徒然なるお仕事

長良川鵜飼【徒然なるお仕事】


いよいよ東海地区独特の蒸し暑い夏が佳境となってきましたねぇ。冷房を持たない昔の人がこの季節をどうやって乗り切っていたのかというと、涼を川辺に求めて船遊びをしたり、住まいの中に風の通り道を作ったりして、工夫して生活していた。私もそれに倣って、今年も暑い名古屋のコンクリート生活を冷房なしで暮らそうと実践している。
さて、時を遡って5月。毎年5月11日から始まる長良川鵜飼の取材にお邪魔してきた。鵜飼は一千有余年の歴史を持つ伝統漁法であり、同時に涼を求めた人々の川遊びの場でもあった。今回取材したのは、長良川といっても岐阜市ではなく、その上流の関市小瀬の鵜飼である。小瀬の鵜飼にはじめてうかがった私は、地元である岐阜市の鵜飼と比較しながらも、鵜匠さんや船頭さんのお話を聞いていたら、一瞬にして半世紀くらいのタイムスリップ気分を味わった。


小瀬の鵜飼はすべて手こぎ。
船頭さんの人力によって船が動き、観客たちが運ばれて行く。
護岸工事も最小限に留められており、
周りに高い建物がほとんどないので、
この風景は何十年もおそらく変わっていない。


この風景を見ていてふと思い出したのが、こちらのお椀。
先のコラムで紹介した実家納戸の荷物で、
なななんと50年以上前の母のお嫁入り道具である。
母が祖母から受け継いだお椀で、祖母はさらに祖母の母から受け継いだ物らしい。つまりこれまた百年くらいは経っている。


これが蓋の内側。
表の蓋は、船頭さんが船を引っ張っている様子。
蓋の内側は、その船に鳥が乗っている川辺の様子。
なんとも粋な図柄である。夏のお椀ってことですかね?
使っていないということもあるけど、傷みがまったくないのにも驚き!


私は岐阜市の出身なので、鵜飼イコール岐阜と思い込んでいたけど、長良川にはこんなに風情たっぷりの小瀬鵜飼があったんですねぇ。そしてさらに、小瀬の風情を見てから、実家の納戸にある陶器や漆器類には、小瀬と同じく長良川河畔の街ならではの図柄がたくさん残されていることを、思い起こさせてくれた。


たとえば、コレ。
鮎の塩焼きをのせるためだけの専用鮎皿。
昔から我が家では、鮎を食べる時には必ずこのお皿を使ってきた。
鵜籠が描かれている織部皿。これも母のお嫁入り道具だ。


この日は、平目の押し寿司をのっけて、ちょっと前菜風に仕上げてみました。お皿にどかんとのっていると食べる気が失せてしまう父母も、こうしてちょこんとのっていれば、美味しいね〜と食べてくれる。これこそお皿マジック!


川の恵みと共に暮らしを営んできた私たちのご先祖さま、その生活を彩るために美しい工芸品を生み出した地元の職人さんたち。今よりも随分不便ではあったはずだけど、日々を大切にするそんな暮らしぶりっていいなぁ〜。そんな昔日に思いを馳せながら、この日は鮎話を酒の肴に父母と杯を重ねた。そう、もちろん母の果てしない思い出話と共に。


※小瀬鵜飼を取材した文章は、とあるクライアントの広報誌にてお読みいただけます。
写真がとても素晴らしいのでぜひご覧ください。ご希望の方は下記アドレスにメール送信してください。
Sassi-ko-ryu.Koe@chuden.co.jp
1.郵便番号・住所、2.氏名(ふりがなを添えて)、3.なぜ欲しいと思ったか、を記入の上、お申込くださいませ。