読書する贅沢

つばめの家/岡田新吾氏最新作【読書する贅沢】


岡田新吾氏が3作目となる児童小説を上梓した。金曜日の夜は、その出版記念パーティーだった。岡田氏は、広告デザイン会社の社長、コピーライター、ブランディングプロデューサー、写真ギャラリーのオーナー、そして児童小説家と、幾つもの顔を持つ。月曜から金曜は目いっぱい仕事をして、児童小説を書くのは主に休日なのだそうだ。そんな生活をもう10年近く続けている。広告業界に身を置いている同業者として、これは感嘆に値すること。大して仕事がなくてもなぜだか毎日忙殺されるのが広告業界の常で、多くのクリエイターが休日は家族サービスさえ遠慮がちにして、頭をからっぽにすることで次の新しい一週間をなんとかしのぐためのチャージをしている。その大切な休日を、ジャンルは違うと言えども執筆という作業に費やすことは並大抵のことではないはずだ。それが出来るということは、岡田氏にとって広告業界は仮の姿で、児童小説の世界こそ天職なのだろうか。いやいや、そう問えば否と答えるに決まっているのだけれど。


3作目となる「つばめの家」は老夫婦が主人公という不思議な構成になっている。岡田氏の"あとがき"にもこの件について触れているが、これは児童小説の世界ではあまりないことらしい。ゆえに執筆が時にゆっくりになったり、悩んだりしたこともあったそうだ。このまま老夫婦を主人公にして出版をするか、あるいは子供が主人公の小説に書き直すか。その悩みの段階のあたりから作品を読ませていただいていたので、私個人的には初心を貫いた岡田氏の勇気に拍手を贈りたいと思う。


その結果、今までの児童小説にはない、"子供とは違った視点で大人が楽しめる一冊"に仕上がっているからだ。小説の随所に隠された不変のテーマは、愛情を注ぐということの意味について。家族や友人への愛情、社会への愛情、弱きものや失われゆくものへの愛情を、すべての読者に問いかけている。そしてそれは、何年か前にご母堂を亡くされた岡田氏の母へのオマージュでもある。


ひとつ書き忘れていたけど、私と同じくコピーライター仲間である岡田氏は高校時代のリアル同級生でもある。しかも高校3年の担任は国語の松久先生だった。お互いに(失礼!)優等生とは決して言えない私たちが、言葉を紡ぐ仕事をしているというのだから、世の中もわからないものである。なので今回の出版祈念パーティーには、恩師である松久聡先生と高校の同級生たちも駆けつけた。この写真は、恩師・松久先生と岡田氏を同級生で囲んだ時の記念写真。なんとこのメンバー。極楽トンボの私を除き、1人が某大手新聞社の管理職で、2人が政治家、あとの4人は会社経営者である。みんな偉くなったもんです、ビックリしちゃいました。さて、最後にクイズです。この写真の中の政治家2人とは誰でしょうか?選挙ポスターっぽく爽やかな笑顔が印象的な2人が政治家なんだけど、わかるかなー!?