えとせとら

失敗と誠意【えとせとら】

知人がオススメの居酒屋に連れていってくれた。
新鮮なお魚に旬の野菜をふんだんに使ったお皿はどれもおいしくて、
お店の大将とはカウンター越しに話が盛り上がり、
楽しいひとときを過ごしていた。
最後に、二人とも焼きおにぎりを選択。
私たちの目の前で、ちょうど頃合いに焼けたおにぎりを
大将がお皿にのせようとしたその時、
不運にも焼きおにぎりは引力の法則に従って床へ一直線。
知人と思わず目を合わせる私。
すると大将は、何事もなかったかのように
拾ったおにぎりをまな板の上にのせて、二度目の醤油をはけで塗り始めた。
そしてもう一度網の上にのせて焼き台へ。
およそ5分後、私の元にはカリッカリッに焼かれたフレーク状のおにぎりが出されたのである。
残念ながらおいしい物ではなかった。

帰り道、もし私が大将だったら・・・と考えてみる。
潔く謝り、新しく焼き直して出し、
お漬け物かデザートをサービスしちゃうだろう。
私がお客だったら、それだけの「誠意」を示してもらえれば、
納得すると思う。
でもこれって、「余分に出してくれなきゃ許してやんないぞ」
というかなり「いやらしい根性の持ち主」でもあるわけで。
結局のところ、失敗した側もそれを許す側も、
「人間性」が出るものなのだなと妙に納得した夜だった。