えとせとら

晩餐会からお座敷遊びまで【えとせとら】


いつものことながらコラムアップが遅くなってしまってネタが山積み。文章の出来具合とか前後の整合性については精査なしですので、まぁご勘弁いただき、ばばっと一気に書いちゃいます。
というわけで「本物は不変」であることを感じた時のことを写真と共に記してゆこうと思う。まず最初に、この上の写真は、去る5月に東京ニューオータニで開催された「シャンパーニュ騎士団叙任式」の様子。一昨年にも参加させていただいた叙任式と晩餐会が、今年も盛大に執りおこなわれた(シャンパーニュ騎士団については、グーグル先生に聞いてください)。シャンパーニュ地方の大手メゾンの当主がわざわざ日本にまで来て叙任式をするのだから、その方法は本場シャンパーニュとまったく同じで、騎士団のメンバーがマントをはおり、ラッパによる叙任の知らせと共に、各人に騎士団の称号を与えてゆく。古式ゆかしいそのスタイルには、おもわず感心の溜め息がでちゃった。


こちらは、一昨年に参加した「フランスチーズ鑑評騎士の会/シュバリエ・デュ・タストフロマージュ」の叙任式の様子。シャンパーニュ騎士団と同じようにマント姿の騎士の方から、うやうやしく叙任され、メダルをいただく。


でもってこちらは、つい先月、フランス大使館で開催されたシャンパンメゾンの「ローランペリエ社200周年記念晩餐会」の招待状。ドレスコードはブラックタイ。正式な招待状は、名前も手書き。こういうのをいただくと気分はアゲアゲでした。


晩餐会では、受付の後にローランペリエの当主との記念撮影を済ませ、フランス大使館の庭で、ローランペリエをいただきながらアートを楽しむという趣向だった。寒空のもとのガーデンパーティーには、和紙を使ったアートが設置され、全身に電飾をまとったバレリーナが客人の間をするりと抜けるように軽やかなステップを踏んでいく。いかにもフランスらしい演出にはこれまた感心。正式な晩餐会では、このようにテーマを設けて、客人を喜ばせることがとても大切なマナーでもあるのだ。そして大使館の館内でのディナーは、2platsのメニューだった。つまり、2皿で完結するディナーの内容だったのである。一般的にフランス料理というと、前菜で数品、スープが間に入り、魚とお肉と続くフルコースを想像する人がほとんどだと思うけど、実は正式な晩餐会といえば、前菜とメインの2皿に、チーズやデザートが供されるという極めてシンプルな内容で構成されている。さらに、料理はひと皿ごと運ばれてくるレストラン方式ではなく、大人数分の料理が盛られた大皿から自分の分を取り分け、隣の人にまわす、というスタイルであった。これまた実は正式な晩餐会での方法だ。さすがにフランス大使館で開催される晩餐会、何から何まで本来の晩餐会のスタイルを踏襲していて、とても勉強になった。
ついでに申し上げると、ワインラヴァーを自称する方々にありがちな「甘いもの苦手発言」も、本来のフランス料理の筋から言うと、とんでもない話である。前菜と主菜を食べ終え、最後に甘いデザートで締めてはじめてフランス料理は完結する。砂糖やみりんを料理に多用する日本料理や中華料理と違い、フランス料理はあまり加糖しない。舌に感じる甘みは野菜などからにじみ出る物がほとんどである。最後にデザートを食べるのは、甘味で栄養を補充するためと、アルコールの解毒作用の両方なのだ。銀座のある三ツ星レストランでデザートを選ぶ段になり「最後にデザート食べるなんてマリコさんってお子ちゃまなのね」と同席したご婦人に思い切りバカにされた経験があるが、まぁその時ばかりは頭に血が上るくらいにカチンときたんだった(もちろん反論もせずに我慢しましたとも)。


晩餐会の会場で偶然バッタリお会いしたMen's clubの戸賀編集長。
シャツも真っ黒で、真っ黒くろすけなタキシード姿。
タキシードが似合うというのも、素敵な紳士の条件ですな。
これも不変のテーマ。


あー、それでもってこちらは、叔父と叔母が出させていただいた小唄会。浴衣ですからね、夏ですね。芸事が好きな我が家系は、小唄やら長唄やら日舞などの世界が小さい時から日常にあった。親戚が集うと必ず芸のおさらい会のようになっていたんだっけ。これもある料亭のお座敷をお借りしての小唄会だったのだけど、やっぱり椅子とテーブルじゃなくて、お座敷にお座布団なんですね。そして浴衣とは言えども、ちゃんと足袋を履いている。いくら暑いからといっても素足なんてとんでもない話。当たり前のようで最近は当たり前じゃなくなった光景ですね。本物は不変なのだ、ふむ。


あー、これは我が叔父。小唄が本当に上手で、身内ながら毎回絶賛してしまうのだけど。小唄会が終わってからの宴席で、アルコールがまわり始めると、それぞれが得意の唄を披露する。お師匠さんがお三味線を弾いてくださるんだから、こんな贅沢な遊びはない。我も我もと唄った後に、我が叔父の極めつけ都々逸のシーンです。いやはや、その昔、叔母を随分泣かせたこともある色艶話の多かった叔父が、歳をとってからは妙におとなしくなってるなぁと思っていたのだけど。この時の都々逸はエロそのもので、座はわきにわき、身内である私は笑うに笑えず、たいそう困った瞬間だった。超遊び人で昭和の最後の旦那衆と言われた祖父の血をひく叔父。芸子さんを楽しませ、お客様を笑わせるのが、本物のお座敷遊びなのだなぁーと妙に実感した一夜だったのだ。っていうかシモネタは不変ということか。だらだらと書き連ねてしまったけど、こんな身内のオチを最後に、大変失礼いたしましたー。