にナフキンを掛けている方が多いような気がする。が、しかし。せっかく着物でオシャレして来ているのだから、着物だけではなく帯も見て欲しい〜って思いませんか?たとえ帯が汚れちゃってもいいから、帯と着物のコンビネーションを見せる、という潔さが着こなしの粋につながるんじゃないかと思うのだけど・・・。
実は、打ち明け話。パリの三ツ星レストラン「ギィサヴォワ」にお着物でお出掛けした時に、帯にソースをたら〜りとこぼしてしまったことがある。お肉のガルニテュールで、ほうれん草のグラチネが出てきた。少しゆるめのグラチネソースを思いっきり帯にこぼしてしまったのだ。日本に帰ってからあわててクリーニングに出し、無事きれいに直してもらいましたけどね。そんな失敗をしでかしたくせに、やっぱり帯にナフキンを掛けない方が、姿として美しい、と思うのですよ。ね、皆さん、どう思われますか?


個人のブランディングは名刺から【徒然なるお仕事】


「逸品もっとよくなるプロジェクト」を信頼できるクリエイター仲間たちとスタートさせて、もうすぐ一年になろうとしている。このプロジェクトは地域の逸品や埋もれてしまった良品に視点を注いで、本来の魅力を引き出したり、売れる仕組みを考えることが目的だ。その対象はモノだけでなく、個人のブランディングにも向いている。企業の経営者や個人店の店主などに、ご自分の魅力の発信方法(ひいては企業の魅力や商品の売れ行きに通じる)をわたしたちプロジェクトのメンバーが、それぞれの得意分野を生かしてブランディング構築してさしあげるのだ。
・・・とエラそ〜〜に言ってる割には、自分のブランディングが出来ているかと聞かれると、実はまったく手をつけていないことにはたと気づいたのが数ヶ月前。プロジェクトの主宰者である岡田氏からも「近藤サン、自分の売り方が下手すぎるよ」と苦言を呈されていた。そういえば、名刺のデザインなんてもう10年くらい変えてなかったなぁ。「ブランディングの第一歩として、メッセージ性の強い名刺を作りましょう」などと提案している割には、まったくの灯台下暗しだったのだ。


そこで、今回、名刺のリニューアルをおよそ10年ぶりに行ったのである。広告業界にいるのに10年もデザインを変えていなかったなんて!我ながらなんてズボラなんでしょう・・・反省。で、名刺リニューアルをお願いしたのは、「逸品もっとよくなるプロジェクト」のメンバーである池上貴文氏。私と同年で、いわゆる渋みの効いたイイ男。コピーライター泣かせの名文をよく書くご仁である。彼にかかると、上品の中にも強いメッセージ性のあるデザインに仕上げてくれるので、今回の名刺リニューアルにはピッタリの人選だったと思っている。↑の写真も池上氏が撮影してくれた。


↑写真をよ〜く見ていただくとお解りだと思うけど、今回から名刺の裏面に肩書きや営業項目を一気に増やすことにした。今までは「コピーライター」としか書いてこなかったから、肩書きばかりをこんなに並べると正直言ってこっぱずかしいのだけど。「コピーライター」と書かれているだけではどんな分野を得意としているのかが伝わらず、話も広がりにくいと判断して、思い切って肩書きを増やすことにしたのだ。今までに実際に手掛けてきた実績を新しい肩書きとしてアピールしている。広告プランニング・ブランディング構築・商品プロデュース・講師業・コンサルティング・伝統工芸コーディネイト・ショッププロデュース・食にまつわるコーディネイト。
そのかわり、表面には名前と一番多く使う肩書き(つまりコピーライター)とwebアドレスのみの表記にした。だって名刺のとっかかりは名前を覚えていただくことですもの。住所や電話番号が必要な時だけ、裏面を見てもらえばそれでいい。さらにそこにいろいろ肩書きが書いてあれば、どんな人物なのか?と興味を持ってもらえるかもしれない。つまり表面は出来る限り情報を削り、裏面は可能な限りの情報を詰め込んだというわけデス。
池上氏が3種類も面白いデザインを考えてくれたので、お渡しする相手によって、合いそうなデザインの物を渡そうと思う。いちおう、この3枚が揃った方にはビンゴとして、愛の抱擁が待っています。どうぞご期待くださいまし。


