読書する贅沢

桑愈〜そうゆ 和久傳【読書する贅沢】

自他共に認める和久傳好きなワタクシ。お料理もさることながら、和モダンなセンスやしつらいも大好きで、京都の和久傳は目的ごと(はっきり言えば予算ごと)に利用させていただいている。そんなわけで、和久傳から定期的に届く小冊子の桑愈は、和久傳好きなワタクシをますますファンにさせてしまう強力なフィロソフィー本なのである。
かの有名な和久傳の女将さんの人脈がなせることなのだろうか。そうそうたるメンバーが書き手となって、各々がエッセイを書き連ねている。テーマも様々だ。哲学者の梅原猛先生をはじめ、植物学者の(潜在自然植生を研究している方ですね)宮脇昭先生、宮本輝さん、文学者の中野美代子さんなど、学者や文学者、文化人を中心に、あらゆるジャンルから書き手が選ばれている。そのひとつひとつのエッセイが面白いのである。どこが面白いかというと、どなたも和久傳のことには一切触れずに、今思うことを京都の町に触れながら自由闊達に執筆されているのだ。こういう活動というのは、京都ならではなのか(もっとも和久傳は生粋の京都料亭ではないけれど)。昔、文学者や芸術家が料理屋を活動の拠点にして思想を語っていたことを鑑みると、そうした伝統が受け継がれた上での出版なのかもしれないなあ。ま、もちろん、そこには今でいうパトロン、昔風に言えば、旦那衆の役割が存在していたわけだけど。
ちなみにこの桑愈は和久傳でお食事すればいただけるので、皆様お出掛けの際には、ぜひ一言お添えになってご入手くださいまし。今なら、高台寺本店は間人の蟹が召し上がれますぞ。あぁ、思い出すだけでおなかがいっぱいになります。