暮らしの発見

お手紙を書きましょう!【暮らしの発見】


古いものだと狼煙(のろし)や手旗信号、トーキングドラムといった通信手段は、その後、緊急や用件を伝えるだけではなく、季節のご挨拶やお礼の気持ちを伝える手紙へと進化した。その手紙の運搬方法は、飛脚→伝書鳩→郵便→メールと変貌を遂げた。今や、仕事の大半の用事はメールで済ませてしまうし、逆に電話で言った言わないという問題を回避するためにもメールは必需である。お礼を伝える文章も、やはりメールのやりとりが最も多い。でも、でも、やっぱり手書きのお手紙をいただくというのは、心が和むものだと思いませんか?キーボードを叩いて書かれた文章よりも、肉筆の文章の方が、本当にその方が話しかけてくれている気持ちになれるし、切手を貼って投函するという行為を挟んでいる分、お礼の気持ちも濃くなるような気がする。


私は字がうまくないくせに手紙を書く事は大好きで、まだポケベルとファックスの時代から(古っ!)、なにかしらお世話になった方にはお手紙でお礼の気持ちを伝えることにしてきた。ただこの10年くらいは、メールの方がすぐ届くとか、お手紙だと会社の他の方に見られちゃうとか、いろいろな理由でほとんどの礼状はメールにシフトしてしまった。そんなメーラーの私に、久しぶりに手紙欲をもたらしてくれたのが、最近届いた2つのお手紙だった。


ひとつめは、こちら。ご近所のスペイン料理ラフエンテ&スペインバルのラバノから、季節のご挨拶を兼ねたこのお手紙。私が昨シーズン絶賛したモルシージャ(フランスでいうブーダンノワールのこと)が、今年もうまくできたのでお越しください、というお便りである。匍匐前進でも帰れるくらいの距離なのに、わざわざ切手を貼って投函してくださったなんて。しかもモルシージャが美味しく出来てるなんて、行かない手はないですよね。それで早速行ってきた時の写真が冒頭のもの。山内シェフが言う通り、今年は去年より上品な仕上がりになっていて、スペインバルというよりもレストランで出てくるような繊細な仕上がりになっていた。


もうひとつが、こちら。円頓寺商店街近くにある4代続くお寿司屋さんの「まねき寿司」さん。姪っこアユミの送別会以来お邪魔していないのだけど、こんな女将の一言コメントが書かれていたら「あ、まねきに行かなくちゃ」って思いますよね?私は思っちゃう。だから、とある方々との会合の場所に選んで行ってきました。いっぱいおつまみを食べていっぱい日本酒をいただいて、美味しいお寿司を堪能してきましたよ。


こんな風に、印刷されたお手紙やDMに一言、私のためだけのコメントが書いてあると、心がぐぐっと引き寄せられちゃうのだ。これ、年賀状でもそうですよね。たとえ、ずっと会っていない相手でも、たった一言が添えられているかどうかで、その賀状の印象が大きく違ってくるんじゃないかな。
実はワタクシ、これでも「手紙の書き方教室」なるものの講師をさせていただいた経験もあるのでございますよ。拝啓&敬具のルールや季節文の書き方といった常識編から、ハガキや一筆箋にすらすら〜っと書く手紙、お礼の気持ちを伝える書き方などなど。印象に残る手紙のポイントは「その人と自分だけが共有する思い出や情報」を手紙の要素として盛り込むことなんですね。そういう意味で、上記2つのお手紙は完全にそれをクリアーしているというわけ。たった一言、けれど印象に残る一言。多分、素敵な手紙の書き手はイコール優秀なコピーライターということなのかもしれません。皆さん、手軽でスピーディなメールもいいけど、大切な方にはお手紙をしたためてみてはいかがですか?