青木良太さんに逢えた!【伝統工芸の職人たち】


青木良太さん。東海地区で活躍する陶芸人として、ここのところ話題を集めている新進気鋭の若手作家である。NHKや情熱大陸など、マスコミをにぎわしていることでも有名で、全国から個展のオファーがあるだけでなく、その活躍ぶりは海外でも知られるようになっている。私がはじめて青木さんの器に出逢ったのはお茶会だった。黄金色と乳白色がコンビになったモダンなお茶碗がお点前で使われたのである。ひと目見た瞬間に、とても不思議な感覚にとらわれた。お茶碗が畳の上に浮いているように見えたのだ。手にとってみると、まずその軽さにびっくりし、しっとりと手に馴染む感覚が、見た目のクールさとは裏腹でこれまたびっくり。これは面白い作家さんだなぁとお茶碗拝見をしげしげとしていると、お師匠が興味津々なお顔つきで「マリコさん、どうですか、そのお茶碗」とお声かけしてくださった。その時に青木良太さんのお名前を拝聴したのだ。偶然が重なったのか、それとも青木さんの器が多くの方から愛でられているのか、その後、行く先々で青木さんの器との出逢いが続いた。和菓子屋さんの茶寮で、雑誌の記事で、滋賀にあるお料理屋さんで。あれ?この器は・・・と思って手にとると、青木さんの作品だったのだ。それ以来、いつか青木さんにお会いしたいなぁ、取材して作陶にかける思いを聞いてみたいなぁ、ろくろをまわしているところを撮影したいなぁという思いが募っていた。


そして!そう念じていると通じるのである。とあるクライアントの広報誌の取材で、青木良太さんを取材せよとのご指示をいただいた時は、思わず電話口で「やった〜」と叫んでしまったほど。ありがたや〜。某クライアントさま、どうもありがとうございました。そんなわけで、意気揚々の心持ちで工房にお邪魔してきた。この時に撮影した写真をなぜだか間違えて紛失してしまったので(青木さんの写真をたくさん撮ったのに〜ショック!)、その代わりに↑の写真は私が取材時に購入した器である。


この透け具合、見てみてください。
ガラス? いえいえ陶器です。
繊細なラインですぐに割れちゃいそうだけど、実は強度あり。
見た目はクールだけど、手にとってみると温かみあり。


この作品の魅力と技術の秘密・・・お知りになりたい方は、某社の広報誌をご覧ください。青木良太さんの作品の魅力を、私なりに解釈し、お人柄の不思議さと共に紹介させていただいた。ご希望の方は下記アドレスにメール送信してください。
Sassi-ko-ryu.Koe@chuden.co.jp
1.郵便番号・住所、2.氏名(ふりがなを添えて)、3.なぜ欲しいと思ったか、を記入の上、お申込くださいませ。


