えとせとら

アートが玄関にやって来た!【えとせとら】


これは私が実行委員を務めた ART NAGOYA2012 で出逢った作品で、山本一弥さんの『needle』。山本一弥さんは、完全なる左右対称の世界を作り上げる作家だそう。この美しいラインと藤田嗣治の乳白色を思わせるなめらかな色合い、そして完璧なシンメトリーにすっかり心惹かれたのである。(そういえば、デザインも写真もシンメトリーな美しさが好きな私)
昨年はハービー山口さんのアート写真だったけど、今年は立体を選んでしまった。ただでさえ狭いマンションのどこにこの作品を設置するのか?この作品を購入するかどうかで迷った一番の理由がそれだった。樹脂でできているこの作品は、乳白色の溶けそうな色合いがとても美しく、それを際立たせるには濃い色の壁が必要なのに、我が家にはそれがない。それどころか、マンションなのですべて壁はクロス貼り。クロスと樹脂作品はまったく合わないのである。困ったな。欲しいけど飾る場所がない・・・。
「唯一飾る場所があるとすれば、玄関ドアかな」私がそうつぶやくと、F-1ギャラリーのオーナー、こじまひさやさんは、すかさず「玄関ドアの色は何色?」と。黒だと答えると「もう、そこに飾るしかない。毎日出掛ける時、家に戻った時にこの作品が迎えてくれるなんて最高じゃん!」もともとご自身がアーティストであり、グラフィックデザイナーでもあるこじまさんから、具体的な設置方法と具体的なビジュアルイメージを説明されると、もう購入欲は高まるばかりである。そこでART NAGOYAの実行委員の面々を一人ひとり連れ出しては、F-1ギャラリーに引っ張って行き、設置方法やそれに伴う心配事を相談し「大丈夫でしょ、いい作品だね」とほぼ言わせて自分を納得させた。


アートがやって来る前の我が家の玄関ドアはこんな感じだった。
いただいた展覧会チケットや、個展情報などが貼ってある。開催期間中に忘れずに出掛けるために、玄関ドアに貼付けていたのである。掲示板的性格の強い情報コーナーだった。


それが、今はこうなっている。
needleのための額として、玄関ドアが存在している。
出入りするためのドアである前に、
作品の額としてのドアの存在。いいでしょ。
扉の開け閉めをしても、作品はびくとも動かない。


こじまさんが設置してくれた時の写真。
専用の赤外線装置で並行と中心をはかり、
ぴったりきれいにど真ん中に来るように設置してくださった。
その方法は・・・秘密です!


ART NAGOYAの実行委員の面々。設置されるのを待って、我が家で打ち上げ会を開催した。いい作品だね、と言わされた方々が、設置された作品を見に来てくださった。「作品にストレスを与えるのは良くないから玄関ドアは心配だ」と言い続けていた岡田氏も、実際に設置されて頑丈にくっついている作品を見て、安心してくれたみたいだった。そういうわけで、今、我が家に遊びに来てくださると、このアートをご覧いただけます。巷ではゲージュツの秋も始まりつつあるので、お茶飲みがてら、是非いらしてくださいませ。