一杯の幸せ

ロ・ブーの中国茶会【一杯の幸せ】


名古屋・覚王山にある中国茶のお店「ロ・ブー」さんからお誘いを受けて、秋の茶会に出掛けてきた。場所は白鳥庭園の清羽亭。先々月にお茶会でお邪魔したばかりだったので、和そのものの日本建築で中国茶のお茶会を開催されるなんて、一体どんなしつらいになるのかしら。どんなご接待をされるのかしら。床の間の軸やお花はどんな風なのかしら。と、お邪魔する前からいろいろな想像をして楽しませていただいた。ロ・ブーのオーナーの岩崎さんとは、取材がきっかけで知り合いになり、その後イベントなどをご一緒したり情報を交換したりするようになった。前述のコラムで登場していた青木シェフのフランス料理を、岩崎さんの中国茶を飲みながら楽しむ、という企画ランチを催したこともあり、料理やお菓子とお茶の相性について何度も意見を交わしたことがある。用事があって携帯にお電話すると「今、福建省の山奥なんです。ドロドロの格好でお茶の摘み取りやってます〜」とお答えになることがある。つまり、中国茶ブームになるずっと前から中国茶の輸入や栽培に力を注いでこられた方なのだ。岩崎さんの中国茶の知識や経験はもちろんだが、アイデアと味覚に脱帽すること度々だったので、この茶会は期待感が相当つのっていたというわけだ。


そして、その期待はまったく裏切られるどころか、完成度の高さに驚かされたというのが正直な感想である。しばらくお会いしない間にすっかり進化を遂げられて、岩崎流と呼べるほどの素晴らしいお点前を拝見することができたのだ。
もともと岩崎さんは、日本に中国茶を紹介した第一人者ということもあり、中国茶を適温・適香で美味しく飲むためのお作法のようなものを編み出した方である。ロ・ブーにお邪魔すると、岩崎さん独特の美しく無駄のないお点前で、美味しい中国茶をいただけるので、熱烈なファンの方もきっと多いだろう。その岩崎流はこの茶会で、お点前、お作法、お菓子との相性など細部に至るまで行き渡り、完成されていた。3つの茶会の会場には、それぞれテーマが設けられ、中国茶・お菓子・音楽が見事な融合でプレゼンテーションされていたのだ。その一部を拙い写真でご紹介しようと思う。


紅の席。床の間のしつらい

紅の席。床の間のしつらい

アップにするとこんな感じ

アップにするとこんな感じ

お茶は文山包種茶の冷茶。お菓子はスイートポテト。BGMはアイソトニックサウンド「オーロラ」より。お茶を飲んだ後の舌に残る甘みと、ポテトの甘みがピッタリで、チョ〜ビックリ!

お茶は文山包種茶の冷茶。お菓子はスイートポテト。BGMはアイソトニックサウンド「オーロラ」より。お茶を飲んだ後の舌に残る甘みと、ポテトの甘みがピッタリで、チョ〜ビックリ!

茜の席。立礼の茶席でした。

茜の席。立礼の茶席でした。

完成された中国茶点前!

完成された中国茶点前!

お茶は坦洋工夫、お菓子はケイクキャラメル、BGMはもののけ姫。

お茶は坦洋工夫、お菓子はケイクキャラメル、BGMはもののけ姫。

紫の席。日本の伝統建築で中国の香り。

紫の席。日本の伝統建築で中国の香り。

お茶は白葉単樸、お菓子はガトーマロン、BGMは郷情。

お茶は白葉単樸、お菓子はガトーマロン、BGMは郷情。


この日の茶会は、「槿花一日(きんかいちじつ)」と名付けられていた。槿とは朝顔のこと。強くたくましい命も、儚く小さな命も、同じ命。一服のお茶と共に、美しい自然の中ですべての命の声に耳を傾けていただければ、という岩崎さんの願いが込められている。お茶の作法に東西隣国の差こそあれど(もっとも中国茶の点前は岩崎さんが作り上げたもので中国本土にもないと思うけど)、お茶を愛でる心は同じ、ということですね。岩崎さんとロ・ブーの皆さんの志と精神性の高さに、すっかり心を奪われた秋晴れの一日だった。