丹波の牡丹鍋【おうちごはん】


手持ちのデジカメで撮影してパソコンに保存していた写真を大量に紛失してしまい、ちょっと困ったことになってしまった。名称未設定フォルダに入れていて、いつかタイトルつけなくちゃ、と思っていた矢先に、どうやら間違えてゴミ箱に入れちゃったみたいなのだ。あ〜あ、40を過ぎてのケアレスミス、なんとかして欲しい。というわけで、牡丹鍋は2月のメニューだったんだけど、かろうじて昨年のしし肉の写真が残っていたので、これをネタにさせていただく。
さて、二ヶ月も前の話なのだけど、一年のうちで私の仕事が一番忙しくなる2月というのは、悔しいことに美味しいものが多い季節でもある。毎年、寒のお魚を食べなくちゃ、あんこう鍋に行かなくちゃ、あのお店の鴨は絶対にはずせない、ジビエが終わっちゃう・・・と食べるのにも忙しい季節となるので、仕事と食べることのスケジュール調整が本当に大変な月となる。この牡丹鍋もそうなのだ。8年ほど前に丹波篠山で食べてから衝撃を受けて、何年か通って作り方を研究し、以来毎年2月にしし肉を取り寄せ、3日ほど秘伝の味噌を練って加熱しまた寝かす作業を繰り返し、熟成したシャルドネを用意して、その日を迎える。牡丹鍋にあまり良い印象を持っていない人がいたら「騙されたと思って食べてみて」と誘って、我が家で牡丹鍋パーティーをしている。ただし、3日の作業工程があるので、仕事とのスケジュールが最も気がかりにはなるのだけど、その苦労をしてでも食べたい、いや、食べさせたいと思える味になるのだ。


そんなわけで、毎年2月に開催する、とは言っても、スケジュールの都合上、せいぜい2回くらいが限度。昨年いらっしゃった方は早くから予約(!?)が入るし、新たにお誘いしちゃった方もいるので、私は戦々恐々と味噌づくりに励まねばならない。写真がないので残念なのだけど、今年お誘いしたメンバーを改めて考えてみたら、なんとそのほとんどがプロの料理人ばっかりだった。第一回目は、和食料理人の関尾さん、半田のヌーベルシノワの新美シェフ、飲食店のプロである恵子さん、そしてルマルタンペシュールの那須ソムリエ、唯一飲食店関係ではなかったのがとあるアパレル会社社長でグルマンの丹羽さんというメンバーだった。第二回目はご近所のスペイン料理ラ・フエンテの山内シェフ、フランス料理ヴァンセットの青木シェフとマダムと香保里ちゃん。第二回目は100%料理人ばっかり。あとで振り返ってみると、心臓強いな〜と我ながら思うのだけど、ホントにこの牡丹鍋は美味しいんだから仕方がない。


肉料理は圧倒的に日本よりもヨーロッパの方が歴史もあって料理法も豊富だと思われがちなんだけど、実は日本だって山の中に行けば昔からお肉を食べていたし、地元の人々は美味しい食べ方をよく知っている。少なくとも、私が知っているヨーロッパのいのしし肉は、もっとかたくて臭みもあるし、逆にその香りを野性味と称して好むのがヨーロッパスタイルだ。日本のジビエは逆である。お肉を寝かさずに適度に休ませる程度にしてから出荷するので、獣臭が少なくて熟成感はほどほど。特にこの牡丹鍋は、脂身が激ウマなので、熟成が進みすぎない方が美味しいのだ。このねっとりバターの風味を持つ脂身が、熟成したシャルドネによく合うんですよ。昨年も食べてる山内シェフが今年は"シェリー"を持ってきてくれた。うむ、シェリーもなかなかの組み合わせでしたよ、確かに。
まだまだ知られていない日本の山奥には、きっといろんなジビエ料理があるはずだ。地酒を呑みながら、地元の貴重なタンパク源を粗野でシンプルな調理法でいただく。それは村人たちの一番のごちそうだ。こういう料理に出逢うと、私も地方の食材や調理法を探して歩く旅をしてみたいなぁと思う一方で、そういうごちそうは、外からスポットを当てることなく地元の人が大切に食べ継いでいくべきものだという思いもよぎる。そうだな〜、来年も夜中に一人でお味噌を練りながら原稿に向かう2月を過ごすことにいたします。


