伝統芸能の継承者たち

名古屋をどり2010【伝統芸能の継承者たち】


今年もお邪魔してまいりました、名古屋をどり。前宣伝がかなりすごかったということもあり、会場は満席状態。昨年の鯉三郎さん記念の公演とはまったく趣を変えて、今年は「おどりヴァリエテ」と題した劇が主軸になっていた。なんと作は作家の荒俣宏さん。劇作家ではないはずなので、多分はじめての舞踊劇だと思われる。西川右近さん、まさ子さん、そしてゲストに加藤晴彦さんを迎えてのまったく新しい試みだった。そうは言っても、舞踊好きな人はどうしても伝統的な西川舞踊を期待してしまうので、こうした試みは受け入れられにくいはず。そこに敢えて挑戦されたのだから、出来不出来よりもその舞台精神に敬意を表するべきだと思う。


一年前は母と一緒に名古屋をどりを拝見したが、母が若い頃から憧れていたという茂太郎さんの舞に年甲斐もなく喜んでいたっけ。今年は残念ながら引っ越し疲れと夏バテしている母はお邪魔することができなかった。そしたら、舞台は長唄[棒しばり]で茂太郎さんが出演していらっしゃるではありませんか。母に報告しなくっちゃ、と食い入るように見せていただいた。棒しばりは歌舞伎でも舞踊でもよく拝見する演目で、随所に笑いとペーソスが織り交ぜられた内容は何度見ても面白い。何度も見た演目だと、役者さんの個性や技の違いがハッキリと分かるので、楽しみも倍増するというもの。


さて、一人でお邪魔した私は幕間になるとイマイチ手持ち無沙汰になる。そこでパンフレットの出演者欄を見ながら、あ、この芸妓さん知ってる〜確か叔父に連れて行ってもらったお店の人だ〜とか。このお姐さんは確かあのクラブの人・・・などと、まさしくオジサン目線でにやにやしながら熟読。パンフレットには当然広告スペースもたくさんあり、あ〜あのステーキのお店が広告出してる〜、あれ〜あの料理屋さんはスペース大きいな〜などと、ついつい広告屋目線で計算をしちゃうあたり、私もいやらしい広告屋そのものである。オジサン+広告屋=我ながらいやらしいわ〜。


こちらは、今回の引っ越しで押し入れの奥から出てきた、
昭和38年(私が生まれる前デス)の西川流のとある会のパンフレット。
祖父が後援会長を務めており、
当時小さかった姉が舞踊で出演した時のものだ。


この文字は祖父の筆によるもの。
(筆に覚えのあった祖父はあちこちに筆跡を残しているのだ)
春菜会、である。
今も岐阜市に現存する西川流派の会で、
春菜先生が現役で指導にあたられている。


このパンフレットの何が面白いって、広告ページなのだ。昭和38年、高度成長期を迎える日本で何が売れていたか、どんな世情だったのか、広告スペースを見ることで一目に理解できる。今年のパンフレットも、数十年後にはおそらく名古屋の広告業界の面白い資料となるに違いない。



やっぱりこの時代は車ですよね〜!今では完全にクラシックカーになっている型が、まさに花形モデルだったのだ。さすがに懐かしいという感覚は私にはないけど、なんと言えばいいのか、日本がひた走っていた時代の良い香りが広告から匂ってくるような気がする。


どの広告も、レトロでかわいい!このデザイン、コピー。どれをとっても、手作り感あふれていますよね。左下は祖父の会社のもの。MACできれいにデザインされちゃった現代の広告にはない、なんとも言えない味わいがあるなぁ〜。


こちらは西川鯉三郎さん。
現在の右近さんのご尊父さまにあたられる。
西川のお家元のご挨拶文だ。


これが我が祖父の挨拶文。
あれ、おじいちゃんってこんな顔だったっけか?
私の記憶の中には、なんとなく植木等がニヒルになった感じと
勝手に擦り込まれているのだけれど。


最後にお恥ずかしながら、我が姉の写真。この時の舞台では「お染久松」を踊ったのだそう。本人にはまったく記憶が残っていないらしい。でも間違いなく当時5歳のかわいい少女だった。今は面影ないですけどね(笑)。
このパンフレットは、広告の資料として面白いだけでなく、個人的には家族史にもなるので捨てずにとっておこうと思っている。