徒然なるお仕事

プロフェッショナルの仕事【徒然なるお仕事】


もう3週間ほど前のこと。おいし〜い取材撮影のお仕事があった。とある醤油メーカーさんのお仕事で、調味料としての醤油の可能性や新しい発想の使い道などをプロのシェフと共に探り、広告物に仕上げるというものだった。食いしん坊な私にはとっても嬉しいお仕事で、事前に資料としていただいていたお醤油を自宅であれやこれやと言いながら一人で実験を繰り返していた。すっきり系のお醤油だったので、和食に限らず、なんちゃってフレンチとか、なんちゃって中華にもアレンジできる。こういう万能タイプの調味料がプロの手にかかれば、メニューは末広がりなんでしょうね〜。


そうです。このお仕事のパートナーとして登場いただいたのは、フレンチの青木シェフ。パリ・ホテルリッツに招聘されるなど国際的な活躍でも知られる青木シェフは、日本の食材や調味料にもかなり明るいので今回のオーダーにはうってつけの人選だった。


案の定、青木シェフとお話していると、食の実験は果てしなく面白く展開していく。こんなのどう?これ美味しいね!などと盛り上がりながら次々とアイデアが浮かんでくるのだ。さすがプロですね。


飲食店を経営しているからといっても、すべての料理人が技に優れているわけではないし、今回のオーダーのように応用技術が求められるわけでもない。極端なことを言えば、普段お醤油を使っている和食の料理人に、お醤油の可能性について取材をしても、その何割かの料理人は残念ながら答えることができないと思う。お醤油は身近すぎるから離れた目で見ることができないだろうし、醤油の使い道を応用して考えろなんて、和食の料理人に求められることではないからだ。そしてそれは我々コピーライターだって同じだ。文章を書くことを生業としていたって、小説が書けるかといえばそれはまた違う話だし(コピーライターから小説家になった林真理子さんや石田衣良さんみたいな方もいらっしゃるけどね)、手紙を書かせたら天下一品かといえばこれまた違う。どんな職業人にも得意な分野とか好きなやり方があるのだ。そう考えると、プロフェッショナルな仕事の線引きって難しいですね。生業にさえしていれば「自称」ではなく「プロ」と言えるわけでして。


いちお、ワタクシとしては、唄って踊れるコピーライターというキャッチコピーのもと「アイツ、仕事に好き嫌いあるからなぁ」と苦笑いされながらも、好きなものは徹底して好き、興味ない分野についてはまったくのドシロート同然というスタンスのまま、仕事を続けさせていただいている。青木シェフは私と比較するのは申し訳ないほど仕事のレベルが高い方なのですが、青木シェフのこだわりや器用なセンスをかいま見て、私も自分の仕事のやり方を改めて振り返るチャンスになったというわけ。もしかしたら時代の流れに負けてしまうのではないか?という恐怖心が時々もたげつつも、まだしばらくは好きな道で生きていきたいと思っている今日このごろなのだ。