飲んべえばかりのプロジェクト【徒然なるお仕事】


逸品もっとよくなるプロジェクト、これは岡田新吾さんの呼びかけで始まった地域ブランディングプロジェクトである。クリエイター5人で「逸品もっとよくなる推進委員会」を組織し、互いのスキルやキャリアを発揮して、地域に埋もれた特産品や名産品に再び脚光が当たるようにブランディングからの見直しから図り、魅力ある商品として甦らせる取り組みである。時として遠回りな道を通ることもあるわたしたち。安易に「こうすればカッコいいですよ〜」など絶対に言わない。でも丁寧に地道に、クライアントの魅力と可能性を引き出して、売れる商品づくり、伸びるブランド力を創り出してゆくのがわたしたちのやり方だ。


そしてその地道なやり方で新商品開発に結びつけた第一号の商品発表会(もちろん身内のクリエイター同士で)が先週の土曜日に、主宰者である岡田新吾さんのご自宅で開催された。↑上の写真はその時のもの。一番左が岡田新吾氏。彼が手にしているのが岐阜県各務原市にある小町酒造さんの新商品「零戦のつばさ」である。岐阜県の酒造米「飛騨ほまれ」を使った純米吟醸で、すっきりとした飲み口が特徴の日本酒だ。なにより、この誕生秘話が素晴らしい。岡田新吾さんは、広告デザイン会社の社長、コピーライター、写真ギャラリーオーナーと数々の肩書きに加えて、児童小説作家でもある。彼の処女作である「約束のつばさ」には地元各務原市で初飛行したという零戦が登場しており、それが平和や人の交流の象徴として描かれているところに小町酒造の方が注目したのだ。まさに一見遠回りなように見えるが、実は、クライアントのことや商品が生まれる環境をきちんと理解した上でのブランディング成功例だと思う。でも天の邪鬼な私は彼におめでとうとは言わなかった。この商品が広く知れ渡り、各務原市が零戦初飛行の街として地域性を高めることができた時に、心をこめておめでとう、と言おうと思っている。照れ屋の彼のことだから、きっと私の意図はわかってくれていると信じて。


さてもうひとつ、この日にお披露目になった商品があった。こちらは逸品もっとよくなるプロジェクトのメンバーの一人、デザイナーの池上氏。岡田氏と池上氏が手掛けた「逸品」は、愛知県犬山市に昔から伝わる駄菓子の「げんこつ」を、新たにブランディングしたもので、その名も「天下とりぼー」。戦国武将の陣中食だったと言われるげんこつ。そのルーツを改めてたどることで魅力を再発見し、ネーミングを考え、ラベルデザインを一新させたのである。この日はちょうど犬山祭りの日だったので、プロジェクトのメンバーで犬山祭りを訪れ、天下とりぼーを販売している店舗へと赴いたのだった。



また「逸品もっとよくなるプロジェクト」は、「もっと!地酒の会」も主宰している。ニッポンの良いものを掘り起こすにはニッポンのお酒を愛でようではないかという取り組みで、このコラムでも何度か紹介させていただいた。次回の「もっと!地酒の会」で日本酒を提供していただく酒蔵が、この日たまたま酒蔵開放されていたので、実は犬山に行く前に、愛知県江南市の酒蔵で一杯ひっかけてきちゃったのだ。(すみません、完全に時系列が逆になってます)


実はこの日の前夜は、我が家で「中華の会」を催し、例のごとく深夜までたくさん呑んでいた。翌朝は二日酔い状態で電車に乗って酒蔵開放に向い、思い切り迎え酒をしてから、陽光まぶしい犬山祭りに出掛け、酔いをひきずったまま岡田氏のご自宅へとたどり着いた。前夜からの二日酔いをひきずっていたのは私と池上氏。けれど岡田氏がいつも自慢している美人妻の手料理があんまり美味しいものだから、ついついお酒がすすんでしまって仕方がない。気づいたらいつも私と池上氏のグラスが空になっていて、ホスト役の岡田氏はさぞ大変だったろうと思う。でも、せっかくお誘いいただいたんだから、遠慮しないで徹底的に楽しむのがいいと思い込んでいるので、つがれた分はしっかりいただいてきましたけどね。岡田さん、美人な奥さま、本当にごちそうさまでした。懲りずにまた呼んでよね。


追記●岡田氏のご自宅はアート作品にあふれている。
さすが写真ギャラリーオーナーのハイセンスなお宅。
インテリアも素敵だし、なんとリビングにはサッカーゲームがあるではないですか!酔った勢いでサッカーゲームをやらせてもらい惨敗したので、次回は是非リベンジを!


