おうちごはん

ママの味とパパの味【おうちごはん】

この数年、父が家庭菜園に夢中になっている。実際は家庭菜園をとっくに通り越し、プチ農家と言ってもいいほどの規模と腕前となり、今年はじめて作ったというお大根と聖護院かぶらは見事な出来だった。もともと何かを育てることが好きな性格だからか、土を耕し、育てた野菜に実がなるのが面白くて仕方がないのだと言う。自宅の生ゴミを堆肥にして用い、さらに無農薬栽培に努め、雨の日も野菜の様子を見に出掛けるほどの熱の入れようだ。晴耕雨読を地でいく生活は、ちょっぴりうらやましくもある。この連休、実家に帰り、父母のもとでゆっくりと過ごしてきたが、お夕食は私のリクエストで「ママの味とパパの味で」とオーダーした。


それが、こちら。
父が丹精込めてつくったおネギをたっぷり使った
おネギのお好み焼き!
父が子供の頃に「一銭洋食」で食べた物の再現らしく、
自分でおネギを作るようになってから、その記憶をもとに考案したといつも威張って話す。料理をまったくしない父が唯一作ってくれる献立だ。(と言っても焼くまでの準備は母がするのですが)おネギ・紅ショウガ・桜えび・天ぷら屋さんでいただいてくる天かす・カツオ粉のシンプル具材。私はこれをさっぱりポン酢でいただくのが好み。


一方、ママの味がこちら。写真映りがイマイチ悪いけど、
特製の炊きこみご飯で、具材は、干し貝柱・鶏肉・ニンジン・糸こんにゃく・シイタケ・おあげさん
その時々によって具材は変化するが、子供のころから大好きなメニューのひとつだった。高校生の頃のお弁当にも入れてくれていて、それが楽しみで仕方なかったなと懐かしく思い出す。母の炊きこみご飯や煮物は、一生懸命真似して作ってもなかなか母のような味にはならない。こればっかりは年季のいる仕事みたいだ。コラムでこんな風に紹介したと話せば、もっとちゃんとしたおかずにしてよ(もう少しご馳走っぽいもの)と言うに決まっているので、内緒にしているが、いわゆるおふくろの味というのは、こうしたなんでもない献立のことを言うのではないかと思う。


食後に温かいお茶を飲みながら、くだらない話で笑い合い(会話の中身は人様には言えないほどホントにくだらないんだけど)、なんでもないシアワセをしっかりと噛みしめたせいか、この日の夜は幼い頃の夢を見た。