えとせとら

雪の日のハーブ&ドロシー【えとせとら】


名古屋の街は雪でお化粧されて真っ白になっている。雪が珍しい子供たちにとってはサイコーのおもちゃなのだろう。街角に、マンションのベランダに、子供たちが作った雪だるまが並んでいるのを見ると、なんだか懐かしい気持ちになる。私も作ってしまおうかしら。明日は早朝からロケハンに出掛けなければいけない私は、いつもなら「明日の朝は道路凍ってるだろ〜な〜やだな〜」なんて愚痴ってるところだけど、今日は気分が穏やかだ。なぜなら、今話題のハーブ&ドロシーを観てきて、気持ちがとっても優しくなっているから〜♥


ハーブ&ドロシーは、4000点もの現代アートをアメリカの国立美術館ナショナルギャラリーに寄贈した夫妻の名前だ。アートコレクターと言えば大富豪を思い浮かべるけど、この夫妻は違う。郵便局員と図書館司書のごく慎ましい家庭のお財布の中から、30年以上に渡ってこつこつと現代アート作品を買い続け、膨大なコレクションを築き上げた人たちなのだ。彼らがアートを買う基準は、自分たちの収入で買えること、1LDKのアパートに入る作品であること、この2つ。それがとうとう4000点を超えてしまい、ナショナルギャラリーに寄贈したのである。作品群はすでに価値が高騰した作家も多くいて、数点売却すれば大金持ちになれるにも関わらず、夫妻は売らずに一切を寄贈した。その奇跡のような夫妻のストーリーをドキュメンタリー映画にしたのがハーブ&ドロシーである。


物質的に豊かであっても心が豊かじゃなければ、シアワセとは言えない。お金があってもシアワセじゃない人はたくさんいる。そしてお金がなくても、たった一枚のアートが人生のシアワセを創り出すことだってある。映画の冒頭と最後に登場したあるアーティストの言葉が印象的だった。Art is mute, when money talks. by Patrick Mimran(金がモノを言うとアートは沈黙する)
そう、アートは一部のお金持ちのものでもなければ、一部の自称知識層のものでもない。市井の人々が、一枚の版画を、写真を、絵画を、なんの知識も経験もなく所有することで、日常を過ごす空間が心地よいものになることを、この映画が教えてくれた。
とても穏やかになった私は、雪道を楽しみながら歩いて家路につく途中、雪が降り積もったお庭の美しさに心奪われて、ついつい美味しいお店の暖簾をくぐってしまった。それが↑上の写真。雪が積もったお庭が眺められるのは今夜限りですからね、これもアートです。花うさぎさん、ごちそうさまでした!そしてハーブ&ドロシーは上映期間残りわずかです。アートに興味がある人もない人も、ぜひご高覧を。