伝統芸能の継承者たち

奥三河東栄町〜小林の花祭り【伝統芸能の継承者たち】


最初に謝っておきます、今日のコラムは長いです。
先月中旬のこと。今年も行っちゃいました。奥三河に700年伝承されている花祭りに。ここには昨年はじめて訪れた。とある企業の広報誌の特集取材のためで、早朝から深夜まで行われるという伝統の祭りに興味はあったものの、あくまでも"仕事"だった。心のどこかに冷静さを保ちつつお祭り会場で1日半ほど過ごしてみると、いつの間にか、私の心は東栄町の花祭りに夢中になってしまっていた。その時の様子を3度に渡ってコラムに書き記しているので、もしよろしかったらご笑読くださいまし。
昨年のコラムその1昨年のコラムその2昨年のコラムその3


今年も花祭りに行きたいな〜と思ってはいたけど、なにせ車じゃないと行けない山奥にあり、その中でも私がお邪魔した小林地区は東栄町の街の中心からさらに車で20分ほどの所にある。どう考えても私一人では行く手段がなく、半ばあきらめていた時、昨年取材でご一緒したSディレクターと同じ広報誌に関わっていたイラストレーターのT画伯が「一緒に行こうか〜?」と誘ってくださったのだ。念願かなって今年も花祭りに行けるなんて!!小躍りしながら喜んでしまった。


東栄町で行われる花祭りは11月にスタートし、町内の地区ごとに新年明けまで続けられる。小林地区は、標高430m、28戸、平均年齢65,4歳という典型的な高齢化と過疎の街。その小さな街が一年に一度、驚くほどのパワーを生み出すのである。そのパワーとは、もしかしたら奥三河に降りてくる神様の力、偉大な自然の恵み、そして人々の魂。花祭りには、何か人を惹きつける磁石のような力が働いているのではないかしら。小林地区に生まれ育ち、外に出てしまった人々もこの花祭りの時には必ず帰って来て祭りに参加する。奥深い山々に抱かれるかのようにして、私のようなよそ者まで吸い寄せられる。


というわけで、今年も東栄町・小林地区の花祭り、ダイジェスト写真でご紹介します。


東栄町にはいる直前、名古屋方面からは最後のコンビニに、招き猫が!

東栄町にはいる直前、名古屋方面からは最後のコンビニに、招き猫が!

昨年デビューした舞子のゆうと君(中央)が今年も見事に舞いました!

昨年デビューした舞子のゆうと君(中央)が今年も見事に舞いました!

真剣な眼差しに、この子は何歳なのか?と思った。やっぱり神様が近くにいるみたい。

真剣な眼差しに、この子は何歳なのか?と思った。やっぱり神様が近くにいるみたい。

昨年もいた!この子!花祭りの鬼好きが高じて、自分で鬼の面をかぶり、鬼と一緒になって舞っている。

昨年もいた!この子!花祭りの鬼好きが高じて、自分で鬼の面をかぶり、鬼と一緒になって舞っている。

鬼さんの舞い。この衣装、昔の装束を見事に再現していて、妥協していないところが凄いと思います。

鬼さんの舞い。この衣装、昔の装束を見事に再現していて、妥協していないところが凄いと思います。

花祭りの天井の飾りは、すべて町民の手作り。

花祭りの天井の飾りは、すべて町民の手作り。

接待所でいただける

接待所でいただける

右が舞いを終えたゆうと君、左はその弟君。どっちもかわいいですよね。弟君もいずれ舞うことになるのかな〜。

右が舞いを終えたゆうと君、左はその弟君。どっちもかわいいですよね。弟君もいずれ舞うことになるのかな〜。

このふざけた格好してるのがT画伯でございます。

このふざけた格好してるのがT画伯でございます。


そして、私が一番楽しみにしていたのは、最後の舞である。少年から青年と思われる男性が4人ほどで1時間以上ずっと舞い続け、最後の盛り上がりで、真ん中にある釜から湯を観客に浴びせかける。その湯を浴びると、一年間無病息災で過ごせると言い伝えられており、花祭りのクライマックスでもある。人々はトランス状態となり、地元の人もそうでない人も一緒に踊って唄い、五穀豊穣を願うのである。実際、昨年もこの湯ばやしの湯を浴びた私は、一年間本当に風邪をひくことなく元気に過ごせたので、あながち言い伝えも嘘ではないような気がしている。



んも〜。↑こんな写真しか撮れてないのが悔しいのだけど、この舞いが本当に美しかった。昨年のコラムにも書いたけど、妙に背中が色っぽいのだ。普段は耳にピアスあけててもおかしくないようなイマドキの若者が、古式ゆかしい装束に身を包み、誇り高い表情で延々と踊り続ける。小さい頃から体に染み付いたリズムがあるのだろう。両手両足が描くラインは、驚くほど端正である。面白いのは、少年たちだけでなく、かつての少年たち、つまりオジサンたちが途中で参加してくることだ。最初のうちは、うまく踊れるかな〜と心配そうに見守っているのだが、磁石が舞庭へと引き寄せてしまうよう。舞が半ばあたりにさしかかると「も〜しんぼうたまらんっ!」という感じで、少年たちに混じって踊りだす。もちろん少年たちのようなしなやかな動きはないけれど、そこには花祭りによって育てられた人々の哀愁漂う美しさがあった。そして、その背中を見た時、あ、これは男性のための舞いなのだ、と思った。女性の丸みを帯びた体には、あの舞は似合わない。お祭りというのは、外で狩りをしたり農作業して家族を養ってきた男性のためのものなんだなぁ、きっと。


一升瓶と湯呑みを持って回る女性から「どうぞどうぞ」と湯呑みを渡された。遠慮なくいただくと、なんとそれはぬるカン。一升瓶ごと温めて持ち歩いてるってことですよね。すごい、この汎用性の高さはさすが日本酒。これこそ日本のお祭りだ。この女性は、舞い子のご母堂だったらしい。


お孫さんを抱いて、一緒に踊るおばあちゃん。
お孫さんはかなり眠そうだったけど、
おばあちゃんのこの体の揺れ、とっても良かった。
これ、ブルースですよ。


昨年取材でお邪魔した時にお世話になった、保存会長の小野田さん(左)。小野田さんの佇まい、相変わらずかっこよかったな〜。
そして御年81歳、花祭りの生き字引の前会長(右のベレー帽の方)。今年もお会いできて嬉しかったです〜。


この他、小林では多くの方からお声をかけていただいた。昨年は前日から入って、しつこくお話を聞いてまわっていたから覚えてくださっていたみたい。よそ者に対して、とっても優しくしてくださって、本当にありがとうございました。Kさん、Iさん、きっとまた来年もお会いしたいと思います。そして、今年も会えて嬉しかったのは、ゆうと君パパの佐藤さん。あまりゆっくりお話できなかったけど、心にじんわり優しさが染みました。そして、もう行けそうもないやとあきらめていた私を誘ってくださり、連れてってくださったSディレクター、心より感謝深謝。来年も是非、小林の花祭りにお邪魔したいと思っている。皆さんもご一緒にいかが?
↓これはご一緒したT画伯が撮影した最後の舞いの様子↓
http://www.youtube.com/user/attoyt?feature=mhum#p/u/2/NZ-Hd1rZnCU