着物だいすき

九月の色【着物だいすき】

今月は、芸能に恵まれた一ヶ月だった。名古屋平成中村座〜法界坊〜にはじまり、西川流名古屋をどり、御園座の「細雪」、日本舞踊家・赤堀登紅さんの観月会、再び名古屋平成中村座の夜の部。いずれも素晴らしい舞台ばかりで、彩りの良い初秋の月となった。
こうした舞台に出掛ける時は、できる限り着物を着ていきたいと常々思っているものの、着物ルールから言うと九月は単衣。厳しい残暑の中、単衣でも汗びっしょりになるとすると、どうしても躊躇ってしまう。ルールも大切だけど、地球温暖化に合わせて、多少のルール違反は許してもらえないものでしょうか?
とは言うものの、有り難いことに今年の名古屋は意外に涼しかったので、難なく単衣が着られるという気軽さも手伝い、着物を三回ほど着ることができた。


白地に赤・紺の縞で、フランス国旗と同じ配色の単衣の着物を、
まだ残暑厳しい今月初旬に纏った。
父からかっぱらった?結城の紺色兵児帯を文庫風に結んでドレスダウン。(これも着物ルールではダメダメと言われるんでしょうね)
半襟に赤・白の市松模様を選び、九月初旬らしくすっきり系にまとめた。


これから秋が深まるといよいよ袷の季節。十月の歌舞伎にはどんな着物を着ていこうかしら?と思い悩むのも、楽しみのひとつである。以前、御園座のすぐ近くに住んでいた時は、顔見世のある十月になると粋な着物姿を毎日眺めることが楽しみだった。時々はっと振り返りたくなるような着こなしとセンスの人に出逢うことがある。一度なぞは、その見事なセンスの人を追いかけて、前姿をチェックしたことがあるほどだ(ご本人にしてみれば気持ちの悪い話ですよね)。その人は、秋の夕暮れを思わせる彩度の低いピンクの着物に、銀鼠地に柿が染めぬかれた帯をしめていた。帯締めと帯揚げが、濃い紫。夕暮れ色・銀鼠色・柿色・紫色の絶妙なコンビネーションに、思わず唸ってしまった。


こちらは去りゆく九月の夕空の写真。かの人の着物は、ちょうどこんな色のピンクだったな。一昨日の夕方、西側の部屋で仕事をしているといきなり空が赤くなった。こういう美しい西空に出逢うと、西陽の当たる暑い部屋でガマンしていて良かったと思えてくる。


こちらはS沢先生からいただいたホトトギスの鉢。九月のはじめから一本ずつ花が咲き、今日、最後の蕾のふくらみがはじけるように開いた。かの人の帯締めと帯揚げはこのホトトギスのような紫だった。こうして見てみると、九月は夏の終わりと秋の始まりが混在していて、気温も定まらないけど、自然の色合いは確実に彩度が落ち着いていることに気づかされる。


ということは・・・自然の中にある季節の色に、カラーコーディネイトを学べば失敗も少ないということなんでしょうね。ふむふむ。というわけで、今日も夕陽を眺め、草花を愛でる気持ちを忘れないように過ごそうっと。