一杯の幸せ

ワインボトルに妄想する月曜【一杯の幸せ】


ここのところ料理熱に浮かれている。食べることも飲むことも好きで、レストランで食事するのはもちろん大好きだけど、自分で料理をするのはもっと好きなので、時々ポッと料理のアイデアが浮かんだりすると、それを実験したくて仕方がなくなる。当然誰かに食べさせたい。それの犠牲になるのは我が愛すべき友人たちなのだけど、そんなわけで今年に入ってから2週連続、合計4回ほど我が家でごはん会という名の強制食べさせ会を催した。我が家のごはん会のルールは、「料理に合わせてワインを持参いただく」なので、合計4回のごはん会で集まったのは、人数が20名、飲んだワインの数は25本。さてさて、そのワインボトルたちはベランダに放置されたままだったため、瓶の回収日である今週の月曜日にマンションのゴミ集積場へと運んだ。2週溜めちゃった私が悪いのだけど、それにしても25本ですよ。オンナの細腕(一応表現上ね)じゃ運べませんて。なので、台車に段ボール箱を置き、その中にワインボトル25本と日本酒ボトル1本、ビール瓶3本を積み上げ、カチャカチャと音をさせながら一階まで降りていった。まるで酒屋のおばちゃんみたいにね。


今のマンションが出来たのは99年だったから、ここに住むようになっておよそ13年近く。実は毎週月曜日の朝にゴミの集積場で私が一点集中するスペースがある。そう、きれいに仕分けられている、瓶・缶・ペットボトルのうちの「瓶の箱」だ。この箱の中に、毎週、私をドキドキさせるワインの空瓶が必ず入っているのである。もちろん中身は入っていないが、そのワインの趣味がおそろしく私と似通っているため、ついつい凝視してしまうのだ。好みがきれいに統一されているから、おそらくこれらのワインの飲み手は一人(もしくは一家庭)に違いない。いつからか、私は空瓶の彼(勝手に男性と思っている)に恋するようになった。空瓶の彼は、今週末に何をお飲みになったのだろうか。そんな妄想をしながらゴミ集積場に生ゴミや瓶を運ぶのって、楽しいですよぉ。


空瓶の彼が飲んだワインが気になる一方で、我が家でとびきり美味しいワインを抜いた時は、ちょっと誇らしげな気持でその空瓶を集積場に運ぶ。もしかしたら空瓶の彼は、私が飲んだ空瓶を見て「ふうむ、まだ見ぬ彼女はこれを飲んだのか」なぁんて妄想を膨らませてくれないかなと。


9日に催したのは、今年初の「丹波しし鍋会」。今まで何度かしし鍋会についてはこのコラムに書いているが、長時間加熱することでバターの芳香をまとうしし肉に、熟成したシャルドネが実によく合うので、その日のメンバーにもその味の特徴をお伝えしてワインを持参いただいた。一番上の写真はその日のメンバー持ち込みワインたち。右から2本目はのりりんご持参で、なんと玉村豊男さんのシャルドネ♥そして↑こっちの写真はグラッパ王子がご持参くださったもの。左はジャックセロス。熟成したシャルドネと言ったら、こうキタ。さすが王子。しし鍋とピッタリで新しい発見でした。そして右は黒龍による2012年龍年特別ラベル。空瓶の彼はきっとどのボトルを見ても「ふうむ」と感心してくれるはずだけど、私的に玉村豊男さんボトルと黒龍ボトルは手元に残しておきたかったので、セロスちゃんは残念ながら空瓶箱行きとなった。我がマンションのゴミ集積場で高く積み上げられたボトル箱の一番上に、ラベルが見えるようにジャックセロスの瓶をそっと置いた。空瓶の彼がそれを目に留めてくれることを期待して・・・。