今日の地球

青森で虹を見た【今日の地球】


今まで少なくとも百回以上は飛行機に搭乗している私。今日、生まれて初めて青森に降り立った。ちょっと大げさかもしれないけど、世界中の雲上の風景をイヤというほど見てきた。けれど、今朝の飛行機から見た雲は、今までのどんな所のものとも違っていて、窓の外から目を離すことができなかった。新潟上空を過ぎたあたりから北上するに従って、雲の景色が変わっていったのである。果てしなく広がる雲は、綿菓子のように柔らかく輪郭がなくてふわふわしていたし、青空はこれ以上でもこれ以下でもない澄んだ浅葱色をしていた。絵本に出てくるような、おとぎの国の雲で、ずっと見ていても飽きない風景だった。綿菓子の間を抜けて機体が地上に近づくと、今度は今が盛りの紅葉が一面に広がっている。青森の風景は、雲の上も下も、なんて美しいんだろう。東北への畏敬の念が私の目のフィルターとなって、風景を美しく見せているのだろうかとさえ思った。そして空港から町中に向かう途中、今度は綺麗なアーチ型の虹が田園にかかっているではないですか!その美しさは今でも目にしっかりと焼きついている。(うまく撮れなかったけど、写真はその虹を車中から撮影したもの)

東北の手仕事への思いは、今までに何度もコラムで書いてきた。そして今日、弘前の人と直に触れ合って、改めて東北人の人柄の良さに心を打たれることになった。純粋な笑顔と瞳がとても印象的で、ところが、ふっとした時に見せる影の表情は、どこか諦観の念を感じさせるものだった。その諦観は、やがてやって来る厳しい冬への準備なのだろうか。自然が厳しい地域の人独特の表情だった。少し恥ずかしそうに津軽弁で語ってくれた、あの瞳が忘れられない。
午後から夕暮れまで屋内で取材し、すぐに電車に乗り込んで次の目的地に向かってしまったため、弘前城も洋館も街並も、何も見る事はできなかったけど、あの雲上の風景と綺麗な虹のこと、そして澄んだ瞳の人々のことは、多分ずっと忘れることはないと思う。いつかきっと、東北をゆっくり旅したいと思った。旅に出ている最中なのに旅情に誘われるなんて、おかしな話だけど。明日は山形へ。さて、今度はどんな出逢いがあるだろうか。