追記その2●この日を境に、日本酒に恵まれる日々が続いているのはなぜだろう。やっぱり桜の季節は日本酒、ということになるのだろうか。今週お邪魔してきたのは、秋田屋さん主催の恒例日本酒の会。今年は東日本大震災慈善事業として開催され、名古屋の財界及びお姐さんがたがずらりと勢揃いしていた。河村たかし市長もいらっしゃり、お得意の名古屋弁で被災地への支援についてお話されていた。私も東北の美酒を積極的にいただいて、復興支援をしていきたいと真剣に思っているので、皆様よろしくお願いいたします。


ウェスティンの天守の間

ウェスティンの天守の間

この日は素敵なTさんご夫妻とご一緒。

この日は素敵なTさんご夫妻とご一緒。

いっぱい呑んだ顔してますね

いっぱい呑んだ顔してますね


音楽と文章のハーモニー【えとせとら】


マリアージュというフランス語をご存知だろうか。直訳すると結婚という意味になるが、最高の組み合わせを表現する言葉でもある。ワインと料理の調和を舌上で感じる時にも用いられるので、日本のグルマンたちがこぞって声高にマリアージュを叫びはじめたのは、ワインブーム以降だった。かくいう私もワインを飲み始めたころ、ワインと料理を組み合わせするだけでは物足りないから、そこに音楽を組み合わせて楽しみましょうよ、などと小生意気なことを提案して、ソムリエ諸氏を随分困らせたものだった。


そんな小生意気だった私も多少はオトナになった。今は、美味しいワインとお料理の組み合わせを黙って味わえるようになり、独りごちて眠った夢の先で音楽が流れてくるのが最上の喜びとなってきた。ワインと食事と音楽を同時期に組み合わせて楽しむという実験は難しいテーマがたくさんあるだけでなく、同席する方との好みの差異もあり、かえって楽しみが散漫になることがある。それならば、美味の記憶がまだ新しいうちに一人で音楽を聴く方が満足度も完成度も高いような気がする。


こんな風に理屈っぽいことを考えるのが好きな私に、先日とある方が自作のCDをプレゼントしてくださった。クリエイティブディレクターのU氏である。U氏にはその日までお会いしたことがなく、facebookで知り合いになり(同じ業界なのでお互いに共通の知り合いが多く、実際にお会いした時はクリエイターE氏が紹介してくださったのだが)、メッセージのやりとりをするようになった。ネット上での交流には少々トラウマもあり、気をつけるようにはしていたのだけど、なぜだかU氏のメッセージは心に響くものが多かった。だから是非お話してみたいなと思ったのだと思う。


これは都会のど真ん中にある飲食店のお庭。U氏がセッティングしてくださったのは竹林と池を見てお食事のできる素敵なお店。私のコラムを読んでくださっていたU氏は「文章を拝読していたら、この雰囲気がマリコさんには喜んでもらえるような気がして」とおっしゃった。なんて気配りなんでしょう。はい、確かに好きです、この感じ。


美味しいお食事をしてから庭を眺めてお茶を楽しんでいた時、音楽と読書の話になった。どんな音楽を聞くのか、どんな本を読むのか。音楽、本、映画の好みというのは、他人を知るのに最も良い手段だと個人的に思っているので、初対面の方との会話にはピッタリのテーマだ。そして最後にU氏が鞄から件のCDを取り出し「マリコさんのコラムを読んでいて、あなたの文章に合わせて音楽を選んでみました。夜9時以降にゆっくり聴いてみてください」とおっしゃったのである。


