着物だいすき

結城そぞろ歩き【着物だいすき】


先週の東京出張にはたくさんのおまけがついてきた。先のコラムで紹介した挟土氏の個展をはじめ、悪友ハルコとの再会、母校訪問、そして最後は姉と共に訪れた結城の街である。姉は随分前から結城に行ってみたいと思っていたそうだが、ダンナ様に遠慮して言い出せなかったらしい(確かに男性には不向き?の街かもね)。姉宅でのんびり朝寝をしていたら、「結城行こうか!」と姉が誘ってくれたので、いつか行ってみたいと思っていた私は即返事をした。



結城は、紬で栄えた街である。至るところに結城紬の織元やら問屋さんがあり、機を織る音が聞こえたお店もあった。↑こんな絵がすらり展示されていたりして、結城の歴史イコール紬なんだなぁと思わせてくれる。さりとて、これといって特色のない街でもある。昭和50年以降に建てられたと思われるコンクリートのビルや、しもたや風の民家には、昭和の香りがぷんぷん匂っていた。そして、結城を訪れる観光客にとってのメインストリートは、「問屋街」である。文字通り、結城紬の問屋が立ち並ぶ通りで、「見世蔵」と呼ばれる蔵作りの建物が幾つも点在している。


ここは見世蔵の一つで、現在も結城紬の問屋として大きな商いを営んでいらっしゃる会社の店先。通りを挟んだ真向かいが同経営のカフェになっていたので、姉と二人で珈琲をいただくことにした。「お昼食べたばっかりだからケーキは無理だよね〜?」と言いながら、チーズケーキを分け合って食べる胃袋も仲良しの姉妹、ふふふ。ノーテンキにケーキをほおばっていると、お隣の席ではインタビュアーらしき女性が、結城紬をかっこよくお召しになった紳士に話を聞き出していた。どうやら何かの取材のようだ。「結城の歴史と文化はすべて紬なんですよ」と語る紳士にうなづくインタビュアー。よそ様の取材を拝見できるチャンスなどほとんどないから、片手に珈琲、耳はダンボの状態で、取材の様子をじっくり聞かせていただいた。インタビュアーって、相手のお話にいちいちうなづくのがクセになっちゃうんですよね。私もそう。その時の聞き手もやはりうなづき続けていた。それを傍から見ていると、いかにも取材という感じがしたので、なぜだか私の方がこっぱずかしくなってしまった。まるでいつもの自分を見ているようだったから。


一服した後は、再び問屋街をそぞろ歩き、反物が欲しかったけどとても買えそうにないのであきらめ、姉とお揃いの「結城紬で作ったケータイクリーナー600円也」を記念に買って帰って来た。着物好きが高じると最後は結城に行き着く、と言われるほど粋人に好まれる結城紬。母や祖母から受け継いだ結城紬を着てみると、その着心地の良さとなんとも言えない風合いは、確かに行き着く先なのだと実感する。現在、結城紬はユネスコの世界遺産に申請中で、もしかすると来年あたりに世界遺産になるかもしれない。私もいつか、結城の反物を自分で買って仕立てたいなぁと思いつつ、世界遺産になっちゃったら更に値が上がってしまうのでは?と憂いながらも、とりあえず今のところはケータイクリーナーで満足することにした(それにしてもあまりに小ちゃい結城だこと!)