一杯の幸せ

悲しくてやりきれない【一杯の幸せ】

胸にしみる空の輝き、今日も遠く眺め、涙を流す。
悲しくて悲しくて、とてもやりきれない。
このやるせないもやもやを誰かに告げようか。

サトウハチローさんによる名歌を作曲した加藤和彦さんが亡くなった。
一ファンとして、心よりご冥福をお祈りする。

人は誰しも、悲しくてやりきれない、と思う日が、一年に何度かは訪れる。残念ながらそんな一日を過ごす羽目となった。
やることなすこと裏目に出て、耳に入ってくるのは、悲しい情報ばかり。お仕事もイマイチうまく事が運ばず、なんだか朝からむしゃくしゃしたり、悲しくなったりする一日だった。
お仕事が終わったのは22時過ぎ。自宅に帰っても冷蔵庫には何も買い置きがないし、おなかも空いているので、適度に食事もでき、飲める場所を探すが、女性一人で入れるお店は思った以上に少ない。「お一人様」ばやりだけど、それは普段から一人でかっこよく食事したりバーで飲んだりできる女性がやることで、私の場合、なんとなく間が持たなくて、うまくいかないことが多いのだ。ええい、こいう日はさっさと帰宅して、いつもお願いしているマッサージのおじさんに来てもらい、体のメンテをしましょう!と思いつき、電話をすると、なんと「胆石で入院中なんですよ〜」とのこと。またまたガックリきて、やはり出掛けることにした。


一人じゃどうもためらわれる・・・ということで、遅めの時間にいろんな人にお誘いの電話をするが、見事にふられまくり、再び「一人」を深く実感することになる。最後の砦のつもりで、甥っこノゾムを呼び出そうと画策するが、あっけなく「あ、オレまだ会社。しばらくかかりそうだけど、なんか用?」と冷たくあしらわれ、撃沈。


というわけで、意を決して我が家から十数メートル!のスペインバルBar Rabanoへ。おいしいタパスや生ハム、気軽なカヴァが楽しめて、スペインのバルでぐたぐた言いながら飲んでる感じが気に入っているお店だ。
この夜もカヴァに、イベリコベジョータと羊のチーズで一人ぼんやり妄想を楽しんだ。


カウンターで一人、というのは、女性の場合は間が持たないものである。話相手もいないので、ひたすらカヴァを呑み、妄想を繰り返していると、後ろからある会話が聞こえて来た。
簡単に言えば、会社の人同士が呑みに来ていて、約一名がお酒に酔って上司らしき人にからみ、女性が間をとりもとうとして必死にとりなす図、という感じ。
内容はよくわかんないけど、酔った人の感情の昂揚具合とか、それをかわそうとする上司の発言とか、なんとかしなくちゃと必死になる女性の、それぞれの人間関係がうっすら見えてきて、一人でお酒を飲む私にはカッコウの酒の肴である。
最初はうざったいなぁと思っていたのに、知らぬ間にそれを楽しんでしまい、お酒がどんどん進んでしまった。

結局、他人様のごたごたとか、もやもやとかに接すると、自分の身についさっきまでふりかかっていた「嬉しくない事情」はどこかへ飛んでいってしまうのが、人間の性なのだろうか。こういうのを人の不幸は蜜の味、というのかな。

悲しくてやりきれなかったはずのもやもやも、美味しいカヴァと後ろの席の酒の肴のおかげで、どこかに行ってしまったようだ。こういうマイナスな発散の仕方は良くないなと思いつつも、この宵はお酒に感謝して眠ることができた。

この次の日には、やりきれない思いを一部共有してくれたIさんが、美味しいお食事に誘ってくださった。どれもこれも美味しかったな〜。これでやりきれない思いもむくわれるというもの。Iさん、ありがとうございました。

さて今宵も、おやすみなさい。良い夢を。