人が作ったワインに人が作った料理を合わせたり、音楽とワインを合わせたりしたことはあったけど、自分の文章にどなたかが音楽を合わせてくださるなんていう経験ははじめてのこと。そんな立派な文章の書き手ではないので、恥ずかしくて仕方がないのだけど、私の人間性よりも先に文章を知ってくださった方がどんな音楽を合わせてくださったのか、興味津々である。夜9時以降というリクエストをマジメに守って、その日の夜に聴いてみた。


最初はお琴の音かと思うような和のイメージで始まり、やがてクリアでセンシティブな音と、清らかな歌声が聴こえてくるではありませんか。え?私ってこんな綺麗な文章書けていないんだけどいいのかな、と思っていると、やがて深淵から響いてくるような音へと変わっていった。ちょうど井戸の上から柄杓で水を落としたように。果てしない底の淵に細いしずくをしたたらせるような静かで深い音だった。


正直に申しまして、私はこんなに奥ゆかしい文章はまったく書けていません。なのに、私のドロドロした人間性や稚拙な文章力をはるかに超えて、透明感のある音楽を選んでくださったなんて。もしかすると、これはU氏が私に設定してくださった目標値なんじゃないかな。もっと鮮明になれ、もっと純粋であれ、そしてたくさん書きなさい、と、地球の深淵から語りかけてくださったのだ。
Uさん、素敵な音楽をありがとうございました。制作に行き詰まった時じゃなくて(苦笑)、良い時を過ごすことができた一日の終わりに、一人でじっくり聴いていきたいと思います。そして、Uさんとのご縁をいただいたEさん、どうもありがとうございました。シャトーマルミエの件、またご相談させてください。


フランス料理店のwebを作りました【徒然なるお仕事】


名古屋・御器所にあるフランス料理のお店「ヴァンセット」のホームページを制作させていただいた。このお店には20年来通っており、青木さんが作る優しい味わいのお料理によって味覚の基本を育ててもらったと心の底から思っているので、ホームページを作るというのはそれに対する恩返しのようなつもりだった。オーナーシェフである青木さん、マダム&ソムリエールである秀代ママ、パティシエである娘の香保里ちゃん、家族3人でお店を作り上げている。オープンスタイルのカウンターキッチンで青木さんが料理を作るところを見ながら、あーだこーだと会話を楽しみつつ料理が出来上がるのを待つ。日本の割烹のカウンター文化を取り入れたヴァンセットスタイルは、オーナーシェフのフランス料理のお店がまだまだ少なかった20年前から今迄、ずっと変わらぬ形で続けられている。


ホームページのコンセプトは「お店の体温が伝わる」とした。カウンター越しに青木さんと会話する楽しさ、料理を待つ面白み・・・そんな温かい雰囲気とワクワク感を表現したかったからだ。また、日本料理の繊細な技術を取り入れた青木さんお得意の魚や野菜料理はクラシックでもなければヌーヴェルでもなく、最近流行のモデルヌでもない。それはまさに青木スタイルである。まだ無農薬有機野菜が珍しい時代から積極的に取り入れて、クリームやバターを控え、オリーブオイルで仕上げた優しい味わいは、フランス料理は苦手・・・という人にも受け入れられる。青木さん一家の人柄の良さが、お店にも料理にも現れているということなんでしょうね。


パリのホテルリッツにも招聘された実績を持つ青木さんのお店は、海外からのゲストも多い。海外からいらっしゃった人にもヴァンセットスタイルが伝わるといいな、ということから、今回は英訳をすべての文章に付加させた。和文と英文の両方で文章が長くなっちゃうので、デザインは大変だったんだけど、なんとかきれいに収まったんじゃないかな。今回のデザインは、ラルムのwebを制作してくれたアイデアソースの前田まさみさん。私の勝手な要望や細かいチェックをいつも難なくこなしてくれる才媛である。
青木一家が交代でブログも始める(ちゃんと書いてくださいよ!と脅迫中です)とのことなので、旬の食材情報や、新しいメニューなどがweb上でチェックできるようになる。ヴァンセットファンの皆さんも、ヴァンセットに行ったことがない皆さんも、是非訪問してくださいませね。
ヴァンセットのwebはこちら!


