一杯の幸せ

お酒と食事〜色の方程式【一杯の幸せ】


去る7月7日、雨空の七夕の夜、第4回「もっと!地酒の会」が開催された。今回の蔵元さんは、福井県福井市の「越の磯」さん。私ははじめていただく日本酒だった。そして今回初の試みが、なんと日本酒の会のはずなのに、ビールが最初に供されるということだった。確かに〜蒸し暑い名古屋の夏で、最初はきりっと冷えたビールが飲みたいというのは人情ですよね〜。越の磯さんは、香港の日本酒ビール部門で金賞に輝いたという地ビールを作っていらっしゃるということで、今回3種類の地ビールをご提供くださったのだ。天の邪鬼な私は、ビール好きじゃないし、地ビールで美味しいのに出逢ったことないし・・・と実はマイナスな発想でこの会に参加していた。ところが、である。越の磯さんの地ビールは、日本酒で培ったお酒づくりのノウハウが生かされているからか、ビックリするほど美味しかった。ホントは「なぜ日本酒の蔵元がビールを作るようになったのか?」という質問を杜氏である磯見さんにしたはずだったが、その後の気持ちの良い酔いで、すっかり忘れてしまった。ご興味がある方は「越の磯」さんまで遊びに行っちゃってみてください(無責任なおしつけでスミマセン!)。


これが3種類の地ビール。
左から越前福井浪漫麦酒のピルスナー、
真ん中がアンバーエール、右がダークエール。
瓶首の帯色に注目ください。
ピルスナーが緑、アンバーエールが赤、ダークエールが黒である。


そしてこれが、地ビールで合わせたお料理たち。今回も「和蕎楽」の美味しい八寸は彩り豊かで季節感たっぷりだ。この八寸の前の先付けとして、蕎麦豆腐の完熟トマトソースが出された。


食の実験が大好きな私は、早速この地ビールの色と、食材の色合わせを試してみた。地ビール3種類は瓶首の帯の色のまま、ピルスナーは緑っぽさのある黄色、アンバーエールはロゼ色、ダークエールは茶色である。そこでピルスナーには卵焼きと枝豆を。アンバーエールのロゼ色には同じく赤系のトマトソースを。ダークエールには地鶏の胡椒焼と金時草おひたしを。まぁこれが見事に合うのである。特に驚いたのはアンバーエールのロゼ色と先付けのトマトソースの相性だった。トマトの酸味がアクセントになってビールがすすんじゃう〜。色が似ている物同士を合わせると良い、というワインと食事の色の方程式がそのまま役立ったのだ。それとこれらが美味しかった理由その2について。和食には日本酒の蔵元さんが作る地ビールがよく合う、という理由を蔵元さんのお話から見つけ出したはずだったんだけどな〜。う〜ん、忘れちゃった。越の磯さん、また名古屋にいらっしゃったら教えてくださいまし。


地ビールでさんざん盛り上がった後、日本酒が4種類提供された。地ビールが美味しいということは、日本酒の作りも秀逸ということなんだろうか。これまた日本酒の方も極めて美酒であったのだ。一番上の写真は原酒のイメージとは違っていて、とても飲みやすく人気があったもの。


こちらは最後に供された10年熟成の古酒。
人間もお酒も工芸品も「より古い」方が好きな私は、
これが一番お気に入りになりました。
シェリーのような香りとコクが忘れられない。
紹興酒みたいとおっしゃっていたご仁もいましたね。


もっと!地酒の会も今回で4回目。日本酒の初心者だった私たちも、何度か回を重ねて日本酒をたしなむようになると、日本酒ってやっぱり和食にはピッタリね、という感覚や、日本酒の味わい方みたいなものがなんとな〜くわかってきたような気がする。今回の越の磯さんの丁寧に作られた日本酒は、お酒を味わう舌がちょっぴりオトナになった私たちに、日本酒の面白さを改めて教えてくださった。次回からは酔っぱらっても質問した内容くらいは記憶を留めているよう、気をつけなくっちゃ。ちなみに越の磯さんは来年2月、名古屋の百貨店にて特別販売されるご予定がある。その機会は逃さず、お出掛けくださいまし。