えとせとら

嘆きのボインとカンカン帽【えとせとら】

前回のコラムにカンカン帽のことを書いたら、我がコラムを毎回読んでくださっているTさんからメールが届いた。「あの写真の帽子はカンカン帽ではなくパナマ帽ですよ」と。そうなのです、私の勘違いで、前回ご紹介したオジサマ方の帽子はカンカン帽ではなく、パナマ帽でありました。ここに訂正してお詫び申し上げます。
間違いこそ勉強のチャンスってなわけで、カンカン帽とパナマ帽の違いについて、ちょっと調べてみた。Tさんがおっしゃるように、カンカン帽は麦藁帽子の一種で、山の部分は円筒形、てっぺんもつば部分もが平らで、固くプレスされている(水しぶきで濡れても変形しないように)。一方パナマ帽は、パナマソウの葉を細く裂いた紐で作られており、てっぺんに凹みがあり、つば部分がわずかにカーブしており、やわらかい素材が特徴なのだとか。両者はどちらも大正時代の紳士の正装姿に用いられたものだったのだそうだけど、一見似ているようで、限りなく違うタイプである。改めて見てみると、ゆるやかな曲線がなんとも上品なパナマ帽は紳士向き、固くプレスされたカンカン帽はお茶目な殿方向きという感じがする。


そして間違いなく言えるのは、カンカン帽は私たち世代にとってはやっぱり月亭可朝がかぶっている帽子という認識なのである。多分カンカン帽がお茶目な殿方向きだと感じるのは、可朝のイメージそのままなんじゃないのかな。前回コラムで月亭可朝のことを書いたら、若年世代から「月亭可朝って誰?」と突っ込みを入れられたので、ご存じない方のために説明申し上げよう。月亭可朝さんは落語家で、ギターをひきながら"嘆きのボイン"を歌ってある時代を風靡した人である。「ボインはお父ちゃんのもんとちがうんやでぇ」といううたい文句は当時幼少の私にはとんでもないカルチャーショックだった。この歌が世に出たのは、私がわずか3〜4歳くらいの時なので記憶は定かではないが、おそらく周りの大人や小学生たちが面白がって言ってたんでしょうね。さらに歌詞はこう続く。「大きいのんがボインなら、ちっちゃいのんはコインやで、もっとちっちゃいのんはナインやでぇ」ボイン>コイン>ナイン。多分、私が人生で一番最初に覚えた方程式である。


そんなわけで、カンカン帽から嘆きのボインまで、ネットでいろいろ探していたらあっという間に数時間が経ってしまった。そろそろ〆切原稿に向かわなくっちゃ。
月亭可朝による懐かしの昭和の迷曲がyoutubeにあったので、ご興味がおありの方はパソコンのボリュームを下げてどうぞ→嘆きのボイン