女子会にもいろいろありまして【えとせとら】


前回に引き続き、こちらも先月の風景デス。連続古いネタですみません。とあるウィークディのとあるヒマな午後。同じくヒマだ〜とつぶやくお姉様たちから「作りながら飲みながらおしゃべりする女子会を淑子さんのスタジオでやろうって盛り上がってるんだけど」とお誘いがあった。淑子さんとは、とっても素敵なハウススタジオ「相生山スタジオ」の田中淑子さんである。フード系のスタイリングで第一人者の淑子さんのスタジオは、名古屋を見晴らすような里山(でも名古屋市内)の中にあり、広〜いキッチンとスタジオがとっても気持ちの良いところ。皆で作りながら、おしゃべりしながら、飲んで食べようという会である。この日のテーマはベトナム料理だった。生春巻、牡蠣のアジアン風、えびせんべいサラダ、ベトナム鍋、フォー。ヘルシーで野菜たっぷりのさっぱりメニュー。ところが会話の方のテーマはさっぱりとは裏腹の、ドロドロした人生のお話ばかり。なぜかというと、女子会とは言っても、アラフォーを通り越してアラフィフの女子会だったからだ。あはは。


お日様たっぷりの素敵なハウススタジオです

お日様たっぷりの素敵なハウススタジオです

どっちの方向からも撮影できるキッチンスタジオ!こ〜んな広いキッチン、憧れちゃいますね。

どっちの方向からも撮影できるキッチンスタジオ!こ〜んな広いキッチン、憧れちゃいますね。

キッチン収納もシステマティック、いいなぁ〜

キッチン収納もシステマティック、いいなぁ〜

ハウススタジオなので、いろんな暮らしの風景が撮影できるようになってるのだ。

ハウススタジオなので、いろんな暮らしの風景が撮影できるようになってるのだ。

キャフェオレ色の壁がシックでいい感じ。これは宴会がはじまる前の風景です。

キャフェオレ色の壁がシックでいい感じ。これは宴会がはじまる前の風景です。


ま、そんなわけで、ドロドロしたメンツは↑一番上の写真↑。左からカメラマンのなぎさ、スタイリストの服部由紀さん、田中淑子さん、右奥がスタイリストの加藤多寿子さん、一番右がスタイリストの原結美さん。業界の話でひとしきり盛り上がった後は、自然にお互いの親の話になっていった。どなたも同じように親の問題を抱えていて、認知症を患っているご母堂とどう暮らしているかを語る人もいれば、年老いた親との付き合い方に悩む人などなど、この年代の女性にとって、親の存在は大切であり心配事の一つでもある。私も両親がなんとか元気で暮らしてくれているので安心しているけど、先のことを考えると不安でいっぱいになることがある。これだけ男女の間に境がなくなっていても、やっぱり親の介護ということになると、直接ふりかかってくるのは女性なんですね。


そして最後はどの年代層の女子会であっても定例テーマである「恋バナ」だった。もっちろん、アラサーやアラフォーの恋バナとは趣の違った内容だったけど、少し酔いも手伝ってか可愛い発言が相次いだ。ふむふむ、やっぱり年はとっても女性の可愛さは変わらないんですね。
親のことで悩むのも女子、さりとて恋に悩むのも女子ならでは!やっぱり女性同士って、どの年代でも楽しくて気楽でいいものです。相手がお姉様たちばかりだと、私の場合は気楽さに拍車がかかる。おかげで話ははずみにはずみ、ドロドロした女子会は午後から深夜まで続き、帰宅したのは日付が変わるギリギリの時間になっていた。さ、そんなわけで、これからもいろんな女子会にて人生を語っていこうと思うのであります。女子の皆さん、よろしくね。