ブラヴォー家紋!【暮らしの発見】
先日、家紋が好きだという20代の若者に会った。お食事を共にしていた時、なんの話から家紋の話題になったのかは覚えていないが、「僕、家紋好きなんです」と言うではないか。かくいう私も家紋は好きで、着物の仕事をしていれば自然に家紋の勉強をすることにもなり、いろいろなことを調べたり学んだりした。知れば知るほど奥が深いもので、日本人はもっと家紋文化を誇りに思ってもいいのではないかな?と思っていたので、冒頭の若者発言はビックリしたのである。わたしたち世代でも、自分の家の紋がどんなものか、その名前や由来が何かを知る人は少ないからだ。ブラヴォー家紋好き!20代の若者が家紋好きなんて、まだまだ日本も捨てたもんじゃありませんね。
家紋の歴史は、900年ほど前にさかのぼる。平安の後期あたりに、お公家さんが牛車の紋として定めたことから、その紋を身のまわりの品などに描くようになり、それが貴族の間に広まって、気に入った紋を調度品や衣裳に用いるようになっていった。
世界で紋章をもつのは、ヨーロッパやアメリカのほんの一部の上流階級と日本だけといわれているが、日本ではすべての家に紋があることがきわめて特徴的である。なんと4590種もあるといわれている日本の紋は、デザイン性がとても高い。また、季節の植物や風景など、情緒を表現した紋というのは他の国では例を見ないのである。
とまぁ、こんな風に家紋の知識について書いていると際限がなくなっちゃうので、このへんでやめておくけれど、そうそう、自分で好き勝手に家紋を作っちゃってもいいということ、ご存知でした?月アイテムが好きな私は、以前から月をモチーフにした家紋を制作して、着物に染め抜いてしまおうと画策している。どなたか良いアイデアがあったら教えてくださいませ。
冒頭の写真は、実家建替えプロジェクトの際に、仮住まいの家に母の桐たんすを置いた時のもの。昔は、このようにタンスにかける「ゆたん」という代物をお嫁入り道具で必ず持ってきたのだそうだ。タンスの塵除けに用いられたものらしく、母は「お嫁に来た時に使って以来だわ〜」と懐かしそうに実家の家紋を見つめていたっけ。お嫁さんは実家の紋を着物や道具に描いて他家へ嫁ぐ。結婚相手の家の紋を染めて持ってきた方が合理的なのに実家の紋で嫁ぐなんて不思議な習慣だなぁと思っていたのだけど、母の懐かしそうな表情を見て、その謎がなんとなく解けた気がした。他家に嫁いだ人が実家を思い出して懐かしい感情に浸る時、或いは旦那さんに違和感を持って実家への郷愁を感じる時、家紋を眺めて想いにふけるため、ではないだろうか。我が母の場合は、残念ながら後者、だと思いますけどね。ふふ。