今日の地球

枕上鞍上厠上【今日の地球】

枕上鞍上厠上(ちんじょうあんじょうしじょう)を、三上(さんじょう)と言うらしい。
考えるのに良い空間のことを示していて、帰田録を書いた欧陽脩という人の言葉らしいのだが、まさにこの通り!と膝を打ちたくなるのはわたしだけではないはずだ。
寝床・乗り物・トイレ、が、思索をめぐらすのに適した順番という意味で、決して机上ではない、ということを言っている。わたしの場合は、特に枕上でこれだ!というアイデアを思いつくことが多い。
若い時にはメモをしなくても思いついたことは覚えていて、一週間先の予定まで頭にしっかり入っていたほどだった。が、人生の折り返し地点を過ぎたころから記憶力が悪くなり、今では明日の予定は手帳を見ないと確認できないほどのダメっぷりである。
ところが、それと反比例するように、アイデアは枯渇しないどころか、泉のようにこんこんと湧いて出てくる。仕事以外のプライベートでも、楽しいことならいくらでも思いつく。歳を重ねるというのは、こんなに振り幅が豊かになるものなのかと我ながら驚くほどだ。先輩クリエイターたちが年をとってからの方が良いコピーが書けると言っていたのは、こういうことなのだ。
昨夜もいま抱えている案件でとても良いフレーズを枕上で思いついた。もう電気を消していたので、メモはしなかったが、こんなに明確に面白いアイデアだから忘れるわけはない。翌朝に早速企画書に仕立てよう!と思いながら眠りについた。
ところが、である。朝起きたら、その良いフレーズとやらはすっかり忘却していて、どうやっても思い出せない。本当に思いついたのか、それとも夢の中の出来事だったのか。
三上の法則を、なかなか使いこなせないでいる。