今日の地球

紺碧なヴィトンの夜〜その2【今日の地球】


前回コラムの続き。ルイヴィトンの晩餐会会場はブルーに染められていて、テーブルの上は↑こんな感じだった。ブルーのバラは造花だったと思うけど(絶対に不可能と言われていたのに確か6年ほど前にサントリーが遺伝子組み換えで開発したブルーのバラは、もっと色が薄かったはずなので)、壁のブルーに照明が当たっていたので、会場全体が海の中にでもいるような青い空間となっていた。ブルーの照明は、料理の色は分かりにくいし、青色がかぶると一般的に料理は美味しそうに見えないので、残念ながら食事空間としては不適格な色だけど、そんな定説を忘れてしまうほど、そのブルーは私にとって心地の良いものだった。


なぜなら、単純に私の一番好きな色がブルーだから。私の前に座っていたヴィトンPRの方に「今夜はなぜブルーでまとめられたのですか?」と私が聞いている横から、お隣に座ったナイト役である挟土氏が口をはさんだ。「だってブルーは始まりの色だから。今日はルイヴィトンのリニューアルパーティーで、新しいスタートの日だからじゃない?」・・・???・・・皆さん、ご存知ですか?ブルーが始まりの色だということを。少なくとも私は知らなかった。私の本棚にある色彩心理の本にもそんなことは書いてなかったし。ということは、挟土さん独特の面白いロジックがきっとブルーに隠されているに違いない。


挟土さんにそのロジックを解き明かしてもらおうと思っていたら、会場ではジョージクルーニー似のフランス人マジシャン、ステファン・レイションさんによる楽しいマジックショーが始まっていた。続いてジェイソン・ベックさんの美しくもメロウなピアノの調べが・・・。ワインの酔いもまわり、すっかり気持ちよくなった私は、ブルーの秘密について謎解きしてもらうのをころっと忘れてしまったのだった。


そして二次会会場はレストランのお隣の「蘇山荘」にスライド。こちらではディジェスティフとしてロゼシャンパンがふるまわれた。シメシャン好きの私には嬉しいセレクトである。床の間にはヴィトンの旅行鞄のアンティーク物が飾られていて、ろうそくのなまめかしい光を受け、何百年も前の旅物語が聞こえてきそうな雰囲気だった。こういうのを見ると、やっぱりヴィトンはモノグラムがいいですね〜。メンズの新ラインで素敵なモノグラムバッグがあったので、使っちゃおうかな〜。メンズ物のデザインはシンプルな物が多いので、小さいバッグなら女性が持っても似合うのですよ。


そうそう、それで聞きそびれたブルーの謎は、帰りのタクシーの中でやっと明らかになった。以下、挟土氏と私の会話。「ところでブルーはなんで始まりの色なの?」「だってすべての自然はブルーから始まってるじゃん。海だろ、空だろ、オレは大地に青い土も見つけただろ?」(挟土さんは飛騨のとある場所で混じりけのない紺碧色の土を見つけ、それを熟成させて壁に用いている)「ふむふむ」「だからブルーは始まりの色なの」「実は私が一番好きな色ってブルーなんだよね」「ブルーが好きだということは最も自然に近い人間ってこと。ブルーが限りなく薄くなったら白になるし、限りなく濃くなったら黒になる。中間色のグレイにもブルーは混じってる」「あ、わかるわかる。グレイの中にはブルーがある、確かに!」「だろ?これ、色の秀平説ね」そう言って笑った左官詩人の挟土秀平さんは、タクシーが名古屋駅に着くと、手を振りながら夜の人混みへと消えていった。まるで濃い紺碧色の夜空に吸い込まれるようにして。紺碧の空よ、挟土さんを連れて行ってしまわないでね。最近の挟土さんは、どこか別の世界に行ってしまうのか?と思わせるほど、尖ったナイフのように鋭くなっている。紺碧の深い色合いが、挟土さんを包み込んでしまう気がして、夜空に妙な畏怖を感じた。


翌朝、バッグの中からヴィトンでいただいた記念品を出してみて再びビックリ。紺碧色のカードケースだったのだ。お店でのレセプションパーティーに出席した私の友人たちは赤や緑のカードケースを記念品にいただいた人が多かったのだけど、私の手元には大好きなブルーがやって来てたというわけ。色の秀平説からすると、これは始まりの色。きっと私の新しい未来が始まっているのだわ。


さて、色の秀平説を唱えた挟土秀平さんは、この秋も数多くのメディアで注目を集める。9/15〜9/21まで池袋西武にて個展。9/26にはNHK BSで高山の挟土さんの王国の様子が放映される。さらにキリンの焼酎「白水」のイメージキャラクターとして、初夏に引き続きポスターや車内吊りなどに登場するそうだ。ご興味のある方は是非ご覧くださいまし。